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【実録】40歳バツイチ女がマッチングアプリで年下彼氏に出会うまで(3)

いらっしゃいませ!さえこです。いつもお疲れ様です。今夜もゆるりと読んでいってくださいね。

【実録】シリーズ連載3回目。前回の記事はコチラです☆

【前回までのあらすじ】
39歳バツイチのさえこは、マッチングアプリで知り合った大ウソつきのヒロくんに「実は既婚者なんだ」と告白される。
ショックを受けるも、それから数ヶ月にわたり、別れることができず関係は続いていた。そんなある日、驚きの事態が彼女を襲うーーー

===

彼が既婚者と知って以来、私の心の中にはある種の『被害者意識』が芽生えていた。

胸中を支配していたのは悲しさ、嫉妬、そして憎しみ。

彼の前ではもう二度と心の底から笑えることはないとわかっていた。
そのくせ好きなのだから矛盾している。
真実を知ってしまった今となっては、彼の家族にとって自分が充分に加害者であることも理解していた。

抜けだしたいけれど抜け出せない、泥沼のような恋愛に足を踏み入れてしまっていた……。

騙していた彼に罰を与えてやりたいーーー。
彼の家の郵便ポストに怪文書を投函しようか。それとも、会社に一斉メールを送るほうが良いだろうか。
「CAUTION!! この人は既婚であることを隠してマッチングアプリで独身者に声をかける極悪非道人です!!」って。彼の写真付きでね。

チラシを何百枚も印刷して会社のエントランスで配るのもいいかもしれない。もちろん、涙で顔をグシャグシャに濡らしながら。
人生で一度くらい、そんなドラマチックがあるのも悪くないかも。

なーんてね。

「暗い!暗いよ私。そういうのは、ガラじゃないんだよね」

ひとり呟くと、私はスマホを手にした。
再び、マッチングアプリに登録することにしたのだ。

悪縁は断ち切るのみ!! 要は、彼よりも素敵な人を見つければ良いだけの話である。

今回選んだマッチングアプリは「タップル」だ。
プロフィールを簡単に登録し終えると、男性のプロフィールを吟味する。

「ほぉ~いいじゃん、いいじゃん! カッコいい人がい~っぱい!」

カラ元気もここまでくると哀れであるが…。
軽やかに男性の写真をフリックし、気になる方に「いいかも」を送る。そんな作業を数回繰り返したときのことであった。

「!?」

見慣れた写真が目に入った。

ちょっと……これって………

私は思わず写真を拡大する。

「………ヒロくん………」

まぎれもなく、ウソつき野郎ヒロくんの写真であった。
登録名は「ヒロ」でそのまんま。写真も、かつて私と出会ったときに別のマッチングアプリに登録していたものとそっくり同じであるときた。

あ~~の~~野郎~~!!!

怒りに任せて彼のスマホに電話をかける。

トゥルルル……トゥルルル……

まだ仕事中の時間帯だったが、2コール目で彼は出た。

「さえこ? どうしたの? 電話なんて珍しいね!」

嬉しそうな声出してんじゃねぇよ!! そんな言葉が口から飛び出そうになるのを抑え、私は言った。

「ヒロくんさぁ~、タップルに登録したでしょ」
「は!? してないよ……」
「しらばっくれないでいただけます? とっくに証拠は挙がっているんだよ」

数秒の無言の後、彼は言った。

「それを知ってるってことはさ、さえこも登録したってことでしょ? タップル」

ギクッッ。

「…ちがうよ…。友達が、似てる人がいたって教えてくれて…」
「何言ってんの。バカだなぁさえこは。そこは『ハイ』でいいでしょ。悪いのは僕なのに…」

彼は訥々と語り始めた。
既婚者ということがバレてしまった今となっては、さえこがいつ離れていくかわからないと思っている。本当に愛しているから、その恐怖に耐えられないのだと。

「だからつい、登録しちゃったんだ。ごめん」
「……わかりたくないけど、気持ちは少しだけわかる……」

な、な、なんというバカな女であろうか。これでは彼の手のひらの上で転がされっぱなしだ。

「僕が悪いよ。本当ごめんね。プロフィールは削除しておくから。ね。だから、さえこも削除してね? この通話が終わったら、すぐにだよ?」
「わかった…」
「でもさぁ」
彼はスマホ越しに快活な笑い声を聞かせてから
「なんで僕のこと見つけちゃうの? さえこはホント、面白いし可愛いな。やっぱホント、好きだなぁ」

だから……なんでそういうこと言うんだよ……。つくづく憎たらしい男である。

通話を切ったあと、スマホからタップルをアンインストールしようと思ってやめた。
どうして私が削除しなきゃいけないのだ!!削除するのは彼だけでいいではないか!!ばかばかばか。

次の日は渋谷で会う約束をしていた。性懲りもなくその約束を楽しみにしている自分が情けなかった。

翌朝、タップルのアプリを開くと、そこにヒロくんのプロフィールがまだあった。やっぱり彼も、アプリを消していなかったのだ。

悲しかった。
こんなことにいちいち傷つく毎日を、いったいいつまで過ごさなければならないのだろう。馬鹿馬鹿しい。このままでは身が持たない。ひと月に1歳のイキオイで年を取っていきそうだ。

ーーーあのさぁ。いいかげんにしなよ。あんた「潮時」って言葉、知ってる? 立つ鳥跡を濁しまくり。みっともないって、自分でわかっているんでしょ?

潜在意識の私(これからは苛立ちを込めてセン子って呼ぶことにします)は、いちいちごもっともなことを言ってくる。
わかってる、わかってるよ。それでもそう簡単に行かないのが人間だし、恋ってものじゃないのかよ。バカ野郎~~。

(続く)

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