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患者さんと同じ目線で

在宅患者さん宅にお邪魔する際、いつも心がけている事がある。それは、少しでも患者さんやご家族が安心して頂けるよう寄り添う事。患者さん宅にお伺いすると色々なお話をする。現在、2週間に1回のペースでお伺いしている佐藤太郎さん(仮名)。今年の4月まで普通に歩けていたものの、急に足に力が入らなくなって下半身不随になった。ご夫婦には子供はおらず、飼っていたワンちゃんを娘のように育てていたが、ガンでなくなったそうだ。奥様は「太郎さんの看病に専念しろってワンちゃんからのメッセージとして捉えている」とおっしゃっていた。ご主人の早期退職を期に老後の生活を楽しもうと話されていた矢先の出来事で、病院を何とか退院し、在宅医療に切り替え、当初は奥様もとても動揺されていた。往診クリニックからのご依頼は、薬の一包化セット(用法毎にパック)。初回は夜遅くにお伺いとなった。病院からご自宅へ戻り緊張感から解放され、ご夫婦ともに少し疲れた様子があった。にも関わらずセットしたお薬カレンダーを見て、奥様は凄く感謝して下さった。「分かり易くて凄く助かります!」

ご家庭の状況を考えて、余分なお薬はなるべく削る。医療もサービスである為、その金銭的負担によってご家族が不安に感じない事も重要。そして介護する側も第二の患者。介護する事にストレスを感じていないか?疲れていないか、夜寝れてるか?患者さんと同様気を配る。最近では奥様も笑顔も見られ介護が順調そうに感じる。奥様も「太郎さん、太郎さん」とご主人を頼っている様子も見ていて微笑ましい。お二人は凄く仲が良く、太郎さんも奥様に感謝の気持ちを口に出して表現している。奥様はご主人が余りにも感謝の念を表現する為、奥様もちょっとした事でもご主人に感謝を伝えるようになったとの事。少し照れながらお話する奥様もこのコロナ禍、悩んで悩んだ結果、在宅に切り替えて今、一緒に過ごせて本当に良かったとおっつしゃっている。この仕事をしていて、この上ない嬉しい言葉だ。奥様は私にどういう気持ちで介護しているのかも教えて下さった。

「決して介護してあげてると上から目線ではなく、太郎さんと同じ目線で介護をさせて貰ってる。若い時は修羅場もあったけど、今はお互い丸くなって、口には出せなかった言葉も沢山伝えてる。もしかしたら今が一番夫婦として仲が良い時期かも。私は一番幸せです。」それを聞いて、ご主人の太郎さんもうなずきながら嬉しそうに微笑んでいる。何というご夫婦愛!素晴らしいシーンに立ち会えた事で思わず感動してしまった。私も上からではなく、患者さん、ご家族と同じ目線で寄り添っていこう。お二人からは色々な事を教えて頂いている。少しでも長く2人が幸せな時間を過ごせるよう、出来ること探していきたい。

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