2023/08/03(木)のゾンビ論文 フェラ・クティの分析

ゾンビについて書かれた論文を収集すべく、Googleスカラーのアラート機能を使っている。アラート設定ごとに、得られた論文を以下にまとめる。

アラートの条件は次の通り。

  1. 「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」

  2. 「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -viability -gender」

  3. 「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -biolegend -gender」

  4. 「zombie -firm -philosophical」(取りこぼし確認)

  5. 「zombie」(取りこぼし確認その2)

検索条件は次の意図をもって設定してある。

  • 「zombie」:ゾンビ論文を探す

  • 「-firm」:ゾンビ企業を扱う経済学の論文を排除する

  • 「-philosophical」:哲学的ゾンビを扱う哲学の論文を排除する

  • 「-DDoS」/「-bot」:ゾンビPCを扱う情報科学の論文を排除する

  • 「-xylazine」:ゾンビドラッグに関する論文を排除する

  • 「-viability」/「-biolegend」:細胞の生死を確認するゾンビ試薬を使う医学の論文を排除する

  • 「-gender」:ジェンダー学の論文を排除する

また、「zombie」の内容も確認するのは、上記の検索キーワードで不必要にゾンビ論文を排除していないかを確かめる目的である。ただし、条件4の通り、ゾンビ企業と哲学的ゾンビは完全な排除をねらう。

それぞれのヒット数は以下の通り。

  1. 「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」三件

  2. 「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -viability -gender」二件

  3. 「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -biolegend -gender」二件

  4. 「zombie -firm -philosophical」三件(差分一件)

  5. 「zombie」三件(条件4との差分ゼロ件)

「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」は人文学が二件、情報科学が一件だった。



検索キーワード「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」

フェラ・アニクラポの震えと震え、『Sorrow Tears and Blood』における毒舌の実践的分析

一件目。

原題:Pragmatic Analysis of Invectives in Fela Anikulapo's Shuffering and Shmilling, Sorrow, Tears and Blood
掲載:Jounal of Humanities, Music and Dance
著者:Shote dedapo OdadejiとKathryn Enwer
ジャンル:人文学

Fela Aníkúlápó Kuti(フェラ・アニクラポ・クティ)というナイジェリア出身のミュージシャンがおり、その代表作に『Zombie』があるため、引っかかった。

論文の内容を端的に表す部分をアブストラクトから引用する。

This study is concerned with the pragmatic interpretation of Fela’s penchant to use invectives as a satirical tool to lampoon the government, and also with the potential of invective as an aesthetic form.
(この研究は、政府を風刺するための風刺ツールとして毒舌を使用するフェラの傾向の実際的な解釈と、美的形式としての毒舌の可能性に関するものである。)

フェラは黒人解放活動家としての顔も持っており、上記の『Zombie』も弾圧者である軍隊をゾンビに喩えたものらしい。また、『Sorrow Tears and Blood』という楽曲も作っており、その中でpenchant(毒舌)がどのように使われているのかがこの論文の焦点らしい。

興味を引くのはゾンビを弾圧者側においている点だ。通常、ゾンビは虐げられる側として喩えられる。奴隷や資本主義の走狗が良い例だ。

しかしフェラは弾圧者である軍隊をゾンビに喩えている。過去にフランス軍をゾンビに喩えるケースを扱ったことがあり、そのときは理由まで気にしなかったが、今考えると不思議である。ゾンビが常に大勢で襲ってくる点を軍隊との相似点としたのだろうか。

ジャンルは人文学とする。音楽、政治、文学的評論と幅広くカバーしているように思えたため、ジャンルの抽象度を高めにすべきと判断した。


「少女と死体」:ボニー・ロットンの「タトゥーを入れた変人」

二件目。

原題:"Girls and corpses': the 'tattoo-titted freakdom' of Bonnie Rotten
掲載:Porn Studies
著者:James Forsyth Anderson
ジャンル:人文学

Bonnie Rottenというポルノ女優(AV女優と呼んでもよいかもしれない。最近はセクシー女優と呼ぶことが多いか?)の分析を行う論文。彼女がお腹に『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』のゾンビのタトゥーを入れていることから、検索に引っかかった。

また、『エルム街の悪夢』や『13日の金曜日』などを参考にしたタトゥーもあるらしく、日本でイメージされるポルノ女優とはだいぶ異なるように思う。

エロい絡みを期待したのにホラーな絵が出てきたらきっと萎える。この論文でも間接的にそういうことを言っており、本来であれば萎えるような具象を持っている彼女がなぜスターになれたのか、そしてそのような具象がなぜ現代のポルノでは馴染み深いものになったのかを分析する。

慣れれば日本人でも、たとえばドクロのタトゥー持ち女優でもいけるのだろうか…。にわかには信じがたいが…。いや日本の場合は入れ墨に対する忌避感もあるが。

ジャンルは人文学。掲載誌からポルノ学とするか迷ったが、Porn Studiesのホームには次の一文が表記されているため、幅広い人文学とした。

Publishes research exploring the cultural products and services designated as pornographic and their cultural, economic, historical, legal and social contexts.
(ポルノとして指定された文化的製品やサービスと、それらの文化的、経済的、歴史的、法的、社会的背景を調査した研究を発表します。)

Porn Sudies ホームより


Software-Defined IoT (SD-IoT) ネットワークにおける DDoS 攻撃検出のための機械学習ベースのフレームワークに向けて

三件目。

原題:Towards a machine learning-based framework for DDOS attack detection in software-defined IoT (SD-IoT) networks
掲載:Engineering Applications of Artificial Intelligence
著者:Jalal Bhayoを筆頭著者として、六名
ジャンル:情報科学

ゾンビPCによるDDoS攻撃に関する論文。

IoTにおいて、インターネットに繋がれたモノはゾンビPCによるDDoS攻撃に脆弱らしい。確かにそんな気もする。アレクサがセキュリティ万全のPCよりも強いイメージがない。

そして、その脆弱性をカバーするために検出機能を機械学習で高めてやる、と。

ジャンルは情報科学。ゾンビPCが出てきたら問答無用で情報科学。


検索条件1-3の差分(一件)

「DDoS/bot」と「viability/biolegend」で検索結果に差異が生じるか調べる。

今回は「DDoS/bot」に差異が見られた。

「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」三件
「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -viability -gender」二件
「zombie -firm -philosophical -DDos -xylazine -biolegend -gender」二件

差分は次の一件。

Software-Defined IoT (SD-IoT) ネットワークにおける DDOS 攻撃検出のための機械学習ベースのフレームワークに向けて

タイトルにDDoSとあるから、当然「-DDoS」で排除される。ではなぜ「-bot」で排除されなかったのかというと、使われていた単語が“bot”ではなく“botnet”だったからである。

調べたところ、botでも間違いではないがbotnetのほうがゾンビPCに強く関連しているようだ。

ボットネット(英:Botnet)とは、一般にサイバー犯罪者がトロイの木馬やその他の悪意あるプログラムを使用して乗っ取った多数のゾンビコンピュータで構成されるネットワークのことを指す[1]。

Wikipedia『ボットネット』より

Bot(ボット)は、robot(ロボット)の短縮形・略称で、転じてコンピュータやインターネット関連の自動化プログラムの一種のこと

Wikipedia『ボット』より

きちんと下調べもせずに実験を進めていた学生時代を思い出す。体力だけに頼って、禄に考察をもせずにたくさんの実験データをゴリ押しで解析していたあの頃を。

9月からは「-bot」を「-botnet」に変更しよう。


検索キーワード「zombie -firm -philosophical」

上記の条件で誤ってねらいのゾンビ論文を取りこぼしていないかチェックするために、こちらの検索結果もチェックしておく。ただし、ゾンビ企業と哲学的ゾンビは意図的に取りこぼすこととする。

分析フレームワークとしての体験的遊び: The Last of Us Part II における共感と痛烈なクィアネス

原題:Experiential Play as an Analytical Framework: Empathetic and Grating Queerness in The Last of Us Part II
掲載:Game Studies
著者:Adrianna BurtonとKimberly Dennin
ジャンル:ゲームデザイン学

ゾンビが出てくる映像作品である『ラスト・オブ・アス2』に関する論文。

「-gender」で排除された。タイトルに「クィア」と入っていることからも容易に想像される。ジェンダーを使えばあらゆるフィクション作品で銅鉄論文を書けそうだ。



検索キーワード「zombie」(差分なし)

「zombie -firm -philosophical」との差分を確認する。上記条件からも排除され、こちらの条件でのみ引っかかった論文がゾンビ企業・哲学的ゾンビの論文であれば、ねらい通りといえる。

今回は差分がなかった。



まとめ

「zombie -firm -philosophical -bot -xylazine -biolegend -gender」は人文学が二件、情報科学が一件だった。

作品タイトルとしてのゾンビ、タトゥーに出てくるゾンビ、ゾンビPC。当たりはひとつもなく、しかも本物かどうかの判定もわかりやすい。特にコメントしたくなることもない。

今日はねらいのゾンビ論文なし。


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