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映画感想文「君は永遠にそいつらより若い」佐久間由衣が華やかさ封印しダサい女子大生を好演。何気に名作

「子供を生んだことない女性は人として認めない。優しさとか包容力がないと思うから」

他愛もない会話のなかで男友達が言った。反論するのも子供じみてる気がして、更にそうなのかもしれないと勝手に卑屈になり「そんな冷たいこと言わないでさー」と、茶化してやり過ごした。

後悔してる。傷付いた気持ちを伝えられなかったことを。そしてその時に彼がなぜそう言ったのか聴けなかったことを。

誰かの何気ない言動に傷付く自分。そんな時に向き合えず蓋をする自分。そしてたぶん、同じ様に誰かを傷付けてる自分もいる。

就職も決まり卒業までの日々をだらだら過ごす大学4年のホリガイ(佐久間由衣)は、飲み会でゼミ仲間に中傷されても自虐的な笑いでごまかすお調子者だ。

だけどそんな彼女も、ある日バイト先での悪気ない一言で後輩を傷付けてしまう。

また、彼女が友人に代返を頼まれ出席した授業で出会うイノギ(奈緒)は、子供の頃に受けた暴力で肉体的に痛め付けられた経験を持っていた。

生きる意味を見いだせないホミネ(笠松将)、親友の異変に気付かなかったことで自分を責めるヨシザキ(小日向星一)、人には理解されないコンプレックスで悩むヤスダ(葵揚)、登場する若者たちはみな、それぞれの痛みを抱えている。

身長170センチで八頭身、モデル出身佐久間由衣が華やかさを封印し「自分には大切な何かが欠けている」と自己肯定感の低いダサい女子大生を好演。受けてたつ奈緒も他者を癒しそれによって自分も癒されていく芯の強い女子大生を透明感を湛え演じる。

児童虐待、ネグレクト、誹謗中傷(言葉の暴力)、コンプレックス。重いテーマばかりだが、若者たちがそれらの痛みに懸命に対峙していく様は温かな気持ちを呼び起こし、抱き締めたくなるほどにいとおしい。

タイトルの意味を悟った時、号泣。人と関わる覚悟を決めていく暗示のラストに勇気をもらう。

芥川賞受賞作家津村記久子のデビュー作で第21回太宰治賞受賞作の映画化。公開時も上映館が少なかったのが残念。沢山の人に観てほしい良作。

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