夢月鏡花

短編の物語を主に創作しています。 3分程度で読める物語がほとんどです。 日々精進してい…

夢月鏡花

短編の物語を主に創作しています。 3分程度で読める物語がほとんどです。 日々精進していきます🙌 皆様いつもありがとうございます!! ヾ(´∀`*)ノ💕

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【短編】 山吹茶屋

山道の脇に彩りを添える山吹の花。 その気品高き花姿に侍は嘆息する。 何だか旅の疲れがすっと軽くなる。 侍が山吹の花にそっと触れようとしたその時、遠雷が轟き数秒後に雨が降りだした。 これはいけないとばかりに侍は、両袖を簑代わりにして駆け出す。 すると見慣れぬ茶屋が顔を出した。 これは運がいいとばかりに、袖をはらいながら侍が腰かける。 「いらっしゃいませ」 可愛らしい声で娘が挨拶をする。 「すまぬが、わしは客では」 「大丈夫です。どうぞ雨宿りしていってくださいませ」 「あい、すま

    • 【短編】 ℘†℘ 水晶の花 ℘†℘

      【メインテーマ】  吸血鬼 【サブテーマ】 水晶 浄化 時は明治初期、処は帝都東京。何ともツクリモノめいた明治の世の平穏も、裏を返せば錦に煌めく造花の産物か。水面に月の美しきたるは、川底にて汚濁を浄化す犠牲ある故とな。 平穏の世は川の如くに……。 継続するべく産み出される代償は、川底にて蠢く。清らかな水の面を表とするならば、川底に沈むは裏にて犠牲となりし屍の念。清[せい]を保つには、濁[だく]を呑み込む生け贄が必要なのだ。 その生け贄となったのが、明

      • 【物語】 ‡*‡ 雪中四花 ‡*‡

        *─ 梅の花 ─* 川縁の水茶屋にて、梅の咲きゆくを仰ぎては抹茶を口に。 梅の花の何とも言えぬ奥ゆかしさに、また仰ぎて嘆息。 淡き恋影や雪洞如くに灯る。 娘の頬がほのか薄紅に。 決して悟られてはならぬ隠密の恋。 着物の胸元に忍ばせた恋文に手を添える。 口にするは許されぬ想いを言の葉として認めて、御守りと持ち歩く事で、娘は心にかけた結界を護る。 なれど、なれど……。 梅の香に酔わされた故と言い聞かせながら、浅き夢を。 寄り添いては貴方の袖に香を移ろわせてと、春の余韻に罪の許し

        • 【時代小説】 人斬り、落椿 - 弐 -

          †*† 闇の雪 †*† 皓月千里。 雪の闇夜を照らすひかりに、神の助けとばかりに私は胸を撫で下ろす。 見失いし者を導くが如く、月光が獣道らしきものを照らし出す。 雪に囚われ重くなる足取りで、恐る恐る従いて進む。 しばらく進むと道が開け、其処に広がるは何とも奇怪なる景。 雪の塚、雪の墓と言わんばかりの何とも奇妙な雪の小山。 其れ等が無数に存在していた。 獣の仕業かと、ようよう目を凝らして観てみれば、何と人の影らしきものが。 どうやら此れ等を作っておるのは、獣ではなく人間。 私

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        【短編】 山吹茶屋

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          【物語】 シケモク

          「よお相棒、元気そうじゃねーか」 黒塗りの高級車から降りてきた和服の男を一瞥し、パイプ椅子に座り煙草を吹かしていた作業服の男は舌打ちを返した。 「随分な挨拶だな、相棒」 「何しに来やがった」 「つれないねぇ」 「あんたに売る媚はねーよ」 今にも潰れそうな古びた廃工場のような工場からは、微かな機械音が軋みをあげていた。 それは、辛うじて稼動している老いた機械の呻き声のようでもある。 老いて草臥れているのは、人も機械も工場も一緒というわけだ。 「相変わらずシケた面してんな」 「大

          【物語】 シケモク

          【和詩】 秋の筆

          透ける空に鰯雲 野に揺る薄刈り稲田 傾ぐ案山子に秋茜 金木犀の芳香に ふわり追憶長き影 萩やしだれて花簾 幽玄なりや秋月夜 酔う名月やぐゆぐゆり 過ぎて十六夜秋の虫 桔梗秋桜竜胆と 愁いて寄り添う秋の情 彼岸に此岸曼珠沙華 紅の黙礼 偲ぶ秋 映ゆる紅葉や水鏡 艶やかみやび 錦の景 瑞の苔や 石畳 斑らの描や花の筆 滲み依りては 秋霖よ 枯れ木の許に朽葉かな 短命なるは秋さだめ 晩秋なりか 寒の菊 凛と佇み冬を待つ 密文綴りて逝く秋よ 告げるは花か蝶なりか 描く水墨冬の筆 椿さ

          【和詩】 秋の筆

          【短編】 告白 4

          ❮妻なる者の告白❯ 夫を責めないであげてくださいませ。あのひとは可哀想な人なんです。人間の感情を真に理解する事ができないのです。作家なのに、と申されますか。確かにその通りでございます。しかし、作家先生である時のあのひとと、ただの夫、いや男である時のあのひとは、たぶん違うのです。  あぁ、昔の全盛期の作品たちを読んだ時の衝撃と感動が、今でも忘れられません。あのひとの執筆する姿にも勿論小説にも、常に気迫と凄みのようなものを感じましたもの。しかし近年はそれも、風前の灯火となってお

          【短編】 告白 4

          【短編】 告白 3

          ❮作家先生なる者の告白❯ どうやら僕は、人為らざる者になったらしい。はは、笑わせるだろ。僕ほど人間らしい人間はいないというのに。どうやら、僕は人間としての資格を失ってしまったらしいんだ。 いや実はね、お恥ずかしい話なんだが、愛人たちに『人間失格』の烙印を押されてしまってね。何故なんだろうねぇ。僕は良かれと思って話したんだが、それがどうやら彼女たちの逆鱗に触れてしまったらしいんだ。いやぁ実に理解不能だよ。妻の醜態を面白可笑しく話しただけなんだがね。実に悩ましいよ。やはり他人の

          【短編】 告白 3

          【短編】 告白 2

          ❮作家なる男の独白❯ 彼女たちは口々にこう言ったのだ。 ──先生は人間失格ですわ はて、人間失格とは人間の資格を失ったものということだと解釈する。すると、僕は人間ではないという事なのだろうか。人間ならざる生きものとなるのか。 うん。それは天使が堕ちて堕天使となったように、僕も堕ちて堕人間となったという事か。 僕は堕落した人生を投げやりに生きている。 彼女たちはそれを揶揄するように、そう言ったに過ぎないのではないか。 彼女たちというのは、勿論僕の愛人たちの事である。妻との

          【短編】 告白 2

          【短編】 告白 1

          ❮作家なる者の告白❯ 僕はね、常々こう思っているんだ。人間とは何て滑稽で愚かな生き物なのだろうとね。しかし、こうも思っている。だからこそ最も愛おしい生き物なのだとね。最も美しく最も醜い。善良であり、害悪でもあり得る。素晴らしいじゃないか。我々はあらゆる矛盾のなかで生きている。その矛盾に悩み葛藤し苦しみ、時には自ら命を絶つ。我々人間は最も悩み多き生き物なのだよ。我々は他者に気を遣い、思いやりながら生きている。空気を読むなんて事、他の生き物がすると思うかい。そん

          【短編】 告白 1

          【物語詩】 花の性

          巡り咲かせて散りゆくは、四季折々の彩の花。 綾なしみせゆく花の舞い、千紫万紅繚乱に。 香に色に酔わせては、花回廊や夢うつつ。 妖しき艶を纏いては、月をも狂わす花の怪。 美しき花は罪なりか、毒を秘めては淑と咲く。 されど煎じて薬とも、併せ持つが花さだめ。 清濁併せ呑むがひと、似て非なるか花とひと。 華麗なれども憂いあり、百花百様咲き姿。 戯る風に抱かれては、揺れて語らう可憐花。 無情の風雨に晒す身も、寡黙に耐えゆく花の凛。 刹那散りゆく命とて、花の意をや伝えゆく。 ひそめし想い

          【物語詩】 花の性

          【物語】 通り雨

          「ひなか過ぎてや夕時雨」 侍が茶屋で雨宿りをしていると、見知らぬ女が隣に座って呟いた。 侍は戸惑いながらも、黙して茶をすする。 「通り雨、でございますね」 女がまた呟き告げる。 「何故、通り雨なのでございましょう」 通り雨を眺めながら女が続ける。 「もしや、俄か雨ではすまぬ事情があるのやも」 女が侍の顔を見る。 侍は漸く女が自分に話しかけていた事に気づき、曖昧な返事をする。 「お侍様もそうなのではございませぬか」 侍が女を見る 女も目を逸らさず、真っ直ぐ侍を視る。 「通り雨同

          【物語】 通り雨

          【物語詩】 あやしあやかし夏祭り

          隠り世、現し世。 誘われ回廊、万華鏡。 あやしあやかし夏祭り。 彩る無数の提灯に、祭り囃子が夢見に響く。 狂喜乱舞よ、盆踊り。 狐のお面に浴衣の美女が、肩襟ずらして誘う指。 踊れや踊れ。 狂えや狂え。 人も妖も乱れみだらに。 逝けば極楽、果てて夢。 しゃんりんしゃらら、りんしゃらら しゃんりんしゃらら、りんしゃらら ちりん、ちりん…… 風鈴の音に、さめて朝風。

          【物語詩】 あやしあやかし夏祭り

          【物語】 流れない涙

          彼女の左目からは常に涙が溢れていた。 その涙は流れる事なく下瞼に留まり続けた。 彼女の痛々しさに、胸が締め付けられ息が苦しくなる。 つい目を逸らしたくなる。 でも、それは許されない。 「ごめん」 「何で謝るの?」 「……ごめん」 「おかしな人ね」 彼女の悲鳴と逃げて行く僕の足音が脳裏に蘇る。 彼女の心を殺したのは、僕だ。 僕が彼女を壊した。 「あなたは悪くないわ、あなたは悪くないわ」 壊れた人形のように、彼女が繰り返し呟く。 血を吐くような乾いた笑い声が木霊する。 彼女の涙が

          【物語】 流れない涙

          【物語】 柳に幽霊

          枝垂れ柳の下に影の薄い幽霊のような女が濡れたまま佇んで川を眺めていた。 男は放っておけずに思わず話しかけてしまった。 「あの……ここで何を」 濡れ髪が枝垂れ柳のように顔に垂れ下がり、顔の半分が隠れてしまっている。 女はまるで感情を喪ってしまったように無表情である。 「あの」 女は口の端を奇妙にあげて応えた。 「幽霊になってみましてん」 「あ……柳に幽霊。なるほど」 女が薄気味悪く嗤う。 「心中……しそこないましてん」 幽かに聞こえる声で女が告げる。 「あのひとはとうとう来なん

          【物語】 柳に幽霊

          【物語】 お素麺にしましょ

          柳に雨も詠えぬうちに、気づけば酷暑続きの無情なる季節。 聞けば、まだ梅雨は開けておらぬ模様。 梅雨と真夏の混在する何とも可笑しな季節でございます。 聞けば、向日葵が美しく咲き乱れておるそうです。 やはり夏なのでしょうか。 初夏はいつ過ぎたのでございましょう。 もう花菖蒲は在らぬのでしょうか。 それとも不忍池で忍んで密かに咲いておるのでしょうか。 紫陽花はまだ健在でございましょうな。 しかし既に青紫も薄紫も色褪せて、枯れるを待つのみでございましょうか。 もしや移り気も他所の話と

          【物語】 お素麺にしましょ