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はじめてのHIV検査 in Paris その3

ボンジュール、皆さま。
訪れてくださってありがとうございます!
前回に続いて、パリで初体験した「HIV検査」のエピソードをお届けします。

ひどい顔にエール、ボン クラージュ!
初訪問の私はまず、問診票を埋める必要があったが、もちろん全部フランス語。
日常会話もまだまだ怪しい私が、性病に関する医学用語を知っている訳もなく、ちんぷんかんぷんで筆が進まないでいると、目の前にまともそうなアラサーフランス人女性が書類を埋めているではないか。

すかさず彼女に助けを求めると、私の顔を凝視した後、今までパリで会ったフランス人女性で一番サンパ(親切で感じの良い人)なんじゃないかと思うほど、至極丁寧に優しく説明してくれた。

そして「ボン クラージュ(がんばってね)」と私に囁いて去っていった。お礼を言って、問診票を提出した後は自分の番号を呼ばれるまで大きな待合室でみんなと一緒に待った。

私が自意識過剰かどうかは、この際無視したとしても、四方から舐め回すような強い視線を始終感じて、居心地がとても悪かった。アジア人のわりと身なりのきちんとした感じの女性は私ひとりだったので、珍しがられるのは無理もないかと思いながら、ふと顔を上げると正面の鏡の壁に映った自分の姿が見えた。

映っていたのは、まるでレイプかDVにあったかのような、あるいは性病に犯された顔中傷だらけの哀れな女だった。知ってはいたけど、改めて…ひどい顔!
視線を集めたのは人種の違いではなく、明らかに顔のせいだ。しかも分からぬままにエイズ検査を受けることになった私の顔は、かなりおどおどしていたのだろう。

「パリで何やっているんだろう?」 と、最終的には何だか可笑しい気分になって、思わずひとりで笑ってしまった。(余計に変な女になっていたかも…)

私のデキモノ顔面とは裏腹に美しいフォルムの像 in セビージャ

エイズでもコロナでもなく、大人のとびひ。
検査は親切な医者が手振り身振りを交えて説明してくれたおかげで、問題なく終わった。やっぱり最後に「ボン クラージュ!(がんばってね)」と言われて見送られた。

こうして、予期せぬ成り行きでHIV検査を受けた私は、結果が出るまでの一週間、心当たりがあるわけでもないのに、まさか陽性だったらとドキドキして過ごす羽目になった。もちろん結果は全て陰性だった。

顔のデキモノは一向に良くなる兆しがなかったため、別の医者にやっとのことで診てもらうと、“大人のとびひ”と診断され、どうやら最初の医者に性病だと疑われて処方された塗り薬が原因で、悪化の一途を辿ったようだった。このたった数日後からイタリアでコロナが猛威を振るうこととなったので、治りかけの私の顔は、まさかコロナ?!と同僚にからかわれたりもしたが、新しく出された薬を服用して、一週間ほどで完治した。

ちなみにフランスでは、公的サービスとして推進されていることもあり、HIV検査は誰もが予約なしで無料で受けられるようだ。だからか、定期的に検査をしたり、新しいパートナーと交際し始める前に受けたりする友達もいて、わりと一般的なことで全くもってやましいことはないし、むしろマナーとして大切なことだと思っている人の方が多いようです。私もそう思う。

2023年5月23日
さぁや、パリ。

青空が一層生えるセビージャの街並み

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