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良い写真の共通点を探す(3)

エモい写真は誰ためにあるのか?

前回は、ブライダル写真には「新郎新婦に思い出を残す」ための目的がありそうという記事を書きました。わかりやすく、伝わる(≒目的が達成できる)写真が良い写真であるという話でしたね。ところで、Twitterでよく見るあの綺麗でエモい写真たちは誰のための、何が目的の写真なのでしょうか?

この前、Twitter上で辛口のツイートを見ました。確か「エモい写真はあまり社会に必要とされない」というようなものでした。私はどうも、それがしっくり来なくて自分で色々と考えてみました。そもそも他人のコンテンツに対してどうこう言えるのは発注してくれたクライアントくらいだと思っています。本人が楽しんでいるなら別に良いではないかとも思いました。しかし、野暮な発言をする人も居るんだなという感想だけで片付けるほど、根の浅い問題には思えませんでした。もっと、何か根本的な違和感があります。

SNSの写真は、あなたの世界観を伝えるためのもの

SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)について、知らない人はもう居ないでしょう。TwitterやInstagram、TikTokなどWEBサービス/アプリはとても有名で、この記事を読んでいる方はどれかを使っているのではないでしょうか。これらのサービスに共通するのは「投稿」、「いいね」、そして「フォロー」です。それらを通じて社会的なネットワークを構築していくサービスがSNSです。つまり、SNSという仕組み自体が「投稿(表現)」に対して「いいね(共感)」を集めて「フォロー(購読)」を増やすようなブランディング行為を推奨しています。なので、エモい写真を上げて「いいね(共感)」をもらう事は、SNSではとても自然な事なんですよね。そう考えると「エモい写真は社会に必要とされない」という発言自体がSNSを否定しているように感じます。反対意見で「いいね」を稼いでいるのかもしれませんが、それなら写真を撮って載せた方がいいのになと思います。私の中の違和感は、SNSで発言をしながらSNS自体を否定するような矛盾に対するものでした。

Twitterでよく見るエモい写真は誰のためにあるのか?の答えは「あなたのブランディングのためにある」です。SNS上の投稿である以上、共感を集めることが一種のゴールであり、そのためにコンテンツを投稿するというのは自然なことです。「誰のために」「何を伝えるか」という観点で捉えてみます。誰のためというのは、Twitterを見ているすべてのユーザーへ。何をというのは、あなたの世界観を伝えるため(≒ブランディング行為)です。

Simone Bramanteさんのいいね数ランキング

例によってランキングを作り、いいねが多い投稿と世界観について考察したいと思います。私が好きな海外のフォトグラファーのSimone BramanteさんのInstagram投稿でランキングを作ってみました。今回は、第10位から発表していきます。上から、第10位、第9位、第8位…第2位という順番になります。

どれも幻想的な、独特の世界観を出しています。まるでファンタジーの世界に迷い込んだかのような、そんな感覚になりますね。第10位〜第2位までは、なんと全てがいいね数40,000を超えています。第2位が5,6000いいねです。ここまでもすごいのですが、第1位は第2位の24倍のいいねがついています。1,300,000(130万)いいねです。桁が2つも違います。それが、こちらの作品です。

とてもいい写真なのですが、同時に私は少し違和感を覚えました。今までの現実と虚構の狭間のような写真からは全く違う印象を受けます。確かにこの写真からは、明らかに他の写真よりも何か惹きつけられるものを感じます。しかし、Simone Bramanteさんの世界観の延長線上にあるかと言われると、少し路線が違っている気がします。ただ、この写真からはとても強烈なインパクトを感じます。世界観への評価というよりは、インパクトへの評価といったところでしょうか。

共感される写真があなたの世界観を投影しているとは限らない

もしかしたら、このような親子の写真が表現したい世界観なのかもしれませんが、私はそうではないように思えました。今回のランキングで気づいたことは、自分が表現したい世界観の写真で出来栄えの良いものが、必ずしもたくさんの人に共感される訳ではないということでした。世界観を守りつつ投稿し、例えバズったとしてもそれによって世界観が大きく影響されては本末顛倒になってしまいます。SNSは共感によって自分をブランディングすることができる場で、写真に目的があるとしたらエモい写真はその目的のためにあります。しかし、いいねに影響されすぎることで自分の世界観が少しズレてしまう可能性があります。いいねされる写真は確かに良い写真ではあるのですが、長期的に見て自分らしくない写真にもいいねはついてしまうので、必ずしも「良い写真」の条件には含まれないのだろうなぁ、と感じました。また、今回は写真の「インパクト」について考えさせられました。2〜10位ですら4万〜5万いいねがついているのに、1位の写真はその24倍の130万いいねがついています。この写真には非常に高いポテンシャルが秘められているようです。

つづく

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