小説の校正をさせてもらった話

原稿、読ませていただきました
年末に「あなたの原稿、読ませてください!私、校正がしたいんです!」というnoteを書きました。書きましたが、まさか本当にお声掛けいただけるとは思っておらず、「note見ました」という件名のメールが届いたときには正直びっくりしました。自分で言い出したのに。

約7万字の小説『耳元の鈴を鳴らさない!』を読ませていただきました。ジャンルを分類するとすればライトノベルというものになるのでしょうか。とある事情で親元を離れて大分で暮らす男子高校生が、かくかくしかじか、後輩(美少女)が監督を務める映画の主人公を演じることになるというお話です。

もちろんただ映画を撮りますというだけではなく、物語の主人公と作中映画の主人公にはとある共通点があり、それがトラウマになっている主人公が葛藤したり、映画を撮る仲間たちと心がすれ違ってしまったり、撮影を通して主人公自身も映画の魅力を知っていったり、自分のことを見つめなおしたり……。

私も「映画」の魅力について改めて思いをはせてしまったし、主人公が「映画に魅了される」シーンの描写にはぐっと惹きこまれました。彼らより10歳以上年上の私には、些細なことで揺れ動く、でも自分の強さも弱さもつめこんで純粋に夢に瞳を輝かせる彼らの青春がまぶしい。

「わからない」って、わくわくする
というわけで作品として単純に楽しく読んでしまったのですが、半年ぶりに「原稿チェック」をして、原稿を読んで赤字を入れるという「作業」は、こんなにも楽しいものだったかと、思い出し、改めて感動し、私は喜びに震えた……。本当に楽しかったです。

楽しかったといっても、自分で調べて赤字を入れながら「でも別に間違いじゃないし…」「私の感覚が違うだけかも…」「疑問だしはするけど対案を提案できない…」と不安もいっぱいでした。

文法とか言葉の使い方はもちろん、出てくるいろんな話題についての知識のなさを痛感するばかり。作品づくりにも、ただ文章を書くにも、校正をするにも、まずとにかくたくさん、いろんな媒体の文章を読んで、言葉がどんな使われ方をしているのかのストックを蓄えて、っていう勉強が必要だってことを改めて思い知らされました。

そもそも自分のなかにある程度のストックがなければ「間違いである可能性」について思い至らない。違和感を抱けない。何か違うと思っても、なぜ違うのか、何が正しいのかがわからない。

今回は、これはどうなんだろう、こうしたらどうだろう、でも違うかも、こうしたほうがいいのかも、と不安でいっぱいで、その、不安でいっぱいであることの、快感がすごいの。わからない恐怖自体がまず楽しくて、どうしようどうしようって焦るのも楽しくて、逃れるために頭を動かす、っていう一連の流れに満足感がありすぎて破裂するかと思った。

自分の働きに対して納得はできていないのですが、わからないことを調べてみて、代案を考えて、自分の知識にできたこと、まだまだいろんなことを知らなきゃ、勉強しなきゃって思ったこと、の、充実感がとてつもなくて。一言でいって、最高に楽しかった。

「はじめまして」からつくる信頼関係
出版社の場合、社内に校正部門があれば別ですが、校正の作業って遠隔でやることが多いし、校正者は原稿に書き込む赤字でしか、発注者からの信頼を勝ち取る手段を持たないんですよね。

私は編集者時代(っていうとすごいかっこいい感じするね)、発注者として外部の校正会社に原稿を見てもらっていました。その経験から、同じ校正会社でも校正者さんの腕はかなりピンキリだってことを知っている。「すべての文字を疑え」という勢いで入れてくれる人もいれば、原稿に書いてあることは正しいはずだけど万が一のために一応目を通しました、程度の人もいる。どれだけの熱意と技術で原稿を読んだか、赤字を見れば一目瞭然で。

発注者の立場からすると、自分で気づいていないミスを拾ってほしいわけだから、遠慮せずガンガン来てほしい。100%わかってると思いますけど一応指摘しますよ、というレベルでの確認も、きちんと入れてほしい。発注者を疑うことが、校正者の仕事だから。

…と、いう思いで、今回も、これは作者の方に失礼だ、と自覚しながら赤字を入れました。文章表現だけでなく、ストーリー展開に関わる赤字も入れました。それは私が、校正の仕事をきちんとしたいと思ったからで、編集者時代に「私のことを疑ってくれる校正さんに見てもらえてよかった」と思った経験があったからで、『耳元の鈴を鳴らさない!』を読んで、作者の作品に対する熱意と誠意を痛いほど感じたからでもあります。

「はじめまして」の関係で、原稿のやりとりをするだけで、それ以外のことは何も知らないんだけど、校正者が赤字に自分のすべてを込めるように、小説を書く人も、原稿にすべてを込めているんだな、って今回教えてもらいました。

この作品をより素晴らしいものにするために、プロじゃないけど、専門家じゃないけど、自信もないけど、できることは全部出したい、そう思えたこと、そんな作品、作者(発注者)さんに出会えたことが、何より嬉しかった。


作者の佐久良さんとは原稿の今後の修正についてもメールでやりとりさせていただきましたが、私のおこがましい赤字もフラットに受け止めてくださいました。「原稿」を通じて、ものづくりをする人たちが交流して、あーでもないこーでもないって言いながら、一つの「作品」をつくりあげていく――その過程の一部に久しぶりに携わらせていただいて、感謝の気持ちでいっぱいです。そしてこの作品の完成も待ち遠しい。

というわけで、引き続き、みなさんの原稿、読ませていただけませんか。

◆対象の著作物
note
WEB掲載予定の小説・漫画
同人誌として刊行予定の小説・漫画、フリーペーパー など

◆チェックする内容
誤字・脱字チェック
日本語として誤った表現のチェック
用字用語の表記統一
内容の一般的な事実確認
てにをはや文章修正のアドバイス
目次やページ番号など体裁のチェック など

◆所要日数(目安)
~5000文字程度:中2日
~5万字程度:中4日
5万字以上~:要相談

◆原稿のやりとりの仕方
note:投稿前に「共有用リンク」にてご共有ください
その他:word、pdf等をメールにてお送りください
基本的には、出力紙に手書きで赤入れをしpdfでお戻しします
wordのコメント機能等でのお戻しも可能です

◆ご了承いただきたいこと
※試行錯誤段階なので無償でお引き受け致します。もしご満足いただけたら、このnoteの「サポートする」からお気持ち分だけ投げ銭していただけましたら嬉しいです。
※R18、BL作品も大丈夫です。ただ、幼児が登場するR18作品など、内容や題材によりお断りさせていただく場合もございます。
※お送りいただいた著作物の内容やメールアドレス等については、校正・校閲とそのためのやりとり以外の目的では一切利用致しません。
※専門家ではありませんので、何卒ご了承ください。

◆お問合せ先
snow★rop.211@gmail.com
※「★」を小文字のdに変えてください
※メールの件名には「note見ました」と入れてください

★あとがき★
今更気づいたのですが、私が「あなたの原稿、読ませてください!」で使わせていただいたお写真、そもそも『耳元の鈴を鳴らさない!』のお写真だったんです。びっくり。運命。そして私、にぶい!

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