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【小説】SNSの悪夢

人間食べていると喋らない、食べながら話す人も居るらしいが、大概が食べるに集中する。

隣で食べている2人は食べるに集中するタイプらしい、ランチが運ばれてから、一言も話していない。

休憩時間が有るから、食べるのを優先しなければならないのだろう。

自分は早食いが習慣になってしまっているから、ランチが運ばれた途端に食べ始めて、直ぐにほぼ食べ終わっていた。

昼食ランチは潤いと言うよりは栄養補給なのだ、考えるに栄養補給だけなら1500円も出す必要は無い、この2人がここに居るのは、机の周りに居たくないだけなんだろう。

「ご馳走様。」小さく声が出る、驚く事に言葉の癖は抜けない、頂きますは意識して言わないでいても、食べ終わった時に感謝するのは忘れない。

1人なんだからそんなのは如何でも良い、そう考えている頭に自分の行動様式が乗っかっていて、考えを覆い隠してしまうのだ。

「ごちそうさま。」隣の二人も言っている、これは自分とは違う意味だ、杉山某が若い奴に奢っているらしい。

「どういたしまして、夜は飲みに行けないから、ランチでコミュニケーションを取らないと、これも必要経費だよ。」杉山某が言った。

「ありがとうございました。必要経費って奥さんにそう言うんですか、小遣いの中からじゃ無くて、別にもらったりするんですか。」早口で聞いている。

「家の妻は経費と言うと、生活費から出してくれるんだ、出来た女だろ。」自慢げに答えている。

別にお前の手柄じゃ無いだろ、頭の中で突っ込みが入る、何故妻と自分が同一化できるんだろう。

「凄いですね、お子さんも居るんでしょ、大変なんじゃ無いですか?」もう少し休憩があるのか、言葉は止まる気配が無い。

「あいつも働いてるからな、俺ほどじゃ無いけどね。」こいつは自分が大好きなんだな。

「良いな~、俺もそんな奥さん欲しいです、これは必要経費だぞって言ったら、すって出してくれる。」羨ましそうに言っている。

放って置いたら捨てられるぞ、心が大声を出している。

「ゆっくり、じっくり選べばいいさ、急がず女を選ぶ目を身に付ければ、居るかもしれないぞ。」まるで自分が完璧とでも言いたげだ。

そんな顔してられなくなるぞ、こっちは生涯を共にしたいと思って居た女に逃げられたんだ、見ていろよ、心がザワツイテいる。

ランチを食べた2人に習って外に出た、さっき出たばかりなのに居ない、もう会社に戻ったのか、まさかな。

見渡してみると、ビルの路地に人が居る、目を凝らすと、あの二人が煙草を燻らしている。

喫煙場所も知らないのか、遠くからゆっくりと眺めていた。

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