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【マウント】第7話「罠」

これは「チャット小説」として書いたものです。
そのためセリフ以外の感情等の表現を極力簡潔にしてあります。
セリフをもとに想像してお読みください(*vωv)


翌日ユキノはマサキに教科書は見せてもらったが
二人は一言も言葉を交わさなかった。

ユキノは教科書に隠して
「メール攻撃。受信ボックスいっぱい。下校ばらばらに。放課後私の家に。」
と書いたメモを見せた。
ピンと来たマサキはユキノに合わせてユキノに話しかけないようにした。


犯人(ふーん。少しは分かったみたいね)




 放課後、二人はバラバラに帰り
 マサキは私服に着替えてユキノの家に行く。


ユキノの父「やあ!マサキ君!いらっしゃい!」
マサキ「お久しぶりです。」
ユキノの父「ユキノから聞いてるよ
 なんか『迷惑メールをどうにかしてもらいに来てもらう』って。」
マサキ「はい。おじゃましていいですか?」
ユキノの父「どうぞどうぞ!」


 居間にユキノが待っていた。
 私服のユキノは彼女らしいナチュラル系で清潔で優しい印象を与えた。


ユキノ「ふう、今日はあわせてくれてありがとう」
マサキ「余裕!てか今頃メール攻撃とかなんなんだ?」
ユキノ「これです」


 マサキはユキノのケータイを見る


マサキ「うわ、なんだこれ…迷惑メールにもほどがある…
 これ、受信料えらいことになるんじゃ…」
ユキノ「だからうちに来ていただいたんです…
 うちならWi-Fiなので…」
マサキ「あ、ホントだ。」
ユキノ「大事なメールも混ざってるかもしれないんで…
 でもいちいち見て消すには量が…」
マサキ「何か共通点は?」
ユキノ「件名が私へのメッセージで中身は意味不明の文字列です」
マサキ「ふーん…じゃあこう設定すれば…」


 マサキは迷惑メールの条件を設定して実行する。
 私刑メールだけがどんどん消えていく。


ユキノ「え!?これだけでいいんですか!?」
マサキ「今後も中身が無意味な文字列のメールは迷惑メールとしてはじくようにしといたよ。」
ユキノ「助かります。私、ホントこういうのホントにダメで…」
マサキ「Wi-Fiを入れてるくらいなら親御さんがよくネット使うんだろ?」
ユキノ「はい。父も母もよく使います」
マサキ「お父さんに頼んでもできたと思うけど…」
ユキノ「ひそ)こんな件名のメール見せられません」
マサキ「ひそ)あ…そうだな…」


 迷惑メールは全部で3000件近くあった。


マサキ「Wi-Fiじゃなかったら大変だったな…地味だけどマジでいやがらせだぜ…」
ユキノ「あなたのファンは多いんですね…」
マサキ「こんなのちょっと詳しい人が居たらあっという間にできちゃうよ…
 昨日の色水と言い…今までとちょっと違ってきてる気がする…陰湿だ」
ユキノ「そうですね…」

マサキ「あのさ、思ったんだけど…ユキノはスレッドを見れるんだよね?
 犯人たちはスレで相談してるんじゃないの?」
ユキノ「それが…相変わらずあなたのストーキングが書かれてるだけなんです」
マサキ「じゃあ、なんか別のコミュニティでやってるってことか…?」
ユキノ「わかりません…私はそんなヘビーユーザーじゃないので…」


 ユキノは「ローカルルールを破った際の私刑時
 無関係を装ったスレッドを作ってそっちで計画や進捗を話し合う」という
 『じょしうら』の慣習を知らなかった。
 元々自分は書き込みもせず、たまたま目に留まったスレッドを巡回したり
 自分の趣味に合う平和なスレッドを読むくらいだったので
 過激な私刑が起こるようなスレッドのことは「私刑がある」ということ以外疎かったのだ。


マサキ「ユキノが『じょしうら』に登録したのは…風紀委員長として?」
ユキノ「いいえ…その時は『じょしうら』が女のドロドロ吐き場だなんて知らなくて…
 女子専用の学校裏サイトがあるという噂を聞いて興味本位で登録しました。
 主に見てたのは『おすすめ映画スレ』です。」
マサキ「映画好きなの?」
ユキノ「はい!色んな人が自分が見た映画のレビューを書いてる平和なスレッドで
 それを参考にレンタルしたりして…結構いいのが多かったんですよ!」


 映画スレの話をするユキノの顔はとても明るく楽しそうで、かわいかった。


マサキ「『楽しい情報交換するスレッドもたくさんある』って言ってたもんね」
ユキノ「はい!私は興味ありませんが『いいコスメの紹介』とか
 『かわいい洋服ブランドについて話すスレ』とか『おいしいスイーツ店紹介』とか」
マサキ「女の子らしいね」
ユキノ「あなたのスレは…
 同級生の名前があったので…たまたま開いてみたら…ああだったので…」
マサキ「…俺のせいでごめんな…」
ユキノ「首を突っ込んだのは私です。
 あなたは何も悪くありません。」
マサキ(最初んときは…お前が悪いとか言ってたのに…なんかいろいろ変わったな…)


 ユキノはメモを取り出した


ユキノ「私、今までのものを整理してみたんです…」


 ユキノは今まで受けたイジメのメモを見せた。

1.机に花
2.机に油性ペンで落書き
3.靴捨て
4.机と下駄箱にゴミ詰め
5.教科書、ノート破き
6.偽SNS
7.体育事故
8.色水かけ
9.迷惑メール


マサキ「2,4,5は器物損壊、3は窃盗、6は名誉毀損、7は傷害、8は暴行罪、9はギリ脅迫罪かな…」
ユキノ「8って暴行罪なんですか?」
マサキ「うん。たしかそう。7から質(たち)の悪さが増してるな…」
ユキノ「多分犯人は複数人が分担してそれそれがやってるんだと思います。
 一人がやるのは難しいですから…
 最初に器物損壊が多かったので…傷害になって怖くなった人が居るのかも…」
マサキ「だとしたら…今やってる人はそんなの関係ない人ってことだ…
 本当に危なくなってきてると思う…」
ユキノ「…………一番簡単で…犯人が分かりづらく…事故を装え…
 私だけにダメージを与える方法があります。
 多分そろそろ狙ってくると思います。」
マサキ「何だ?」


 ユキノはマサキに耳打ちする


マサキ「!?それ下手したら死ぬぞ!?」
ユキノ「はい。なので…………守ってください」
マサキ「…………もちろん。」

ユキノ「そのために…先手を打ちます。」
マサキ「先手?」
ユキノ「隙を作るんです。
 私のすぐそばに居てください。」
マサキ「…頼むから…危ないことはしないでくれ…」
ユキノ「待ってるだけじゃ、どう出るかわかりません。
 だから罠を張って捕まえるんです。
 私はあなたを…信頼してます。」
マサキ「…もしものために…用意できることをさせてくれ。」
ユキノ「はい。お任せします」
マサキ「罠は明日仕掛ける?」
ユキノ「はい。早くしないと先手を打たれます」
マサキ「なら朝1で風紀委員室に。」
ユキノ「はい。」


 ユキノの父がお茶とお菓子を持ってくる。


ユキノの父「ずいぶん深刻な顔をしてるね。
 そんなにひどいメールだったの?」
マサキ「昨日急に3000通も来てました。
 できるだけ対策は練りましたが…絶対ではないので…」
ユキノの父「いきなりそんなに来るのはおかしいね…」
マサキ「俺がユキノのスマホを借りて検索したときに
 変なリンクを踏んでしまったのかもしれません。
 なので…できる限りの責任を取りたいんです…」
ユキノ「私は機械のことはさっぱりなので、全面的にお任せしようかと…」
ユキノの父「…ボクにできることがあったら言ってね?
 マサキ君は責任を感じないで。
 悪いのは迷惑メールを送ってきてる人なんだから。」
マサキ「ありがとうございます」


 ユキノの父はなんとなく感じていることがあるようだった。

 マサキは帽子を深くかぶってユキノのマンションから出る。
 ユキノの言っていたことを考えサバイバルガイドのサイトを開く。
 ホームセンターに行って必要なものを買った。




 マサキは家で準備する。


マサキ(俺は確かにモテたかった…実際ものすごくモテてた…
 でも…ユキノにこんなことをするような奴にモテても嬉しくない!
 気にくわないやつをイジメて喜んでるような奴は大嫌いだ!
 人間的に許せない!)


 マサキはサバイバルガイドのサイトを見ながら
 ホースの先にフックをつける。


マサキ(これなら見えづらいし身体に巻いても痛くない。
 耐久度も十分ある。
 よし!できた…
 細身のユキノなら、制服の下につけてもわからないだろう。)


 ユキノはベッドの上で枕を抱きしめて心を落ち着かせようと頑張る。


ユキノ(マサキさんに任せてしまったけど…
 危ないことをしようとしてるのは分かってる…
 私は何もできることはないの?
 私にできること…心の準備…そして…彼のことを信じる…!)




 その夜、過激派私刑人たちは…


『メール攻撃はちょっと効いたっぽいね』
『話しなかった』
『一緒に帰るのもしなかったね』
『でもまだ教科書見せてもらってるよ?』
『もう宣言した。Mとキスしたお前を許さないって』
『行く?』
『もう行ってもいいかもね』
『Yの存在自体が目障り』

『そろそろ、退場してもらおうか…』


<第8話に続く>





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