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【マウント】第8話「もう許さない」

これは「チャット小説」として書いたものです。
そのためセリフ以外の感情等の表現を極力簡潔にしてあります。
セリフをもとに想像してお読みください(*vωv)


 次の日、ユキノは風紀委員室へ行く。


ユキノ「これを…つけるのですか?」
マサキ「うん。シャツの上からで十分だよ。」
ユキノ「ちょっと向こうを向いていてください」


 マサキが背を向けている間に
 ユキノはマサキが書いてくれた取り付け方を見ながら
 身体に秘密道具をつける。


ユキノ「できました。これで良いですか?」
マサキ「うん。ちょっと引っ張るよ」


 マサキはユキノの腰から出ているホースを引っ張る


ユキノ「きゃあ!」


 引っ張られたユキノはマサキに抱き着く。


マサキ「うん。十分丈夫だね」
ユキノ「は、はい…あの…離れても良いですか?照れます…」
マサキ「あ、ああ!ゴメン」


マサキは抱きかかえている手を放す。
ユキノは赤面していた。


ユキノ(何度か抱きしめてもらったのに…
 なんで照れるんだろう…)

マサキ(何度か抱きしめたことはあるけど…
 まああの時はユキノは恐怖でいっぱいだったりだったしな…
 こんなふうに照れられると…こっちも照れるな…)

マサキ「罠を仕掛ける時はこのフックをこっそり。
 大丈夫。ちゃんと守る。」
ユキノ「はい!」




 昼休み、ユキノは図書室から借りた文庫本を読みながら廊下を歩く。

  トン


男子生徒「わっ!」
ユキノ「あ!ごめんなさい!」
男子生徒「本読みながら歩くなよ…あぶねえだろ」
ユキノ「ごめんなさい…」


 ユキノはぶつかってしまった男子生徒に謝って
 階段の手すりによるとそこで読み始めた。

 何人もの生徒がユキノのそばを通っていく。
 ユキノは本を読みながら腰を掻くように片手を後ろにやる。
 過激派私刑女子はその様子を見てこっそり近づく。

 ユキノが背中に回していた手を放し
 本を閉じて階段を下ろうとした瞬間

 
 ドン!


ユキノ「キャア!」


 背中を突き飛ばされたユキノは階段を踏み外す。
 が、

  ピンッ!

 マサキの作った命綱のおかげで落下せず、その場に座り込む。
 押した女生徒は驚く。


マサキ「ユキノ!」


 斜め向かいの曲がり角からすべて見ていたマサキが駆けつけ
 ユキノを支える。
 逃げようとする犯人に向かってマサキは大声で言う。


マサキ「全部録画した!階段から突き落とすのは殺人未遂だ!
 誰がやったのか全部撮れてる!逃げても無駄だ!
 どんな理由があろうと俺は他人に危害を加えるような奴は許せない!
 こんなことをする奴は…大嫌いだ!」


 犯人はその言葉を聞き、そろそろとその場を離れ、走り去る。
 「大嫌いだ」と言うマサキの言葉が頭の中で何度もこだまし
 涙があふれていた。

 過激派だが、彼女たちもマサキに対する恋愛感情は本物だった。

 手すりにつけたフックをこっそり外してユキノを抱き起す。
 周りの生徒は心配そうに駆け寄る。


生徒たち「だ、大丈夫!?」
ユキノ「はい…とっさに座ったので…びっくりしましたが無傷です」

生徒たち「マサキ…階段から突き落とすのは殺人未遂だ!って…」
生徒たち「風紀委員長、突き落とされかけたの!?」
生徒たち「マジならヤバすぎる…」

生徒たち「録画したんだろ!?警察に持ってけよ!」
マサキ「確かに撮れてる…でもユキノは無事だった。どうするかはあとで考えるよ」
生徒たち「なんで録画なんてしてたの?」
マサキ「新しい動画編集ソフトを入れてみたから機能を試したくてさ。
 ユキノには教科書見せたりして貸しがあったからね。
 被写体になってくれるように頼んでOKもらってたんだよ。」

生徒たち「ひそ)マジで?そんな偶然ある?」
生徒たち「ひそ)マサキとユキノって付き合ってるって噂あるし」
生徒たち「ひそ)え~?そうなの!?マサキ趣味悪!」


さっきユキノがぶつかった男子が騒ぎに慌てて駆け寄る。


生徒たち「お前さっき歩き読みして俺にぶつかったろ!マジで気をつけろよ!」
ユキノ「ごめんなさい。ホントですね。ご注意ありがとうございます」
生徒たち「お、おう、ま、まあ、何事もなくてよかったよ」
ユキノ「お騒がせしました。」
マサキ「一応保健室行くか?」
ユキノ「大丈夫です。」


 てきとーにそれらしいことを言ってけむに巻いて
 二人はその場を去った。




 教室に戻って何事もなかったように午後の授業を受け
 放課後、二人は風紀委員室に行く。


ユキノ「ふう…まだ足が震えてます」
マサキ「マジでユキノの言った通りになったな…」
ユキノ「この紐すごいです。」
マサキ「レスキュー隊がヘリに人を運ぶときに結ぶやり方なんだって。
 ホースにしたのは色がわかりづらいのと
 ユキノの身体にダメージが行かないようにするため。
 強度が十分あるし、ゴムだから引っ張られて尻もちになったろ?」
ユキノ「はい。ホント色々びっくりしました。」
マサキ「正直尻もちになる長さで作るの…何度も試したけど不安だった。
 悪くすると変なところぶつけかねないから…
 うまくいって良かったよ…ホントにケガしてない?」
ユキノ「はい。靴下も厚手のものを履いてたし
 背中からお尻までクッションを入れてくれてたので」
マサキ「そのクッションも工事現場とかで使う緩衝素材だから…
 でも危険な罠だったよ…もう二度とやらないでくれ…」
ユキノ「あなたに『大嫌い』と言われたんです。
 危害を加えられた私より、ショックを受けているのは犯人です。」
マサキ「ふう…」


 マサキはその場にへたり込んだ。
 正直万全は期したつもりだったけど、こんな素人工作で安全性が発揮できるかは不安だった。
 そりゃ階段から突き落とされるよりはましだけど
 ちょっとずれてたら頭を打ってたかもしれない。
 本当に何事もなくて安心して、どっと疲れが出た。


ユキノ「…マサキさん…」
マサキ「ん?」
ユキノ「守ってくださって、ありがとう」


 ユキノはマサキの顔を覗き込んでほほ笑んだ。
 ユキノはマサキに背中を合わせて床に座る。


ユキノ「最初…私はあなたに『特定のカノジョを作りなさい』と言いました。
 あなたはその無責任な言葉に怒って…私をカノジョにしました。
 よかったと思ってます…
 もし私の言葉に押されて…てきとーな誰かと付き合ったら…
 その人がこんな目に合ってたかもしれません…」
マサキ「…前にもそんなこと言ってたよな…
 イジメの被害者が自分なら、他の人はイジメられない…って」
ユキノ「?事実を言っただけですが…」
マサキ「…お前ってそういう性格なんだよな…」
ユキノ「…?」
マサキ「クス)自分の性格って自分じゃわかんねーよな」
ユキノ「そうですね…」

マサキ「俺は…告白されたかった」
ユキノ「は?」
マサキ「ずっとさ…自分はかっこよくて…モテると思ってた。
 でも誰にも告白されたことがなくて…それが疑問で…
 誰でもいいから告白してくれよって」
ユキノ「あんな掲示板があったら誰も告白できませんよ」
マサキ「中学の時はなかったろ…」
ユキノ「恋愛に関しては…女子は早熟ですから。
 中学時代からけん制し合ってたのかもしれませんね…」
マサキ「…なんて…バカだったんだろうって思う…」
ユキノ「…自分から告白するのは誰でも誰にでもできます。
 告白される…というのは十分モテ度のバロメーターにはなるのでは?」
マサキ「それってさ…バレンタインに何個チョコもらったって自慢してんのと同じで…
 ガキ臭くて…すげーダセーことじゃね…?」
ユキノ「…………」
マサキ「誰でもよくなんかねーよ…
 俺は…こんなイジメするような連中にチョコもらっても嬉しくねえ…」
ユキノ「…………」

マサキ「誰のことも好きになったことないのに…他人には好かれたくて…
 もし告白されても…『やったー!告白1件ゲットー!』とか思うだけで…
 その子が真剣なら…俺は…スゲー失礼なことをしてると思う…」
ユキノ「…付き合って好きになっていくかもしれませんよ?」
マサキ「…かもしんねーけど…こんなバカと付き合っても
 失敗したって思うだけじゃねえかな…」

ユキノ「…マサキさんは…少なくとも…かっこいいと思います」
マサキ「…………」
ユキノ「カノジョ(仮)だけど…一緒に過ごしてきて…あなたはかっこいい人だと思います」
マサキ「…………」
ユキノ「ちゃんとあなたのことを知れば…幻滅することはないと思います」
マサキ「…ありがとな」
ユキノ「こちらこそ」

ユキノ「これで…攻撃はなくなると思いますか?」
マサキ「どうだろうな…」


 その頃私刑女子たちの隠れ家スレッドには
 とんでもない一文が書き込まれていた…


<第9話に続く>





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