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『恋文の行く先』

 危なかった。
 取り戻した白い封筒を見つめ、僕は溜め息を吐いた。まさか奴の手に渡るとは……うっかり読まれなくて本当に良かった。
「今度こそ、城安さんに――」
 彼女の机の中にラブレターを仕込むのだ。
「私が、何?」
「へ?」
 城安さんがそこにいた。僕は慌てて封筒を後ろ手に隠す。
「何でもないです!」
 いや、隠す必要はなかったのか?
 とは言え直接手渡すプランなどまるで考えていなかった。どうする? どうする、どうする!
 そうだ、まずは確実に二人きりにならねばならない。僕は教室から廊下の突き当りまで彼女を引っ張っていった。
「読んでください!」
 差し出した恋文が、僕の手を離れぬまま中空を彷徨う。
「……どうして『好きです』って言えないかな」
 彼女は苦笑していた。

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