楂古聿

体の67㌫がチョコならいいのに。 お話、エッセイ、写真、その他もろもろ。 スキ、フォロ…

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体の67㌫がチョコならいいのに。 お話、エッセイ、写真、その他もろもろ。 スキ、フォローよろこびます

最近の記事

エッセイᝰ✍︎来世の話をしよう

来世の話をしよう。 こんなとりとめのないことを、友人と酒を飲みながら語らう日が誰にだってあると思う。 私はいつも決まって「来世は水素になって、この世界の誰の害にもならず、時には益となりながら循環していたい。」と言う。 これは10代の頃から、自分の中で固まっている意思であり生涯揺らぐことのない、人生で最も意味を持たない目標だと思っていた。 元来、人よりも少し自己肯定感が低く、人よりも少し承認欲求が強かった。自分が何もできない人間だと知っているのに、できる部分で人に認めら

    • チョコエッセイ🍫異国情緒溢れる出会い

      名前しか知らない国からはるばるやってきたそのチョコレートは、口に含んだ瞬間にエキゾチックな風を吹かせた。 バヌアツで育ったカカオから作られたというその板チョコは、ほんの一欠片、小指の爪ほどの大きさであるにも関わらず、濃い香りとコク、カカオ70%らしからぬ甘みをもって、行ったこともない国の青空を鮮明に想像させた。 南半球、オーストラリアの近くに位置する珊瑚海を囲む小さな島国。 1年を通して暖かな気候の国。そんなふんわりとしたイメージしか無かった。 暖かな青空と熱帯らしく

      • チョコエッセイ🍫運命の一目惚れ

        人生を変えた冬から数年が経った頃、私は再びデパートのバレンタイン催事に来ていた。 今度こそ、19歳の時は買えなかったお高いチョコレートを買うために。 とは言っても、デパートで買えるチョコレートをGODIVA以外たいしてよく知らない上に、ろくに下調べもしていなかった私は、ショルダーバッグの肩紐を強く握りしめていた。 19歳の時とは違う心持ちで、19歳の時とは違うデパートの催事場へドキドキしながら臨んだ。 催事場へ入った瞬間、正直すごく困った。 呆然とした。 あの時が

        • チョコエッセイ🍫天邪鬼の恋心

          ストレートに気持ちを表現するのが得意ではない。 それに、表現に熱を込めるのも苦手だ。 否定と拒絶を伝えることだけは得意なのに。 不器用で、天邪鬼。思春期男子が、見てくれだけ大きくなったような私は、いい年こいて、今まで意中の相手にまともに思いを伝えたことが無かった。 そんな私に、救世主が現れた。 ル・ショコラ・アラン・デュカスのペピクール。 角張った幾何学的なハートのチョコレート。 真っ赤で、つるんとしている、いかにもなかわいらしいハートのチョコレートボンボンは、

        エッセイᝰ✍︎来世の話をしよう

          ショートショート‪✂︎‬流猫群の夜

           朝っぱらからなんだか外が騒がしいと思ったんだ。  まだ半開きの目を無理やり開けながらカーテンの隙間に手を差し込んで覗くと、斜向かいの薄田さん家の窓辺で、網戸に爪を立てるチャコと目が合った。  首輪の小さい鈴を揺らしながら、しきりに赤茶の交じった黒毛の、小さな前足を動かしている。  チャコの手に釘付けにされていたら、机の上で盛大にアラームが鳴ったから、制服に着替えてリビングに朝ごはんを食べに降りた。  リビングへ行くと、母さんが忙しそうに行ったり来たりしている。どうや

          ショートショート‪✂︎‬流猫群の夜

          チョコエッセイ🍫後悔の香りが鼻に抜ける

          VESTRIってご存知ですか。 カラフルな四角い缶の ゴールドのかわいくて小さいスプーンがついている すくって食べるタイプのチョコレート と聞けば、あぁ、あれのことか。となる人はたくさんいると思う。 かくいう私も、そうなる人間の1人だった。 今年までは。 チョコレートに魅せられて数年、ショーケースの前で立ち止まり、数分眺めて踵を返す、これを繰り返していた。 毎年、これすごく美味しいのよね、と話す女性たちの声を背中に浴び、買うか買わないか迷っていた。 こんなに

          チョコエッセイ🍫後悔の香りが鼻に抜ける

          チョコエッセイ🍫私のためのバレンタインデー

          忘れもしない、19歳の冬。 スーパーの片隅の催事コーナーがカラフルに彩られ始める時期に、当時住んでいた街のデパートでもバレンタインイベントが開催されている事を知り、友人と2人でソワソワしながら足を踏み入れた。 今となっては、毎年2月にデパートへチョコレートを買いに行くことが当たり前の行事になっているけれど、地方のド田舎育ちの私の中では、バレンタインのチョコレートはスーパーで買うか、自作するものだった。 小学校中学年以降からは、もう作る一択だった。 そんな私にとって、デ

          チョコエッセイ🍫私のためのバレンタインデー