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歌手Oさんと結婚したH氏の話

ある時、両親と歩いているところに、
「あれ久しぶり~」
と声をかけられました。

見ると、その人は両親と同年代と思われる女性、、、歌手のOさんでした。

私は全く面識がないのですが、なぜか両親と顔見知りらしく、フランクに世間話を少しして、買い物に行くところだから、と去っていきました。

どういうわけであの人と知り合いなのか親に訊ねると、それはこういうわけなのでした。

両親がまだ若い頃、近所にH氏という男性が住んでいて、同年代ということもあって親しくしていたそうです。

H氏はもの静かでとても真面目な人でしたが、ある日突然、俺は結婚する、と両親を含む友人たちの前で発表したそうです。

「俺は結婚する。歌手のOと結婚する。結婚して仕事を辞めて、彼女のサポートをする。」

皆、唖然。まさに寝耳に水。

結婚のこともそうですが、こんな大人しいヤツが、いつの間に歌手と付き合っていたのか!

「何も仕事を辞めることはないだろう。」
「お前がそんな華々しい人と暮らせるわけがない。」
「考え直せ。お前は騙されている。」

笑。
そんな友人たちの心配と忠告を振り切って、H氏はOさんと結婚。仕事を辞めてしまったのです。

その後、お二人の間にはお子さんが2人産まれました。Oさんは今70歳くらいでしょうか。変わらず元気に歌い続けています。


H氏の結婚を心配した皆が、それまで見ていたOさんは、ステージ上の派手な姿のOさん、だったわけですが、

きっとH氏が見ていたのは、
普段の、日常を営む普段の人としてのOさん、だったのですね。

どちらが良くてどちらが悪い、ということではなく、どちらも紛れもなく、その人のいち側面ですけれど、

でも、

どのあなたを、私は見ようとしているのか。
どの私を、あなたに見てもらうのが心地よいのか。

人と人とのお付き合いというものは全て、日々その選択の連続であるのかもしれません。

両親と立ち話をしていたOさんは、
普段着で、その辺を歩いているおばちゃんと全く変わらない風情でした。
そして両親もまた、
まるで近所の友だちと話し込むような何気なさでした。

H氏のお陰できっと私の両親も、
Oさんの、日常を営む人としての側面を見るようになったのでしょう。

今お話しした、Oさんにばったり出くわした出来事は、実は20年も前のことなのです。そんな昔のことを思い出したのは、Oさんがインタビューされているのを見たからでした。

デビューしてからのことを振り返って、

「呼んでくれれば何処へでも行って歌っうし、帰ってくれば、子どものお世話して、掃除して洗濯して、、、普通に、そんな毎日よ。」

そんなの当たり前じゃないの、とでも言いたそうな笑顔で、そうお話ししていました。

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