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『それってもうナンパじゃん』

 車椅子に乗っていると、知らないおじさん・おばさんからやたらフレンドリーに声を掛けられることが多い。
 今日も駅のエレベーター待ちの間に話し掛けられた。

「脚、悪いの?」
「ああ、はい」

(たまに聞かれるけど、見れば分かるしそれ聞いてどうするんだろう?)

「18、19くらい?」
「え? ……27ですけど」

(あ、間違えた。29歳だった。まあいっか)

「え、うそ? 若いね」
「……そうですか?」

(確かに弟と並ぶとどう見てもあの子が兄貴だもんな)

「学生の頃は何かスポーツやってたの?」
「演劇を」
「じゃあ声がよく出るんだ」
「はあ、まあ」

(演劇→声が出るってすぐに行き着くの面白いな)

 この辺りでエレベーターが到着。二人で乗り込んだ。

「演劇はもう諦めちゃったの?」
「いえ、そんなことないですよ。今は書く方に回ってて」
「え?」
「脚本書いたり小説書いたりしてます」
「ああ! そういう才能をお父さんかお母さんから受け継いだんだね」
「……まあ、ありがたいことに?」

(才能あるって言っていいのかな? まあ商業デビューしてるしいっか)

「頑張ってね」

 エレベーターの扉が開き、その人は去っていった。

 ……当たり前のように受け答えしちゃったけど、こちらが不審者だと思ったらアウトじゃないだろうか。
 特におじさんに勘違いされた通り、僕が未成年の女の子だったら……ねえ?

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