SMAPの「Theme of Mr.S」を誰かに紹介したくてたまらない

 先日、「人に紹介したい曲を1曲挙げる」という機会があった。

 今この瞬間、とにかく誰かに紹介したい曲と言われれば、わたしはUNISON SQUARE GARDENの「シュガーソングとビターステップ」を挙げる。もう、amazonにリンクとか貼ってしまうくらい、迷いなく、熱烈に紹介したいしオススメの1曲である(アフィリエイトがnoteでできるのか分からなかったので、普通にリンクを貼ってます)。ポップで楽しくて、それでいてちょっとだけ毒を孕んでいてという、ユニゾンの真骨頂。まだ聴いていない方は是非、まずは試聴だけでも。ちなみにわたしはいつか、彼らにSMAPへ曲を提供してほしい。

 SMAPの話をしたいのに、いきなり思いっきり話が逸れた。こんな風にユニゾンを紹介したい気持ちでいっぱいなのだが(むしろ、これは後で改めて別エントリで書いとこうかな)、先日曲を紹介したのは初対面の人たちにむけての「自己紹介」の場。こうなると、少し話は違ってくる。ユニゾンを薦めてももちろん全然問題ないし本当に問題ないのだけれど、もう少し自分らしさというか、インパクトみたいなものを出したいなぁというか、その場の都合がやっぱり最高じゃない、などと思うわけである(シャレオツ)。ちょっと何言ってるか分からない。

 何はともあれ、多くの人に聴いてほしくて、自分らしいチョイスの楽曲。どうせなら、あまり皆が知らないものの方がいいな。…5分考えた結果、私が選んだのが「Theme of Mr.S(colorful ver.) 」だ。

「Theme of Mr. S」は、『Mr.S』という、SMAPの現時点での最新アルバムに収録されている楽曲だ。

 SMAPのアルバムには、「テーマ曲」というものが収録されることが多い(収録されていないものもあるけど)。アルバム収録されているオープニング曲とエンディング曲が、そのアルバムの世界観を作り上げている。『Mr.S』も然り。オープニングを飾る「Theme of Mr.S(colorful ver.)」が私たちをMr.Sの世界へと誘い、エンディングとなる「Theme of Mr.S(monochrome ver.)」が出口の役割をつとめ…てはいないな。後述します。


「Theme of Mr.S(colorful ver.)」は、夢の中へと誘うようなトランペットの気怠いモチーフから始まる。そこから管楽器やバイオリン、ドラム、コーラスが折り重なって極彩色の世界を織りなしていく。「めくるめく」という言葉がこれほどしっくり来る曲に、わたしは初めて出会った。金管楽器やサックスが格好いい、と思った次の瞬間には弦楽器による優雅なワルツに、と思いきや低音楽器が幅を利かせるゴリゴリのパートへ。メインになっているモチーフ(勝手に「Mr. S」のモチーフ、と呼んでます)が様々な楽器で奏でられ、どんどん色を変えていく。原色の派手派手しいその音の移り変わりは、しつこいほどに「Colorful」だ。

 そこにコーラスが加わる。歌詞カードには何を歌っているか特に記載されていないけれど、多分「最低で最高の男 Mr.S SMAP」くらいのことしか言っていない。そんなシンプルなコーラスが、曲の随所にスパイスとして加わっている。目が回りそうなくらい色とりどりのこの曲を聴いて疲れてしまわないのは、多分このコーラスのおかげだ。一瞬スッと音が消え、そこに「エス エム エイ ピー」というコーラスが入る。舞台に例えるなら、パッと照明が落ちるようなイメージ。何も見えなくはなるんだけれど、だからと言って何もなくなるわけではない。その間に絶妙に入るコーラスが、この曲全体の雰囲気を引き締めている。


 この曲を初めて聴いた時に、「このワクワク感は一体何なのだろう」と思った。音しかないのに、目の前でSMAPのメンバーやダンサーが踊っているわけでもないのに、曲を聴いただけでコンサートの様子が目に浮かぶようだった。「一体どんな人が書いた曲なのだろう?」と思ってクレジットを見て、「なるほどね」とガクガク納得。作曲者は、太田健という人だ。おそらく、大半の音楽ファンにとってもジャニオタにとっても馴染みのない名前だと思うけれど、この人は宝塚歌劇団に所属する作曲家・編曲家だ。星組・花組公演の「オーシャンズ11」などの作曲をした人である。舞台音楽のプロだからきっと、ステージの光景を音楽だけで描き出すことができたのではないだろうか。


 この曲は、今(アルバムが出た昨年晩夏時点でもいいや)のSMAPを端的に表していると思う。それぞれに強烈な色を持った、中居正広・木村拓哉・稲垣吾郎・草彅剛・香取慎吾という5人が1箇所に集まり、絶妙なバランスで成り立っているのが「SMAP」だ。彼らがここに辿り着くまでには、色々なことがあった。改めて言う必要もないくらい、本当に色々なこと。ファンとして見ていて嬉しい・楽しいことだけではなく、辛くなることや悲しくなることも山ほどあった。だけど、その全てを経たからこそ、彼らは5人で今の場所に立っているのだ。「もしあの時こうだったら」と思うことはあるけれど、多分何か1つでも欠けていたら彼らは今と違った形になっているんだと思う。コーラスの入っていないこの曲がきっと成り立たないのと同じように。そう考えると、今のSMAPが好きなわたしにとっては、彼らが全ての紆余曲折を乗り越えてきてくれたことは奇跡以外の何物でもないのだ。


 今回のブログ記事のテーマは基本的に「Theme of Mr.S(colorful ver.)」を誰かに紹介したい、というものだったのだけれど、対になっているからちょっとだけ「Theme of Mr.S(monochrome ver.)」の話。この曲にも用いられている「Mr. S」のモチーフは、気怠そうな雰囲気に加えて長い長い夢から醒めたかのような物悲しさを持っている。オープニング曲は極彩色の世界だったけれど、こちらはまるで白黒映画だ。

 わたしがこの曲を聴いていつも思い浮かべるのは、バー・カウンターで一人お酒を楽しむ初老の男性。若い頃の栄光を想いながらお酒を嗜んでいるうちに徐々に夢の世界へと入っていき、最後はステージ上で拍手喝采を浴びる、というイメージ。曲の最後では、鳴り止まぬカーテンコールが聞こえるような気すらする。気の持ち方一つで、いつだって夢を見ることや叶えることができる、というメッセージ性を勝手に感じ取っているのは、多分わたしの考え過ぎだ。

 上の方で、この曲が「出口の役割をつとめてはいない」と書いた。「monochrome ver.」で使われているのは、結局のところ「colorful ver.」と同じMr.Sのモチーフだ。極彩色だったモチーフが「白」と「黒」にがらりと色を変えているだけ。つまるところ、この曲は「出口」としての役割を為してはいない。我々は、「Mr.S」の世界から抜け出せてはいないのである。


 発売からなんだかんだ1年近く経っている『Mr.S』だけど、未だにものすごい頻度で聴く1枚だ。ソロ曲がアルバムの中に含まれている(別ディスクじゃなくて)一方で中居くんのソロ曲がないこと、かわりにかどうかは知らないけど「好きよ」のラストが中居くんのソロであること、「Mistake!」のシングル版とRe-Mix版の違い、表題曲「Mr.S」はメロディが凄く良いんだけど歌詞の乗り方にそこはかとなく違和感を覚える……などなど、誰かに話したくてたまらないことはまだまだ沢山ある。発売当時からいろんなことを思いながら聴いていたはずなので、卒論に追われていてこの辺の感想を一切まとめていなかったのが本当に悔やまれる。もう少し、なんでもないタイミングでちょっとずつ書いていくことにしようかな。このアルバム、本当に好きなのだ。SMAPの中だと『GIFT of SMAP』の次くらいに好き(このアルバムはわたしの中でダントツ。譲れません)。


 そういえば今年の頭に「おすすめのCDを1枚持ち寄って互いに交換する」というCD交換会を行った時にも、わたしが出したのは『Mr. S』だった。その時にも、「とにかく1曲目が良いんです。SMAPは歌がイマイチだから聴きたくないという人もいるかもしれない、だけど1曲目だけでもいいから聴いてください。SMAP歌ってないから大丈夫です」とコメントしたような記憶がある(このコメント、改めて文章にするとスマオタとして最悪だなぁ…)。

 そのくらいゴリ押ししたいこの曲だが、聴くためにはアルバムまたはツアーDVDを買うしかない。というわけで、興味のある方はリンクから是非。今年はおそらくツアーがないので、このアルバムを聴いてもう1年、コンサートを疑似体験しておこう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?