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「美術の物語」(エルンスト・H・ゴンブリッジ著)を読んで

西洋美術の大まかな流れを学ぶなら、必読の1冊!と複数のところで目にしたので、値は張りましたが購入しました。
私の学習の初めの一歩です。

真っ白の地に黒と金のシンプルな装丁、ずっしりとした厚みと重さ、美しいフルカラーの数多の図版、そしてたくさんの文字、文字…
う〜本好きにはたまらん!もう持ってるだけでも嬉しい!
本棚の1番いいとこに置いちゃう!

文章も非常に読みやすく、量の割にはすらすら読めます。さすがに「美術に知識のない、若い読者を想定して書いた」だけのことはある。そして前書きにあったとおり、文章を読みながらそれに対応する図版が見られるよう、ページを跨ぐことができるだけないようレイアウトされています。これがノンストレス!ほんと読みやすい!
画面の小さい電子書籍ではできないことですね。
1950年に初版が発行されてから今に至るまで、この本が改良を重ねながら読まれ続けてきたのが分かります。

とはいえ、小説のようにすらすら読んで終わりという種類のものではありません。頭に残らないし、量が多すぎて自分に必要なことが埋没してしまいます。
学生時代、教科書にしてたみたいに、大事な部分に線を引きながら読むのはあり。後から見返して、抜粋したりするときにやっぱり便利(この本に関しては、汚したくないからやってませんが)。
それを後でまとめたり、何回も読み返したりして、自分のものにしていく経過が楽しい。
学ぶって楽しい。
頭の中に、さまざまなことが染み込んでいくのが気持ちいい。

作者は幅広い美術について、とても公平な見方をしています。
しかし彼が西洋社会の中で生きてきたことはどうしようもなく、この本はもちろん西洋の世界から見たことが書かれています。
西洋文化の外で生きてきた自分は、その差異や違和感も感じつつ、むしろその差異や違和感を確かめながら、読むことに意義があると思います。
この圧倒的な西洋の美術に、憧れ、呑まれ、そして結局完全に取り込まれることなく、戸惑い続けている極東の島国人として。
繰り返し描かれるよく知らない聖書や神話のシーン。筋肉や肌をこれでもかと見せられる彫刻。傷ついて悶え苦しむ表情や、あからさまな肉欲の描写。それが生まれた経過や、それが求められた背景を知ること。そして自分たちの立ち位置を理解すること。
それがなにより大切だと思います。

何回か改訂されてきた本書も、2001年に著者が亡くなっていることもあって、現代美術については十分に触れられていません。
今でも著者が生きていたら、近年の作家の誰を選んだかな。何と書いたかな。
もう想像するしかありませんが、そのような目線で考えることで、美術史の流れの中でどのような存在であるかを、考えてみることができるかもしれません。

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