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マ・ドンソク来日インタビュー【前編】「心地よく演技できる雰囲気が何よりも重要」


マ・ドンソク(写真左)/1971年3月1日生まれ、韓国出身。近年の出演作:『白頭山大噴火』(2019年)、『エターナルズ』(2021年)、『狎鴎亭(アックジョン)スターダム』『犯罪都市 THE ROUNDUP』(ともに2022年)、『バッドランド・ハンターズ』(2024年)ほか
青木崇高(写真右)/1980年3月14日生まれ、 大阪府出身。近年の出演作:NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人」(2022年)、『ゴジラ-1.0』(2023年)ほか。公開待機作に、huluオリジナル『十角館の殺人」、映画『ミッシング』などがある

人気俳優マ・ドンソクがワンパンチで悪党を一掃していく“怪物刑事”、マ・ソクトを演じる韓国映画『犯罪都市』。シリーズ第1作となる『犯罪都市』では地元の暴力団や中国マフィアを相手に三つ巴の戦いを繰り広げ、続く第2作『犯罪都市 THE ROUNDUP』ではベトナム帰りの凶悪犯と死闘を展開。そんなマ・ソクトがシリーズ第3作『犯罪都市 NO WAY OUT』では、新種薬物事件の背後にうごめく日本のヤクザや汚職刑事たちに立ち向かう。

その『犯罪都市 NO WAY OUT』の日本公開を前に、マ・ドンソクが来日。第1作からマ・ソクトを演じ、シリーズのプロデューサーとしても作品にたっぷりの愛情を注いできた彼がシリーズについて語った。しかも、隣にいるのは『犯罪都市 NO WAY OUT』の出演者であり、マ・ソクトと対峙するヤクザのリキを演じた青木崇高。麻薬を横流しした組織員を処理するため日本から韓国にやって来たリキは、日本刀を振り回す極悪非道な男。なりふり構わない凶行を見せつけながら、マ・ソクトの前に立ちはだかることになる。

――青木さんの起用には、プロデューサーであるマ・ドンソクさんの意見も反映されているそうですね。

マ「第3作に日本のキャラクターが登場すると決まった時、日本の俳優さんに演じてほしいと思いました。青木崇高さんの映画は『るろうに剣心』だけでなく、他に何本も見ています。私は俳優であり、プロデューサーでもありますから、映画やドラマを見る時にはプロデューサーの視点で俳優さんたちに注目することがよくあって。青木さんに関しては、その幅の広さが魅力だと感じていました。作品ごとに違った顔を見せているうえに、本物の演技を見せてくれる。しかも、『犯罪都市』のシリーズにはアクションがたくさん出てきますから、難易度の高いアクションをこなせる俳優でなくてはいけません。怪我をすることもあるでしょう。そんな中で思い浮かんだのが、青木さんの存在です」

青木「出演が決まった時は、その場でマネージャーとハイタッチをしました(笑)。“嘘でしょう!?”と、歓喜むき出しでしたね。と同時に、これは大変なことになるなと思って。アクションでしっかり見せるべき役だと感じ、『るろうに剣心』のアクションチームに連絡を取りました。彼らとアクショントレーニングを行い、その映像を韓国にいる制作チームに送ってフィードバックをもらうようにしたんです。その過程で日本刀の使い方など、日本人らしいアクションとこの作品におけるアクションのあり方を探っていったのですが、すごく興味深い経験になりました」

――そうしたやり取りを経て、撮影を迎えたわけですね。

マ「実際にお会いした青木さんは、とにかく人柄が素晴らしくて。とっても楽しい共演でしたし、リキが映画に登場するたびにうれしかったです。アクションシーンでは長い日本刀を振り回しながらの演技になりましたが、凶暴なアクションを見事にやりきってくれました。200%の力を出してくれましたね。とても満足していますし、本当に感謝しています。劇中のマ・ソクトとリキは敵対していますが、実際の私たちはとても仲良し。青木さんが何か困っていることがあれば解決してあげたいと、私はいつも思っていました」

――大絶賛ですね!

マ「隣にいるから褒めました(笑)」

青木「あははは! 僕がいなかったら、違うことを……?(笑)」

――(笑)。マ・ドンソクさんは優しかったですか?

青木「ものすっごく優しかったです。本当に細かいところにまで目を向けてくれて。『撮影で何か気になったこと、困ったことがあったら何でも言ってほしい』とおっしゃってくださいました。“良い作品を作るためには良い環境を作ることが大事”という考えを体現なさっていましたね。そのおかげで、僕にとっては挑戦続きの撮影でしたが、変な緊張は一切なく、チームの一員として200%集中して作品に向き合うことができました」

――“良い作品を作るためには良い環境を作ることが大事”がマ・ドンソクさんの信念なんですね。

マ「俳優にとって、撮影現場はものすごく大切なもの。心地よく演技できる雰囲気が何よりも重要になってきます。気持ちが楽であれば、危険なアクションが多くても怪我はしません。なので、私は監督とコミュニケーションを取りながら、プロデューサーとしてすべきことをしました。それに、私はプロデューサーである以前に青木さんのことがとにかく大好きなので(笑)、すべてをしてあげたいと思っていました。個人的なことも、何もかも。にも関わらず、俳優が現場に行くと困ることは出てきます。“俳優の演技を妨げるものは100通りある”とよく言われますが、大事な台詞を言う時にニワトリが泣き出したり、ヘリコプターが飛んできたり。そういった状況に俳優は打ち勝たなければいけません。なので、なおさら居心地よくいてほしいですし、私の現場ではスタッフもキャストも気分よく仕事ができます。変な人はいないですし、変なことをする人もいません。そんなことをしたら、喧嘩が得意な私が……ね(笑)」

――実際にはどんなケアを?

マ「アクションが多いと、やはりカラダがきつくなってきます。自分の家がある場所以外での撮影ですから、食事もとても大事ですよね。青木さんは牛肉が大好きなので、私は牛肉をたくさんご馳走してあげようと思って頑張りました。会食の場を撮影中に設けたりもして」

青木「そうなんです。ソコギ(牛肉)が好きだと言ったら、焼肉のお店を予約してくださって」

マ「(日本語で)おいしい〜!」

青木「すごくおいしかったです! 撮影現場でも、辛さ控えめの“リキ用メニュー”を用意していただいて。基本的には辛い食べ物も大丈夫なんですが、辛すぎるのは苦手だと申し上げたら気を配ってくださいました。食事以外の面で言うと、マッサージの手配をしてくださったのがありがたかったですね。やはりアクションが多いので」

マ「理学療法士を呼んだんです」

青木「撮影現場にいらしてくださって。オフの時にもマッサージをしてもらいました。あと、漢方も処方していただきましたし、ホテルも快適でしたね。バスタブがあって、カラダをほぐしたり、きちんと休められるのがよかったです」

取材・文=渡邉ひかる text:Hikaru Watanabe
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