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エッセイ:ジャンク臨床心理士のつぶやき

臨床心理士の実習で、精神病院に通った。
強制入院が法的に許される数少ない病院で、
地域でも最も重い患者が集まってくるところ。

「普通に」生活してたら、想像さえ及ばないような世界。
閉鎖病棟があり、独房のような部屋もある。

SEKAI NO OWARIのFukaseも
そういう所に入院してたそうですが…

なんか、今思えば見ちゃいけないものを
見てしまったような気はしますね。
人生観に影響を与えてしまってる…
そこまで落ちてもOKなんだ、っていうライン設定がバグってるんですよね。。

まあもともとですね、私の父親はひどいDVで、あれは強制入院レベルでしたね、今冷静に振り返ると。

「最も精神病院に来るべき人は、来ない」という現実があります。

病院にいる人は大抵、家族からの通報で強制入院しています。

精神科の診断基準もみっちり覚えてますので、現状の自分が、精神的な病の領域にいることは心得ております。悲しいかな、遺伝子…でしょうね。生育歴だけでなく。

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ちょっと話はそれますが、臨床心理士の仕事って、カウンセリング以外にもいろいろな仕事がありまして、
司法領域では、「心理技官」というのがあります(私も試験は受けました)。
ニュースなんかに出てくる責任能力なし、とか判断する資料を作ります(最終判断は精神科医)。離婚調停同席や、少年犯罪の聞き取り、囚人の矯正などもあります。
授業で、拘置所の見学とかも行きました。

なんというか、インドに行くと人生観変わるとかいうじゃないですか。それと似たような感覚で、ほんとに心理臨床は、「人」を旅する時間だったなと思います。

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1番印象的だったのは、閉鎖病棟です。

いろんな患者さんとお話させてもらいました。

中でも特に鮮烈な印象を残している人は、
院内で何度も自殺未遂を繰り返している男性です。
目が合ったとき、背筋が凍りましたね。

病院内で自殺し、その度に生き返らせられる。そんな繰り返しを行なっている。

さすがにこのことだけは、「おかしい」と思いました。命を弄んでいる。本人も、病院も…。

でも、医療倫理は「延命」なのです。

自殺しても、日本では必ず助けられてしまう。

当時の私は、これはとても怖いことだ、と思いました。

でもよく考えたら、だいぶ昔からそうですよね。。太宰治も自殺未遂何回も繰り返してるし。

私は、死にたい気持ちとはもう仲良しです。
死ぬ場所を、ちょっと遠い所に、もう定めてあるからです。
死にたくなったら、あそこへ行こう、と思うのですが、
行くのがきつくて諦めたり、めんどくさくなってやめたりしています。

最近体調を崩して以降の、死ぬ恐怖とも、
その場所をお守りにして戦っています。

もし作家になれたら、その場所で、安楽死を遂げるのが夢です。

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もう1人、深く印象に残っている方がいます。
軽度の知的障害があり、軽犯罪を犯してしまう男性です。

50歳くらいに見えました。
おそらく薬の影響もありぼんやりしていらっしゃいましたが、ぽつりぽつりと、生活の様子などを話してくださいました。

生活保護で、グループホームに入所していて、
毎日パンとコーラを買いにお店に行って、
帰ってくる。
家には何もないのだと。

私は衝撃を受けました。
パンとコーラだけで生きてる。

文字にしてしまうとおかしいかもしれない。
でも私には紛れもなく目の前に堂々と立つ、
体温のある、実存なのです。

私の中には、今でもあの時の衝撃が残っています。

私は専業主婦で、双極性障害で、
夫に捨てられれば、
そういう未来が待っている。
でも私はそんな人生を、どこか楽しみに
夢見ているのです。

だけど、それを許してくれない、
2人の可愛いお姫様が、
私をかろうじて現実に、引き留めています。


追伸

私もこの国の「セーフティーネット」を支える側になりたいと日々悶々と思っていますが、なかなか出来ません。
みなさん、いつも本当にありがとうございます。

最下層より敬愛を込めて 古瀬詩織


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