はたやノート

せうせつを書いています。見ての通り、横浜F・マリノスを応援しています。関西人です。 新…

はたやノート

せうせつを書いています。見ての通り、横浜F・マリノスを応援しています。関西人です。 新人賞に落ちた作品のあらすじとステートメントなどを載せるつもりです。(11月予定) それまでは、文学や芸術について書きます。

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  • マイ・ベスト5

    私がいままで書いたノートのなかで「スキ」が押された上位5つのエントリーを集めました。

  • 創作系エッセイ

    私が創作の過程で思ったことを集めています。ほかのひとも参考にできるように書きました。

  • 批評/時評

  • 芸術と映画

    映画のような小説をつくりたい。芸術への理解を深めたい。そんな思いで書き綴る記録です。

最近の記事

名作を読んでこなかったことが、恥ずかしい

だいぶ前の話ですが、京都文学賞の1次選考通過作品の講評に目を通しました。今回はWebでの発表はありませんでしたが、書面での知らせがありました。事務局の京都新聞COMさんから、封書が届いたのです。 一日置いて、封書を開いて読みました。自分の小説に対して感想を述べられるのが初めてのことだったので、届いてすぐに読むには勇気が必要でした。読み始めは緊張しましたが、読み終えてすぐ、ため息をつきました。講評はこれからの自分の創作にあまり参考になるとは思えなかったのです。 それは決して

    • 2023年展覧会について振り返ります

      来年のことを言うと鬼が笑うといいますが、いまさら去年のことを振り返ると鬼はどうするのでしょうか? 鬼はこんなところをご覧にならないと思うので、2023年の展覧会を振り返ってみます。 私は2023年に58本の展覧会を観に行きました。そのうちのちょうど半分の29本が東京開催分で、関西での開催分は22本でした。現代美術(デザイン含む)の分野で、東京単独開催の優れた展覧会が多かったという印象です。 主なものを列挙します。 【ブロックバスター】  ・東京都現代美術館『クリスチャン・

      • 東京国立博物館『やまと絵―受け継がれる王朝の美―』 感想

        東京国立博物館の『やまと絵―受け継がれる王朝の美―』を観てきました。 これまで幾度も日本の古典美術の展覧会に行っていますが、やまと絵だけに焦点を当てた展覧会は初めてでした。信貴山縁起絵巻や源氏物語絵巻、鳥獣戯画など、それぞれの絵巻物に焦点を当てた展覧会はありました。けれども、それらを「やまと絵」とひとくくりにして一堂に会した展覧会はなかったように思います。 Wikipediaにあるように、やまと絵には複数の意味合いがあります。 私の場合は、土佐派が引き継いだ絵画のあり方

        • 大阪中之島美術館『テート美術館展』感想

          注:今回は、美術作品について説明はしませんのでご注意ください。 文化の日に大阪中之島美術館に行ってきました。どうやら関西でも展覧会に足を運ばれるひとが増えたみたいで、かなりの混雑でした。 長沢芦雪の展覧会も観ましたが、今回は『テート美術館展』について感想を言います。 国際巡回展とのことですが、なにをやりたいのかさっぱり分からない展覧会でした。「光」という抽象的な言葉でけむに巻いた感が否めません。 考えてみれば、光というテーマは馬鹿馬鹿しく思えます。美術は基本的に“網膜

        名作を読んでこなかったことが、恥ずかしい

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          東京都現代美術館 『あ、共感とかじゃなくて。』感想

          はじめに 東京都現代美術館に行って、『デイヴィッド・ホックニー展』と『あ、共感とかじゃなくて。』を観てきました。 デヴィッド・ホックニーの展覧会はすごくたくさんのひとが来ていました。かなりの混みようでした。そこまで有名な作家さんではなかったので、意外でしたね。まあ、デイヴィッド・ホックニーはカラフルな画風で有名な画家なので、取っ付きやすいところがあるのかもしれません。 ホックニーの作品にはある種の奥深さがあります。iPadで描かれた作品が展覧会の後半に出てくるのですが

          東京都現代美術館 『あ、共感とかじゃなくて。』感想

          小説現代長編新人賞の結果が出ました

          小説現代10月号が発売され、そちらに第18回小説現代長編新人賞の1次選考結果が発表されました。私は本賞に応募いたしましたが、1次選考にて落選が決定いたしました。 新人賞に応募した時点で自分の作品をどのように評価するかは編集部の方々に委ねていますので、結果に対しての異議申し立てをするつもりはありません。 しかしながら、この結果には納得がいっていません。ただ期待を大幅に下回る結果を前に失望しています。企画がつまらなかったからなのか、設計が甘かったからなのか、それとも品質が悪か

          小説現代長編新人賞の結果が出ました

          芥川賞受賞作 『ハンチバック』感想

          遅ればせながら、芥川賞受賞作『ハンチバック』を読了しました。 簡単な感想を言いますと、小説として見過ごしがたい欠点はあるものの、純文学の「現代社会の一部分を描く」というところにおいては傑出しているので、芥川賞を受賞してしかるべき作品であったとの印象を持ちました。 まず、最初にあらすじを書きます。小説を批評するためですので、最後まで書くことをご了承ください。また、説明のため、一部、小説の書く順番やストーリーの時系列を変えています。 まず、ストーリーの構造について書きます。

          芥川賞受賞作 『ハンチバック』感想

          京都文学賞 1次選考を通過しました

          だいぶ前ですが、7月26日、京都文学賞の1次選考の結果が発表されました。どうやら私の作品が1次選考を通過したようです。 7月の末日まで、小説現代長編新人賞向けに原稿の見直しに時間を割いていました。過去に応募した作品の結果を知ると、落ちたときの悔しさのせいで見直しに集中できないと思って、なるべく見ないようにしていました。 けれども、7月30日につい見てしまいました。京都文学賞の公式Xアカウントが通過作のリストを貼りつけていたのです。 目を通すだけのつもりだったですが、自分

          京都文学賞 1次選考を通過しました

          京都文学賞中高生部門最優秀賞受賞作 高野知宙 『ちとせ』 感想

          高野知宙 さんの『ちとせ』という小説を読んだので、感想を書きます。 タイトルにもありますように、京都文学賞の中高生部門で最優秀賞を受賞した作品です。 京都文学賞には一般部門と中高生部門と外国人部門があります。一般部門の最優秀賞は出版化されるのですが、高野さんが受賞した中高生部門の副賞には出版化はありませんでした。にもかかわらず、小説が書籍になったのですから、この小説がどれだけ期待を持って世に出されたかが分かると思います。 本作品に苦言を呈する内容がありますが、1,700円

          京都文学賞中高生部門最優秀賞受賞作 高野知宙 『ちとせ』 感想

          大阪中之島美術館 『デザインに恋したアート♡アートに嫉妬したデザイン』 感想

          大阪中之島美術館で(広義の)現代美術と工業製品、ポスターを並べた展覧会に行きました。 本展は現代に対する認識をとらえ直す展覧会として見れば、とても意義のある展覧会だったと思います。 一般的に、現代は“第2次世界大戦の終結”に始まったと考えられています。日本の歴史を時代ごとに区分すると、古代、中世、近世、近代、現代という並びになりますから、大きな戦争が終わった時代を区切りにするのは妥当のように思われます。 しかし、こんにちを生きる人間にとって、歴史上の時代区分をそのまま現

          大阪中之島美術館 『デザインに恋したアート♡アートに嫉妬したデザイン』 感想

          京都文学賞に応募しました

          5月12日に締め切られました、第4回京都文学賞への投稿をしました。前回とは違って、トラブルなく送れました。関係者の皆様に厚く御礼申し上げます。 原稿用紙換算で200枚でストーリーを企画していましたが、330枚程度になってしまいました。中盤から終盤かけて話が細かくなってしまったので、枚数がふくらんだ格好です。ただ、ミッドポイント(作品の中間地点)の場所が話の転換点になっているので、バランスとしてはこれでよかったのかな、とも思います。 結果はあまり期待していません。今作も前作

          京都文学賞に応募しました

          3月度東京遠征 短評

          3月に東京に行ってきました。いつものように長々と書くとよろしくないので、短評を書くことにします。 ①クリスチャン・ディオール、夢のクチュリエ @東京都現代美術館 フランスのファッション・メゾン、クリスチャン・ディオールの展覧会。 展示作品のほとんどがオートクチュールの服飾品です。プレタポルテの出品はありません。オートクチュール(高級仕立服)とプレタポルテ(既製服)の違いは以下をご参照ください。 本展は前売券の取れなさで有名です。なので、酸っぱいブドウのように「こんなの

          3月度東京遠征 短評

          現代なき「現代性」 それはつまり、ディストピア ~泉太郎展感想~

          泉太郎の作品は理解しがたいものが多く、国立国際美術館や東京都現代美術館の展示を観るたびに戸惑ったものです。 けれども、それらの展覧会とくらべて、本展はいささか理解しやすい展覧会であったと思います。 本展は、ただ単に美術を観る展覧会ではありません。係員が指定した服を着ることで観られる立場になりますし、鑑賞者に特殊な体験を強いることもあります。本展で美術を体験する手順は以下の通りです。 文字では分からないかもしれないので、美術手帖の記事のリンクを張ります。 ①入場した鑑賞者

          現代なき「現代性」 それはつまり、ディストピア ~泉太郎展感想~

          「分かった」という前に、見ろ ~泉太郎展感想の前に~

          東京オペラシティ『Sit, Down. Sit Down Please, Sphinx.:泉太郎』に行きました。 本展、はっきり言って観に行かなくていい展覧会です。言葉にならない感想を抱えるぐらいなら、「知らんでもええわ」と言い切ったほうが誠実です。 「美術鑑賞が好き」と自称するひとに問いたい。あなたたちはなぜ、明らかに野球でいうと「ボール球だと分かる球」であっても、喜んでバットを振ってしまうんですか? 何も見えていないのに、わけのわからない感想を垂れ流して絶賛する。ス

          「分かった」という前に、見ろ ~泉太郎展感想の前に~

          2023年1月 美術鑑賞東京遠征 ③ 東京都現代美術館

          1.ビデオ・アートは映像メディアを使った純文学である 東京都現代美術館の……じゃないほうの展覧会に行ってきました。 ウェンデリン・ファン・オルデンボルフの展覧会です。オランダのビデオ・アート作家の展覧会です。というか、なかなか書けないうちに、会期が終わってしまいました。 本展を一言で表現すれば「2010年代以降のビデオ・アートおよび現代美術の典型例を見せた展覧会」といったところでしょう。とても素晴らしい展覧会ですし、この作品を分かろうとしないのなら「今後のビデオ・アート

          2023年1月 美術鑑賞東京遠征 ③ 東京都現代美術館

          某エンタメ賞に一次落ちしたことで考えた~小説の品質と開発力について~

          2月20日の正午に松本清張賞の中間発表がありまして、私は見事、1次選考で落ちてしまいました。 手ごたえのあった作品でした。けれども677篇のうちの30篇にすら残れなかったのですから、自分の実力を過信した結果といわざるをえません。 とはいえ、単純に実力不足と考えるのはよくないと考えています。実力はあるはずだ! と開き直るつもりはありません。自分のなかのなにが足りなかったのかを見つめ直す必要があるのです。 そこで、私は応募作を読み返してみました。すぐに分かった私の欠点は、小

          某エンタメ賞に一次落ちしたことで考えた~小説の品質と開発力について~