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映画感想文「少女は卒業しない」甘酸っぱい群像劇

「甘酸っぱい」は、後から思うことだ。

無力でちっぽけで、どうしていいかわからない、ティーンエイジャー。

大昔の流行り歌みたいに、あの頃は胸にトゲさすことばかりだった。

校舎取り壊しが決まった地方の高校を舞台に、大切な思い出に別れを告げる、4人の少女達の卒業式までの2日間を描く。

東京への進学を選んだことで地元に残る彼氏と気まずくなったバスケ部の後藤。中学からの同級生に淡い思いを抱く軽音楽部の神田。クラスに馴染めず図書室が唯一の居場所の作田。卒業生代表で答辞を読む料理部の山城。

どのエピソードも「ああ、そんな事あったな」と胸がチクリと痛む、リアルな懐かしさがある。そして、タイプの異なる4人がいずれも芸達者で見ごたえある。

とりわけ注目は主演の河合優実。

キュートだが美人というにはバランスが悪い。可憐でもあり大人びてもいる。横顔の憂いに目が離せない。

直木賞作家朝井リョウの短編が原作。痛みを堪えながら一歩を踏み出す少女たちの勇気が尊い。

あの頃を甘酸っぱく思い起こし、清々しい気持ちになる良作。大人にこそ、おすすめ。

(余談)
脇を固める、佐藤緋美(浅野忠信とCHARAの息子)、窪塚愛流(窪塚洋介の息子)も好演。芸能は遺伝要素も多いと二世をみる度に思う。

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