2024/1/4(木)のゾンビ論文 ゾンビのように蘇るモーツァルト効果

ゾンビについて書かれた論文を収集すべく、Googleスカラーのアラート機能を使っている。アラート設定ごとに、得られた論文を以下にまとめる。

アラートの条件は次の通り。

  1. 「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network」

  2. 「zombie -firms -philosophical -xylazine -biolegend -gender -narrative -network

  3. 「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS」(取りこぼし確認用)

検索条件は次の意図をもって設定してある。

  • 「zombie」:ゾンビ論文を探す

  • 「-firms」:ゾンビ企業を扱う論文を排除する

  • 「-philosophical」:哲学的ゾンビを扱う論文を排除する

  • 「-drug/xylazine」:ゾンビドラッグに関する論文を排除する

  • 「-network」:とにかく情報科学の論文を排除したい

  • 「-DDoS」:ゾンビPCを扱う論文を排除する

  • 「-biolegend」:細胞の生死を確認するゾンビ試薬を使う医学の論文を排除する

  • 「-gender」:ジェンダー学の論文を排除する

  • 「-narrative」:ゾンビ映画・小説などを評論する論文を排除する

検索条件2は「-drug」と「-xylazine」の差分を見るためにある。また、検索条件1と2には一般性の高い排除キーワードが含まれているため、それらが不必要にゾンビ論文を排除していないかを確かめる。

今回、それぞれのヒット数は以下の通り。

  1. 「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network」一件

  2. 「zombie -firms -philosophical -xylazine -biolegend -gender -narrative -network」一件(差分ゼロ件)

  3. 「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS」五件(検索条件2との差分は四件)

検索条件1は心理学が一件だった。


検索条件1「zombie -firms -philosophical -drug -biolegend -gender -narrative -network」

モーツァルト効果は生き続ける

一件目。

原題:The Mozart Effect Lives On
掲載:Behavior & Belief
著者:Stuart Vyse
ジャンル:心理学

この論文のページにはアブストラクトすら掲載していないが、掲載誌のページに行くと論文の一部を閲覧することができる。そこには次の文章が書かれている。

Every now and again it’s worth looking back at old unsupported ideas that we thought were dead and buried because, like zombies, they sometimes climb out of their graves and stagger into the future. So, when I came across a recent mention of Wolfgang Mozart in a psychological study, I was not entirely surprised by …
(死んだもの、埋もれたものだと思われていた、裏付けのない古いアイデアを時々振り返ることは価値があります。なぜなら、それらはゾンビのように、時々墓から這い出て、よろめきながら未来へ向かうからです。ですから、最近心理学研究でヴォルフガング・モーツァルトについての言及を見つけたとき、私はまったく驚きませんでした…)

同論文より

要するに、ゾンビアイデアである。何がゾンビアイデアかと言えば、モーツァルト効果がそうなのだろう。十数年前に否定されたモーツァルト効果がゾンビのように蘇ってきた、と。

モーツァルト効果(モーツァルトこうか、英: Mozart effect)とは、モーツァルトに代表されるクラシック音楽を聴くと頭が良くなる、と主張される効果。

音楽と知性の関連についての多数の研究費申請が続いたため、 ドイツ教育省は様々な分野の研究者を集めて検討をすすめ、2007年に「モーツァルト効果は存在しない」と結論づけた研究結果を発表し、音楽を聞くだけでは知能が発達しないことを示した[18][19]。

Wikipedia掲載
『モーツァルト効果』より

ジャンルは心理学でいいだろう。



検索条件2「zombie -firms -philosophical -xylazine -biolegend -gender -narrative -network」(差分なし)

検索条件1との差分を調べ、「-drug」が「-xylazine」よりも論文を排除しているか確認する。

今回は差分がなかった。



検索条件3「zombie -firms -xylazine -biolegend -DDoS」

上記の条件で誤ってねらいのゾンビ論文を取りこぼしていないかチェックするために、こちらの検索結果もチェックしておく。ただし、ゾンビ企業とゾンビドラッグ、ゾンビ試薬、ゾンビPCは排除されるように設定してある。

ゾンビボックスが朝食に脳を食べてしまうのか?

原題:Зомбоящик съест ваши мозги на завтрак?
掲載:Известия Саратовского Университета: Новая Серия. Серия Философия. Психология. Педагогика
著者:С. В. Тихонова と Д. С. Артамонов
ジャンル:哲学

ロシア語の論文。比較的わかりやすい英語で表記すると、以下の通り。

原題:Will the zombie box eat your brains for breakfast?
掲載:News of Saratov University: New Series. Series Philosophy. Psychology. Pedagogy
著者:Sophia V. Tikhonova と Denis S. Artamonov

「-gender」で排除。ゾンビボックスとはロシアにおいて政府管理下にあるTVのこと。以前にも記事で触れたことがある

Russians often talk about their government-controlled TV as “the zombie box”: a recent poll suggests that Russians won’t let themselves be turned into uncritical “zombies” after all.
(ロシア人は、「ゾンビボックス」と呼ばれる政府管理下にあるテレビについてよく話す。最近の世論調査によると、結局のところ、ロシア人は自らが無批判な「ゾンビ」にされることを許さないという。)

EUvsDiSiNFo掲載
The "zombie box"より

この論文ではテレビだけではなく、他のデジタルメディアもゾンビボックスになりうるとして批判・検討している。


幻想主義と現実主義によって作られる認識論的存在論的移行について

原題:Об эпистемологическо-онтологическом переходе, совершаемом иллюзионистами и реалистами
掲載:Philosophy Journal of the Higher School of Economics
著者: Максим Дмитриевич Горбачев
ジャンル:哲学

こちらもロシア語。英訳したものを下に置いておく。

原題:On the Epistemological-Ontological Transition Made by Illusionism and Realism
掲載:Philosophy Journal of the Higher School of Economics
著者: Maxim Gorbachev

「-philosophical」で排除。哲学的ゾンビを扱う論文。


心身の問題: 提案された解決策の概要

原題:The Mind-Body Problem: An Overview of Proposed Solutions
掲載:The Theory of Mind Under Scrutiny
著者:Javier Alejandro Galadí
ジャンル:哲学

「-philosophical」で排除。哲学的ゾンビを扱う論文。



まとめ

検索条件1は音楽学が一件だった。

ゾンビアイデアに哲学的ゾンビ。もう何度も出会っているゾンビたちであるから、特にコメントすることもない。ただ、哲学的ゾンビは別に詳しいわけではないが。そろそろ勉強して適当なまとめ記事を作らなければならないか。

また、ゾンビボックスもまだ二回目だが、掘り下げる意義があるとは思っていない。テレビからほかのデジタルメディアに定義が拡大するのは想定内である。

今回はねらいの論文がなかった。

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