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映画感想文「ONODA一万夜を超えて」最後は一人では生きられなかった小野田さんに人間を感じる

ひとりでは生きられないのだ、と痛切に感じてる。

気兼ねなくどこへでも自由に旅行や外出ができ、いつでも人を誘えたコロナ前には感じなかった人恋しさを感じたコロナ禍。

だからこの映画を観て『ああ、小野田さんは人恋しかったんだろうな』と腹落ちした。

そして彼を発見した25歳の冒険家に心惹かれた。

幼少の頃、テレビでみた衝撃を忘れない、元日本兵の小野田寛郎さん。

太平洋戦争終結後もフィリピン・ルバング島で戦争を続け、終戦から30年後、51歳で日本に戻った。

仲間と共に戦争を続けていた彼は、最後の一人亡き後、ひとりぼっちになる。飢えや病気以上に、孤独は人を蝕む。

そんな時に現れたのが、仲野大賀演じる、日本への帰国を促す人懐っこい青年だ。国も家族もジャングルから連れ戻せなかった彼を発見し、胸襟を開かせ、彼の戦争を終らせた。

情報収集、防諜謀略活動などの秘密戦専門要員養成の陸軍中野学校で、特殊訓練を受け、決して自決してはならない。生き残って戦い続けよと教育されたという。 それだけ軍隊での洗脳が強烈だったということなのか、それとも、同じ事をやり続けることの方が実は楽だという人間の変化対応力のなさゆえなのか。

いずれにせよ、つくづく恐ろしい。そして、笑えない。現代の自分も無関係と思えない。

だからこそ、そこに変化を投じた冒険家の存在に心惹かれるのかもしれない。

この昭和史を、フランス人のアルチュール・アラリ監督が映画化。 戦争ものというよりも、人間ドラマ。

第三者(日本人以外)が観た戦争や小野田さんが比較的淡々と描かれていることに好感が持てる。

12年後、冒険家の青年は、雪男を探しに行ったヒマラヤで37歳の短い生涯を閉じた。小野田さんは彼を悼み、ヒマラヤを訪ねたという。

映画には描かれない「その後」があった。事実は物語以上にドラマティックだ。

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