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ジョジョ・ラビット


※なるべくあらすじを知らずに見たほうが面白いと思うので、未視聴の方は回れ右して一刻も早く「ジョジョ・ラビット」を観ることをおすすめします。ネタバレありです。


なんとなく観たいなぁと思いつつ先延ばしていた映画。
「サム・ロックウェルが良い役やってるから!」の言葉に強く背中を押してもらって、ようやく試聴しました。おかげで素晴らしい作品を見逃さずにすみました。圧倒的感謝...!

というわけで、私なりに感じたことを少し語らせていただきます。

まず最初に抱いた印象としては、鮮やかな色彩と華やかな模様が目に楽しい映像作品だなぁってこと。
主人公・ジョジョの家の内装や食器、母ロージーのファッション。街並み、自然の緑と青。

タイカ・ワイティティ演じるイマジナリーヒトラーや、親友のヨーキー、ふくよかな女教官など、個性的でコミカルなキャラクターも多く、第二次世界大戦中のドイツを描いているにしては明るい、今までにない戦争映画だったなと思います。

だからこそ。
コミカルであるからこそ際立つ、憎しみや葛藤、焦燥、喪失。

人が人を根拠なく憎む姿と、人が人を根拠なく愛する姿。
その両方を見せつけられる映画だったような気がします。


スカーレット・ヨハンソン演じるロージーが、とってもチャーミングで芯が強い女性で、魅力的。
息子に対する愛情が画面越しにヒシヒシと伝わってきて、戦時中のシビアな日常を明るく生きる姿に、何度もグッときました。
ジョジョの靴紐を結び直してあげるロージー。河辺では、ふざけて左右の靴を繋げるように結んでみたり。ウィンクができないジョジョの方目を手で塞いでみたり。
根底にあるのは愛。圧倒的な温かさの愛だ。

お洋服はいつだって華やかでオシャレ。プールサイドや塀の上では足元がアップになって、可愛い靴がよく見えた。
思えば、この時すでにタイカ・ワイティティの術中に嵌っていたわけだ。
まさかその好印象を逆手に取ってあんな演出をされるとはね。息呑んで固まってしまったよ。マジで勘弁してほしい……

この映画を観た翌朝、ベッドから起きた息子が私の脚にぎゅっとしがみついて甘えてきたんです。
その瞬間、ロージーの脚にすがり付くジョジョの姿を思い出して、涙がブワッと溢れちゃって。私が当たり前のように享受しているこの幸せが、当たり前のように引き裂かれる時代があったのが悔しい。

映画はフィクションだけど、戦争によって日常を破壊された家族がいたのは紛れもない事実で。愛する人と愛すべき日常を過ごしたいというそのシンプルな願いすら叶わない、罪深い歴史としか言いようがありません。

コメディの皮を被った戦争映画。
脚本、演出、役者、関わった全ての人のパワーが可能にした、紛れもない名作。それがこの「ジョジョ・ラビット」です。

そして、圧巻の演技力で魅力を放っていたのが、サム・ロックウェル。
ちょっと癖のある大尉、キャプテンK。
上着をはだけさせながらパイのようなものをあーんして食べさせようとしてる姿とか、ジョジョのお母さんに蹴り上げられたりとか、プールサイドでの姿とか。どれもこれもなんか「良い」。
見栄を張らず、自然体でいて、ふざけているようだけど芯はしっかり強く冷静な部分がある男。
これを演技でやっているんだからすごい。

俳優自体が好きというだけでなく、キャラクターとしても好きになるしかなかった、キャプテンK。
ジョジョがなにかと「ユダヤ人の見分け方」の話をしてくるから、おそらくすぐ勘付いてわざと茶化したりやんわり話を変えようとしてましたよね。
そのあたりから、「あ、この人はきっと子どもを守ってくれる大人だ、好き!」ってなって。
自転車抱えてジョジョの家に駆け込んで来た時の、安心感ね。
案の定、ジョジョとエルサの命を守ってくれたキャプテンK。
かっこよすぎてスタンディングオベーションですわ。この役を演じてくれてありがとう、サム・ロックウェル。

あの、さりげなくではあるけど、部下のフィンケルとの間に愛が育ってますよね?
「怒鳴ったりして悪かった」の言い方とか、距離感とか、そんな空気を感じさせる演出や演技があったような気が。(全然違ったらごめんなさい)
二人が自分達でデザインしたバカバカしくもある派手な衣装で最後の戦いに挑む姿。戦場で目立ちすぎるそれに笑いつつも、自分達を偽らずに堂々と振る舞っているような姿に、泣きたい気持ちになりました。戦わないで二人でどこかへ逃げてほしいと思わずにはいられなかった。
そしてラスト、フィンケルの羽織っていたマントの切れ端を握り締めるキャプテンKが、ジョジョを逃してあげる勇姿。もう、ボロッボロ泣きました。最高にかっこいいよ。でもあなたのことを思うとめちゃくちゃしんどい。


他にも印象に残るシーンいっぱいあるんですが、書いてたらキリがなさそうなので、これくらいにしておきます。
それにしても、笑ったり泣いたり感情がいそがしかった。こんな戦争映画、今まで観たことない。今後いろんな人に勧めることになると思います。

「ダンスは自由な人がやることよ」と、ロージーが言っていたっけ。

悲しいこと、辛いこと、後悔、挫折、どんな経験も全部糧にして、踊るように生きていこう。絶望が最後ではないのだから。


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