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映画感想文「ひらいて」芥川賞作家綿矢りさの小説が原作。山田杏奈の凄さがわかる作品

胸をかきむしりたくなるほどの激しさで誰かを欲したことがある。

決して愛情ではなく、溺れそうな子供が何かを必死で掴むかのような必然で、だけど相手のことなんてお構い無しの衝動で。

「壊れてるよ」とか友人に指摘されて。うん、自分だってあなたの立場なら確かにそう言うわ、と冷静に思ったりする。なのに溢れる感情を制御できない。

芥川賞作家綿矢りさの小説を原作に、26歳の首藤凛監督が描く女子高生の恋愛物語。

作り笑いを浮かべ、渇きを湛えた暗い目で、滑稽な獰猛さを演じる主人公の山田杏奈が凄い。

推薦入試も楽勝で成績優秀、文化祭の役員もこなすクラスの人気者愛(山田杏奈)は、寡黙で目立たぬが聡明で大人びた同級生のたとえ(作間龍斗)に恋をする。

しかし全く相手にされず、彼女がいるのかもしれないと悶々とした愛はロッカーを無断で探り、証拠を見つける。

彼はノーマークだった地味な同級生と付き合っていた。いいようのない感情にかられた愛は、自分の気持ちをひた隠し彼女に近付く。そこから愛の暴走が始まっていく。

主人公達と同年代の若い女子で満席の映画館で、こういう感情を飼い慣らせる、歳を重ねた利点に安堵しつつ、一抹の寂しさも味わう。

人は何かを獲得し、同時に何かを失っていく。

懐かしい感情に浸りたいなら、ぜひ。ちなみに若干エロ場面あり。初めてのデートにはおすすめしない。

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