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【マウント】第6話「過激派の攻撃」

これは「チャット小説」として書いたものです。
そのためセリフ以外の感情等の表現を極力簡潔にしてあります。
セリフをもとに想像してお読みください(*vωv)


ユキノ(あ、今日は花壇の水やり当番だった…)


 生徒は朝、登校したら花壇に輪番で水をやる。
 輪番票を確認して花壇にジョーロをもっていくユキノ。
 その時

  ザバッ!


ユキノ「!?」
生徒たち「キャア!」


 2階からユキノめがけて真っ赤な液体が降ってきた。
 全身血まみれになったみたいなユキノを見て
 周りの生徒たちが騒然とする。


生徒たち「2階からだったよ!」
生徒たち「美術室か!俺見てくる!」
生徒たち「だ、大丈夫?」


 他のクラスの生徒はユキノがイジメられていることを知らない。


生徒たち「先生!こっちです!」
先生「ユキノさん!保健室へ!」
生徒たち「美術室見てきた!窓際にいろんな色水入れたバケツ並んでた!」
生徒たち「誰かいた!?」
生徒たち「居なかった…バケツはロープで結ばれてたけど…」


 ユキノのクラスの同級生がみんなに知らせる


同級生「ユキノが血まみれで保健室行った!」
同級生「!?」


 マサキは保健室に走る。




 保健室に駆け込んだマサキは叫ぶ


マサキ「ユキノ!」


 ユキノは借りた白衣を着てベッドに座っていた。
 頭にかけられたバスタオルは真っ赤に染まっていた。


保健室の先生「マサキ君!ノックしてちょうだい!」
マサキ「すみません…ユキノが血まみれで保健室に運ばれたって聞いて…」
ユキノ「どこも怪我はしていません。
 赤い絵の具をバケツ一杯浴びせられただけです。」
マサキ「はあ!?」
保健室の先生「制服も全部赤絵具まみれだったんで今洗濯してます。
 ユキノさんシャワーを浴びましょう。
 というわけなので教室に戻ってください。マサキ君」
マサキ「あ、は、はい!すみませんでした!」




 教室に戻ったマサキ。
 頭から血を浴びたようなユキノの姿はかなりインパクトがあり
 見た生徒は興奮しながらしゃべっていた。


同級生「ホラーだよ!マジホラー!」
同級生「ああいう映画なかった?」
同級生「あったあった!昔のやつだろ!?」
同級生「美術室にいっぱい色水あったんだって…」
同級生「血まみれにしか見えなかったよ!」
同級生「やだもー!夢に出そう!」

マサキ(美術室…)


 マサキは美術室に行ってみる
 美術教師と現場を見た生徒が話していた。


美術教師「こんな授業はしていない。美術部の生徒かもしれない」
生徒「色水こんなに作ってどうするんです?」
美術教師「水風船とポンプがあるね…これはポロックの画集か…
 この濃度だとちょっと薄すぎるから日向において蒸発させていたのかもしれないな。
 バケツもしっかりロープで結んで落下しないようにはしてあるけど
 傾いたら水は落ちるね…」
生徒「どういうことです?」
美術教師「ポロックっていうアーティストはキャンバスを床に置いて
 絵の具を垂らして作品を作ったんだ。
 その発展形で水風船に絵の具を入れて投げつけて作る芸術もある。
 それを試そうとした可能性も否定はできない。」

マサキ(あくまで事故を装った直接攻撃か…
 今回のはユキノの身体への危険性は低い方だけど視覚効果が高い…
 見た生徒に強烈な印象が残る…陰湿だ…)




 <保健室>


保健室の先生「よし、服は乾いたわね。
 うーん…大体は落ちたけど、クリーニングに出さないと白地のところは完全には落ちないわね…
 下着も買い替えた方がいいわ。」
ユキノ「ありがとうございます」
保健室の先生「美術の先生から連絡があったわ。
 誰がやったのかはわからないけど事故の可能性が高いそうよ。
 バレーボールの時と言い…災難続きね…」
ユキノ「…そういう時もあります」
保健室の先生「気を落とさないで。悪いことがあった後にはいいことがあるものよ。」
ユキノ「はい。励ましてくださってありがとうございます」

保健室の先生「ねえ、ユキノさんってマサキ君と付き合ってるの?」
ユキノ「え!?」
保健室の先生「体育の時も抱えてきてくれたし、今も血相変えてきてくれたし」
ユキノ「別に…そういうわけじゃ…」
保健室の先生「他の先生はどうか知らないけど、私は健全な範囲なら男女交際っていいと思ってる。
 特にユキノさんみたいなタイプの子は。」
ユキノ「私…?」

保健室の先生「あなたは…よく言えば責任感が強い…
 でもそれって一人で何でもどうにかしようとしちゃうってこと。
 そういうタイプは色々と抱え込んじゃうの。
 内に溜め込んでることを吐き出せて、頼りにできる人が居るっていいことよ。
 寄りかかるんじゃなく協力し合う。それって「信頼」ってことだから。」
ユキノ「信頼…」
保健室の先生「信頼できる人を大事にね」


 ユキノは礼をして保健室から出て行った。
 授業時間はとっくに終わっていた。


ユキノ(ふう…1日授業が受けられなかったな…)




 風紀委員室に行くとマサキが待っていた。


マサキ「ユキノ、これもあいつらだよな?」
ユキノ「…事故の可能性も否定はできませんが…
 あまりにもピンポイント過ぎですから…多分…」
マサキ「『赤い液体』か…ほら、これ今日の授業のノートのコピー」
ユキノ「え…」
マサキ「お前の性格なら…気にしてるかなと思って」
ユキノ「ありがとう…」
ユキノ(マサキさんは…私をよくわかってくれてる…心配してくれた…
 溜め込む…信頼…)


 ユキノは泣き出しそうだった
 マサキはユキノを抱きしめる。
 ユキノは震えていた。


マサキ「すまない。目を離さないって言ったのに…」
ユキノ「いいえ…私…色水で良かったって…だって…もし…酸とかだったら…」


  ゾクッ

 マサキはそれは考えていなかった。


ユキノ「ごめんなさい…ついネガティブなことを考えてしまいました。
 酸をかけるというのは非現実的です。
 劇薬は厳重に管理されています。理科室から盗むのも難しいです。」
マサキ「…簡単に手に入る危険な液体は山ほどあるぜ。
 ホームセンターに行けば簡単に買える。」
ユキノ「…そうですね…知識があれば爆薬だって作れます。
 でも私だけを狙う爆薬を作るのは難しいです。
 犯人たちも他の人を巻き込むことはしないでしょう。
 特にあなたは。」
マサキ「なら…絶対離れない。離さない。」
ユキノ「…………マサキさん…少し甘えていいですか…?」
マサキ「ん?」


 ユキノはマサキの胸に顔をうずめると声を殺して泣いた。
 マサキは彼女を抱きしめてだまって髪をなでた。




 その頃、過激派の犯人たちは大喜びだった。
 掲示板は彼女たちのログで埋め尽くされていた。


『思った以上の効果!』
『ホラーY!オバケ!』
『サイコー!』
『豚の血の方が良かった?w』
『パロディwwww』
『何の血でも準備するの嫌だよ。赤い色水で十分!』
『現場見たけどすごかったよ!やったね!』
『でもYはしぶとい』
『Mから離れればいいだけなのに』
『まだ教科書借りてるの?』
『買えよ!貧乏かよ!』
『わざとじゃない?』
『あたしら挑発されてんの?』
『てかさ、Yってマジ、わかってないんじゃない?』
『?』
『なんで嫌がらせされてんのか』
『あ~ありえる~』
『サイバーの時みんなあいつのこと機械音痴って言ってた』
『じょしうら知らないんじゃない?』
『んじゃいくら攻撃したって意味ないじゃん!』
『わからせとこうか』
『だね』

『21:00 手紙』




 ひとしきり泣いたユキノは水道に行き顔を洗う。
 マサキはハンカチを貸す。
 ハンカチを受け取って顔を拭いてほほ笑むユキノ


ユキノ「なんだか本当にカノジョになった気分です」
マサキ「カノジョだろ」
ユキノ「(仮)です」
マサキ「笑 そういや好きにさせるんだったな。
 その時本当のカノジョになるんだっけ?」
ユキノ「そうです」
マサキ「まだダメ?」
ユキノ「まだまだです笑
 でも、あなたという人はだんだんわかってきました。」
マサキ「お前にとって俺ってどんな人?」
ユキノ「…………内緒です笑」
マサキ「なんだよそれ笑」




 二人は家に帰る。
 ユキノはベッドで考える。


ユキノ(マサキさんがどんな人…か。
 はじめは…顔やスタイルが良くて…それを自慢げにしてて…
 モテることを当然のように思ってて…頭の悪そうな人だと思ってた…
 見慣れたからかな…顔とスタイルとか…どーでもいい…
 彼と一緒にいると…安心する…………私にとって彼は…)


 そんなことを考えながら
 マサキがくれた今日の授業のノートのコピーを抱きしめる。

 と、突然ケータイからメールの着信音が流れてきた。
 着信音が止まらない。


ユキノ「!?」


 ユキノがメーラーをひらくと、すごい勢いで受信ボックスにメールが貯まっていく。
 1つ開いてみたが中身は意味不明の文字列が並んでいた。
 差出人の名前はランダムな文字列。
 そして件名は…

「キスしたからだ」
「みんなのマサキ」
「マサキに手を出すな」
「お前を許さない」
「マサキから離れろ」
「教科書借りるな」
「マサキと話するな」


ユキノ「…マサキ推しの皆さんからのメッセージですか…」


 21:00から一斉に送り続けられたメールは
 メールボックスが溢れるまで送られ続けた。


ユキノ(うちがwi-fiでよかった。地味だけどホントに嫌な嫌がらせ。)


 ユキノは着信音を消して、そのまま寝た。


<第7話に続く>





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