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星は太陽の子(漢字解読-3)

 辞書では「星」に関し従来次の誤った次の解釈が採用されています。『「星」は形声文字、”日(晶)[意符]”+”生[音符]”からなり、”日”は純精な光、”生”は音で澄み切った意味、結果「澄んだ光の星」を現わす。』
 形声文字の音符とはその部首の構成から引き出された意味ではありません。この複合字の解説で「生」は[音符]とし「生」の意味ではなく架空の意味を持たせていますし、更には[意符]である「日」も本来の意味「太陽」とはなっておらず「晶」の意味「光」と解釈されています。

 漢字の部首とは何かを複合字の表記を造る思考実験で検討します。
まず初めに、日本語の単語が一行一字の表記と仮定します。発音に基づく「語〔hi〕」の意味を表記する和字「ひ」と漢字「日」の二つがあり、同じく「語〔umu〕」の意味を表記する和字「うむ」と漢字「生」の二つが各々既にあったとします。以上の前提で新しく「語〔hoshi〕」の表記を造りたいとします。

新しい「語〔hoshi〕」の表記

 どれも「語〔hoshi〕」と発音される新しく得られた3種の字です。その表記を図に従い左より、仮名文字による「表音表記」、行方向に一字構成とした「連結型複合表記」、縦方向に一字構成とした「縦型複合表記」と各々呼ぶことにします。
   
 漢字に於いては連結型複合表記とは偏と旁による複合字を意味し、縦型複合表記は漢字の冠と脚型の複合字を意味します。両者を構成する二字は「熟字」と考えることができ、構成の異なるだけの両者からは、「複合字とは新しい語を構成する各意味要素の表記の合成」となります。理解しやすい漢字の複合の場合で考えると、「星」の字の中の「日」は「語〔hi〕」と読もうと、「語〔nichi〕」と読もうと関係なく「語〔taiyou〕」の意味を持つ表記であり、「生」は何という語で読もうと「語〔umareru〕」という意味を持つ表記です。別の例で示すと、日本語の当て字で例えば「語〔samidare)〕」を「五月雨」と表記するのは「五月」と「雨」の二語構成の連結型複合表記で、複合された全体の語(の発音)と要素となる二語(の各発音)は無関係であることに注意してください。
     参考までに表音文字による複合語は次の表記となります。
「星[語〔hoshi〕]」⇔日[語〔hi〕]+生[語〔umu〕]
                                      =太陽+生む=太陽が生む:=太陽の子

 複合字とは意味を表記する部首で構成されていることが分かり、複合字の成り立とは各部首の意味を解説する必要があります。形声文字の音符とされる部首とはかつて意味を持つ語として存在した時の文字表記です。しかし現代では音符は最早独立した語としての利用がなくなり、その意味は勿論ものによってはその発音さえも忘れ去られた、かつて語であった時の字形のみを留めた残骸です。字形と語の発音を区別する考えは中国にはなく語〔発音〕と字形が常に一体であり、1950年代に考案されたピンインにより初めて同じ字形に対し異なる発音による読み分けや方言による読み分けが解説可能となったのです。
 一方、漢字は中国本土でもでも表記が同じで北京語や広東語のように異なった発音で使用されたり、同じ字が漢音、唐音、宋音、慣用音などと異なる発音を持ったり、更には漢文を日本語で読み下したりすることができます。これはアラビア数字と同じように漢字とは字形と意味のみで構成される記号であり発音とは無関係である証拠です。
 漢字は字形と意味と発音の三者を備えた文字と考えることは、文字とは字形と意味とからなる(同じく表音文字とは音と意味とからなる)記号であるとする記号論とも矛盾します。
 以上のことから漢字体系を構築する複合字は「表意文字」と言えます。そして複合字は各々が意味を持つ字の合成であるため各部首の意味が解読できればほぼ全ての形声文字を会意文字に再分類することができます。

 ***本「NOTE」の投稿は漢字の解読を社会に開示すると共に、筆者の最新版として保存しようと考えており、新たな解字や解釈の変更により修正や追加を随時継続して行いますのでご了承ください。[2024.01.12]***


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