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『可愛いあの子の殺人事件』

「香山リカ殺人事件の犯人は藍、あんただ」
力強く言い放った茜は、こちらへピシッと指先を伸ばした。
「証拠は?」
「そう切り返す時点で九分九厘自白しているようなものだけど、教えてあげる。藍のシャツにリカちゃんの髪がついてたの。あのごわついた茶髪は彼女のもので間違いない」
名探偵を気取った彼女は得意げである。私には到底そんな表情はできない。
「茜、怖いわ」
「え?」
私たちの目の前に転がっているのは「香山リカのバラバラ死体」こと壊れたリカちゃん人形である。初めのうちは殺人事件という茶番に付き合ってやっていたが、そろそろ限界だ。
「何で糸くず見ただけでリカちゃんの髪だって分かるの?」
「そりゃまあ比較対象があるからね」
茜は冷静に、切断された香山リカの頭部を拾い上げた。
「むしろ人形をここまでバラバラにした藍が怖いよ。何があったの?」
「別に」
もちろん茜の愛情を一心に受けていた彼女が憎かったから。茜の手の中で今もなお微笑み続ける香山リカの生首を、私は潰してしまいたい。

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