見出し画像

恐れによって組織を動かさないということと、自由からくる恐れ

「恐れ」がなくなったら、人はこれほどいきいきと働けるんだ。

先日、それを目の当たりにしたことがあった。ある友人ふたりからそれぞれに話を聞いて、彼らの笑顔を眼の前にして実感した。ふたりは前職でそれぞれ別の恐れを持っていた。

ひとりの友人の「恐れ」は、社内の特定の人からの評価だった。「あの人に嫌われたくなくて。あの人に嫌われたら、ここではヤバイってずっと思ってたなあ。査定する人でもあったし」と笑った。そして、「パワハラにもセクハラにも相当しないけれど、たまに出てくる決めつけ表現がきつかった。物申したかったけど、自分の評価を下す相手だしなと。今から思えば、物申しちゃってよかったわ」と話す。彼は、仲間と3人でお店をはじめた。「誰かの評価どころじゃなくてお客さんの評価がぜんぶ」と朗らかに笑う。

もうひとり友人の「恐れ」は、成果主義と他者からの評価だった。「成果がすべてだ、っていうムードがあったのね。で、自分は同期よりもてんで仕事できないってわかってて。あの人よりだめだ、この人よりだめだ、役に立ててないな、だからここではもうだめだ…ってなっちゃう。自分で自分を追い詰めちゃって」と。半年の休職ののちに退職し、週4日のハウスキーパーをはじめて8ヶ月経った彼女は、「掃除とかしてると無心になれるからね、結構好きだよ。きれいになった!整った〜!って、目に見えてわかる」と笑った。

「恐れ」によって組織や人を動かすことの限界は、この10年叫ばれ続けてきた。(最近やっと心を崩してしまったり、居場所を失ってしまった人に対して「あいつは病んじゃったから」みたいな、えんがちょ扱いをする人が少なくなったと感じる。)

「恐れ」は、他者からの評価(裁き・決めつけ)と密接に紐付いている。他者からの評価じゃなくて、自分で自分の成果を定義して、顧客に値する人からの評価を受けて、自分で振り返りをする。誰かに自分がどう見られているか、ではなくて、自分が定義した成果やビジョンに向かって「恐れ」を絡ませずに前に進んでいくことができる。ティール組織の3つの特徴のうちの一つである「自主経営(セルフマネジメント)」は恐れを発生させないためにもとても重要な要素だなと思った。

自由からくる恐れ

でも、ここ1年くらい、個人的にちょっとショックだったことがある。セルフマネジメントによる自由と責任を引き受けることを、「恐れ」と感じる人が少なくないということだ。

アメリカの企業・ザッポスはトップダウン型でもなく、ボトムアップでもない組織形態だ。様々な課題や役割に関して組織のなかに「サークル」が生み出され、それぞれの従業員の「セルフマネジメント(自主経営)」によって成り立っている。そのザッポスのCEO、トニー・シェイは2016年のインタビューでこんなふうに語っていた。

This new environment isn't right for everyone, because some employees just want to know what steps one to 10 are and be told by a manager that they've done a good job when they finish. In this new self-managed world, employees sign up for a role or a circle, and each of those has a purpose associated with it that employees have to figure out how to make come alive. And so it gives them a lot of freedom, but I understand at the same time that amount of freedom can be super scary for some people.

この新しい(働く)環境は、誰にとってもいいものではない。なぜなら、従業員のなかにはマネジャーから1から10まで指示を受けて、与えられた仕事を完了したことに対して良い評価を受けたいと思う人もいるからだ。この新しい「セルフマネジメント」のあり方においては、従業員は自分で役割を決め、サークル活動を決め、それぞれの役割や活動の目的を実現する方法を自ら見つけ出していかなければならない。それによって大きな自由がもたらされるが、同時に、一部の従業員にとっては、自由が大きな「恐れ」を持たらしてしまうのです。

Business Insider
Zappos CEO Tony Hsieh reveals what it was like losing 18% of his employees in a radical management experiment — and why it was worth it
※和訳は入谷が適当にやってます…。ちょっと違ってたらごめんなさい

1から10まで決められて動いてきた経験が多い場合、自由すら恐れになってしまうのかもしれない。枠を自分じゃない誰かに決めてもらったり、自分が目指す成果を自分じゃない誰かに決めてもらうのは、とてもストレスだと私は感じる。

でも「枠からあなたが決めるんだよ」と言われて身動きがとれなくなってしまう人はいて、その人にとってはそんな環境はストレスフルだし、「こうしまーす!以上!」と決めてくれるリーダーの下にいたほうが安心なんだろう。でも、そんな組織が充満した社会って、何も考えずに流されて進んでいかないか。そういうことによって、戦争とかが起きたんじゃないんだっけ…。考えるだけで悲しくなってきた…。

もちろん、完全なる自由なんてない。セルフマネジメントを基軸にした組織だって、法や制度の下に存在しているし、大きな市場変化や天災にあうし、個人は病気にも事故にもあうだろう。変えられないものは必ずある。だけど、変えられないものを受け入れるのもまたリーダーシップだし、変えられるものを見分けて動き出すのもまたリーダーシップだと思う。固定化されたひとりのリーダーがいるんじゃなく、だれしもがリーダーでありフォロワーでありながら双方向に生きるほうが、全体としての創造性も生産性も高いと思うし、幸せに生きられると思う。その「恐れ」は、排除すべき恐れじゃなくて、受け入れる恐れなんじゃないかなってわたしは思う。(いや、でもそれで生きづらい人がまた出てくる場合はどうしたらいいのだ…。(´;ω;`)最近の悩みです。)

「あなたもまたリーダーだよ」という言葉が書かれた本をぺたりと貼って終わりにします。



サポートも嬉しいのですが、孤立しやすい若者(13-25歳)にむけて、セーフティネットと機会を届けている認定NPO法人D×P(ディーピー)に寄付していただけたら嬉しいです!寄付はこちらから↓ https://www.dreampossibility.com/supporter/