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@アンジェリーナ:「モンブランは売り切れです」からの19歳の私と再会

レモンシャーベット


秋。食欲の秋、秋の味覚と言えばモンブラン。
そうだ、アンジェリーナのモンブランが食べたい。


アンジェリーナのモンブランに出逢ったのは
19歳の時だった。

初めての海外

ボルドー近郊の村での
学生ボランティア

参加条件:
バックパックを自分で背負ってくること。


なーんだ、それだけ?
私バッチリじゃん。

若さ故か
怖いものなし。

空港へ見送りに来てくれた両親が、
私を見て口をあんぐり。


「そんな恰好で、、、山に行くんじゃないんだよ。
パリだよ。華の都だよ。あああ、、

「私そういうの気にしないから、大丈夫」



心配そうな二人の顔を見ても、
笑って終わり。
私は自信にあふれていた。

よし、地球の歩き方を握りしめて、出発だ。


成田空港
人生初の飛行機
さあ、行ってきます!と、

心のエンジン全開な中で
目に入ってきたのは、

私が乗る便の
「台風による遅延」のお知らせ。


香港で乗り継ぐチケットだったのですが、
カウンターの人が、神妙な顔つきで
「このままでは、香港からの乗り継ぎに間に合いません。確認に時間がかかります。お待ちください」と。



待合椅子にいる両親に伝えると、
自分にできる事は、今の時点では何もないよね。
もうお願いしたんだから、あの方たちに任せて。」
と言いました。


そうだよね、仕方ない。

仕方ないけど、

「台風の中で出かけていこうとしている自分は運がないのかな

と、口からポロっとでてしまいました。


すると、日頃から無口な父が、急に口を開けました。

まったくの逆だね。香港に着いてから、飛行機に乗り遅れましたって、電話連絡をうけるよりも、ずっと気が楽だ。カウンターの方とも日本語が通じるし、親切にしてもらって、君はなんてラッキーなんだ。

と、父が言いました。

腹が減っては戦はできぬ、何か食べよう、元気出そう」と、母が言いました。


何を食べたのかは、覚えていません。
うどん、お蕎麦か。
何か温かい物を食べました。

でも、食後のお茶を頂いている時に
急に実家が恋しくなって

「このまま二人と一緒に家に帰ろうかな。

と、私の弱音が出ました。




すると、

「フランスに行きたくて、アルバイト頑張ったんじゃないの?」

そうだ。

「さっちゃんはね、忘れたかもしれないけど、
12歳の時に、英語でものを考える人になりたいって言ったんだよ。」
と母が言いました。

そうだった。


中1最初の英語の授業で、先生が”We are the world”を見せてくれた。

スーパースター達が画面にあふれる。

各人が煌びやかで個性的であり、そして、一つの歌を心を合わせて歌っている姿に感動した。

英語ができたら、
誰とでも心を通わせることができる。

英語で考えたら
世界中の人と仲良くできる。

そう思いました。


小1で「赤毛のアン」を読んでから
私は、ずっと外国に憧れてきた。

今こそ夢を叶える時だ。


気を取り戻しカウンターの近くに行く。
私の便は、「遅延」のまま時間が過ぎていく。
担当の方は、まだ待っててって顔をしている。



段々と他の航空会社のカウンターが
消灯されていく。

結局、私は最終便のエールフランスに乗せてもらえる事になった。


直行便だ。


両親は、ホッとした様子で、
終電前に帰らないといけないから、
先に帰るね、と。


エスカレーターで降りていく二人を見て、
涙が出た。

あんなに行きたかった外国に行くって、
こんなにも、切ない気持ちになるのか。



もう、その先の記憶はない。



なんとか、思い出すのは、パリに着いてから。
まだ薄暗い早朝の空港
掃除をする人たちが働く景色と
掃除機からオレンジの香り


調べていた電車の時刻よりも、ずっと早くに着いた。
電車もまだ動いてなさそう。


そうだ、
家に電話をかけよう、と
公衆電話に向かう。

でも、電話の使い方が分からない


泣いていたのかもしれない。


日本の方が、どうしたの?電話できないの?って
話しかけてくれた。

実家に電話したいけれど
方法が分からなくて、困っていると。


なんと、
ご自身のテレフォンカードを差し出してくださった。


お母さん、パリに着いたよ。うん、元気です。じゃあね」


母の声を聴いたら、
急に涙がひけて、
気持ちがしっかりした。


空港で助けてくれた方のお影だった。
本当に救われた。

「話できた?大丈夫?」

はい。

「元気出た?」

はい、ありがとうございました。あの、大きいお札しか両替してなくて、ごめんなさい、日本円でもいいですか?

「いいの、お金はいいのよ。それより、これからどうするの?」

今日はパリに泊まって、明日からボランティアでボルドーに行きます。


「そっか。明るくなってからの方がいいんじゃない?
気をつけて。よし、じゃあもう泣かない。」

はい。。。

「気を付けてね。」

はい、ありがとうございました。




あの時に空港でテレフォンカードを差し出してくださった方は、確かお母様と旅行をしていて、赤い洋服を着ていた。


この場を借りて、、本当に、ありがとうございました。



パリでは

地球の歩き方を握りしめて
モンブランの老舗
アンジェリーナ
に辿り着いた。


ジーンズ、ヨレヨレなティーシャツ、バックパック。

あっ しまった。

店内のお客さん達がすごくオシャレに見えた。

両親が心配していた事は、こういう事か。
視線を肌に感じる。
肩身が狭い。


仕方ない。
入口の近くの小さな椅子に座らせてもらった。

「メニュー要らないよね?
モンブランでしょう?」

って、ウェイターの人。

黙って頷いて、
ケーキと、お水が
ドンッとテーブルに運ばれてきた。

甘くて苦い思い出。




さて、時は2022年
ドバイモール。


世界で一番大きなショッピングモールだ。
何度行っても迷子になるから
携帯電話で地図を見ながら歩いている。

エリアはファッション アヴェニュー。

近くのアパートメントに泊まっていたので
ファッション アベニュー入口まで徒歩で行く。

ドバイは車社会。
モールへ歩いていくのも初めて。
歩道があって助かった。

秋といえども
暑い。

売店で水分補給しながら
歩く。



15分後

よーし、入り口を見つけた。
よーし、アンジェリーナ見つけた。


店内の鏡の前の席に案内され
笑顔でメニューももらった。


私も満遍の笑みで丁寧に
「モンブランをください」と伝える。

完璧だ。

と思った矢先に、ウェイターが言う。
「そちらは品切れです」

えっ?
「残念ながらモンブランは2週間ほど品切れです」


なんてことだ。


アンジェリーナといえばモンブラン
モンブランの為に、ここまで歩いたのに。



気を取り直し
ケーキを見せてもらう。


ウィンドウにあった
ぷっくらとしたマカロン




アイスクリームを注文した。


遥々辿り着いた
レモンシャーベット

濃厚なレモン風味が
さわやかな逸品だった。

うん、美味しい。

ケーキを食べていたら
出逢えなかったシャーベット。


こんな偶然もあるんだなぁ。
そう思いながら
食べたシャーベット。

19歳の私と
21年後の私と。

アンジェリーナで待ち合わせだ。



最後まで読んでくださって
ありがとうございました。

良い1日を💐