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【枕草子】過ぎにし方恋しきもの

【現代語訳】

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過ぎてしまったことが恋しく思い出されるもの。
枯れた葵の葉。雛人形の道具。二藍や葡萄染めなどの布切れが、本の間などに挟まっているのを見つけた時。
また、もらった時に心を動かされた人の手紙を、雨が降ってすることがない日などに探し出したもの。去年の扇子。

【意訳】

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過ぎ去った昔のことを、恋しく思い起こさせるもの。
葵祭の飾りつけに使った、枯れた葵の葉。子供の頃に遊んだ雛人形の道具。二藍や葡萄染めなどの淡い紫色の着物を新調した時の端切れが、本の間などに挟まっているのを見つけた時。
大好きだった人からもらった手紙を、長い雨に降りこめられている日などに探し出して読んでみる。去年使っていた扇子。もうずいぶん昔のことのような気がする。

【雑感】

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説明は少ないのだけど、とても抒情的で美しい文章です。どれも大げさでなく、ささやかなものであるところがいいなと思います。

何気ない昔のことが、恋しく思い出される。二度と戻ることのないものへの懐かしさと愛おしさがつのります。

それだけ年をとったということなのかもしれないけれど、それにしても2020年は予想外で、ずいぶんそういう機会が多かったかもしれません。旅先での思い出の品とか、なかなか会えなくなった友達と撮った写真とか、ふと目にとまるとやるせない気持ちになります。

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