お香

何か書かなきゃ、とは思うけど、書くことがない。文字を打ったり消したりしながら部屋を見回している。目についたもので何か書く。

何年か前、仲のいい友達の影響でお香を買ったことがある。お香。言ってしまえば、いい香りのするお線香。ずっと興味はあったけども、種類は多いし微妙な違いはハッキリ分からないし、テスターの香りと火をつけてからの香りは違うという。ちんぷんかんぷんのまま、友達にオススメを聞いて鵜呑みにして買って帰った。
付属の簡易台座に挿して火を点ける。確かにいい香り。実家で嗅ぎ慣れた白檀に、ちょっと甘さを足したような、落ち着く小洒落た香り。いいじゃん。

お香を立てるための台座がどこかへ消えた。困った。火をつけたお香の端を燃え尽きるまで持ち続けるわけにもいかない。困った。雑貨屋さん行ったらあるかなあ。友達と街をふらふら歩きながら、頭の中に周辺地図を描く。売っていそうな最寄りの雑貨屋さん候補は、大きいショッピングモールの中。ちょっと遠い。

横断歩道の先に見えるは関西おなじみの仏具屋さん。
「お香って、線香立てに立てても良いんかな」「いいんじゃない?」

人生初、仏具屋さん。背筋が伸びる。木の香りが心地良い。仏具、かっこいい。お仏壇、かっこいい。素敵。しかし目当ては仏壇ではない、線香立て。
昔家族が亡くなった時に、ベルコさんが持ってきてくれた手のひらサイズの線香立てがあった。ベルコさんが持ってくるということは、きっとオールジャンル宗派対応してるのだろう。線香立てを持って、ふと考える。「洒落たお香を買わずとも、普通のお線香で良いのでは?」「線香を立てるのに、灰も要るんじゃないか?」

線香立て、特価の線香、線香立てに入れる灰。レジで会計を済ませ、仏壇を見てテンションが上がっている友達に声をかけて家に帰る。さっそくお線香立ててみよう。
線香立てに灰を入れ、線香に火をつけ、挿す。天気の良い昼下り。こたつに潜って線香を焚く。シュール。焚かれる線香を見ながらしばらく笑った。

無料で会員カードを作ったけど、1日1本ずつ焚いたとしてもお線香全然減らないから、当分仏具屋さん行かない。

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