LewBees
vo.秀市の短編小説
鎖の街2 1.A naked man「裸の男2」 「ミスター」・・・ ふと見上げると若いウエイトレスが、ポットを大事そうに抱えコーヒーのお替りを勧めている。 せっかくの好意だが、諦めるしか、ないようだ。 視線の先にガイドが自分の車をホテル前に横付けして、運転席から私に向かって、手を振っている。 「Thank you.」 コーヒーを注ごうとしたウエイトレスに、私は軽く手で制し、席を立ちながら言った。 終始、感じが悪かったであろう私に対して、若いウエイトレスは
鎖 の 街 1.A naked man「裸の男」 まったくもっていい加減なところだ、 タイのチェンマイに入国してすでに3日目、このまったりとした時間に馴染むどころか、蒸し暑い気候と、ホテル内禁煙が、さらに苛立ちと焦りを助長させている。 約束の時間になっても現れないガイドは、どういう言い訳をするのか見ものだが、たぶん相当なめられているのだろう。 ホテルの微妙な朝食を済ませ、私は濃いコーヒーをチビリチビリと口につけながら、
2015.8.,22 LIVE BAR・雷神でのライブの模様
継承の記憶 四章 気付かなかったが、かなり雲行が怪しくなってきている、夕立がきそうだ。そう、思った矢先、かなり大粒の雨が降り出してきて、郵便局に着いたころには、ずぶ濡れになっていた。 濡れないように背中に挟めた茶封筒が少し濡れているが、何とか大丈夫のようだ。郵便局で雨宿りしようと思ったが、目的地入り口の小道の上には、長い屋根が続いているのが見える。 ゴールは目の前だ、屋根の下まで自転車を押して走った。 茶封筒は何とか無事だ、やれやれと思いながら、地図を広げる
継承の記憶 三章 どの位、逃げ続けただろうか、まったく時間も場所も検討がつかない。 さっきの駄菓子屋から、だいぶ離れてしまった事は理解していたが、元に戻る事は、至難の技のように思えた。 更に、さっきの悪ガキグループに遭遇しないとも限らない。 とにかく、お使いを早く済ませて、この見知らぬ街から抜け出さないといけなかった。 また誰かに喫茶店の場所を聞かなくてはならない、あたりを見渡すと、ちょっと先に少し大きい道に出れそうな雰囲気があった。 秀一は追手を警戒す
継承の記憶 二章 言われた通り、宿題にしがみついているが、三日前のページから全く進んでいない。すでに昼近くになっていて、辺りの木々から、蝉の声が一段とうるさく感じられる。縁側に置いてある扇風機が、温風に変わり始めた頃は、完全にやる気をなくしてしまった。 「相変わらず進んでないな」 宿題をしているふりをしていたが、すぐに見破られたらしい。 「午後から、配達に行くけどついてくるか?」 「・・・いいよ、友達と野球するから」 「そうか、昼飯は食っていけよ」 この期に及んで机
継承の記憶 一章 巨大な楠木の真下まで来ると、沢山の蝉がしがみついている。 虫取りの網と籠を肩にかけながら、秀一は、意を決して言った。 「今日こそは、通り抜けよう!」 「えー、やっぱり嫌だよ、自分一人で行ってよ!」 そこは、周囲を濠で囲まれた一廓で、子供が立ち入れない、拒むような、淫靡な雰囲気をかもし出していた。 小さな橋を渡った入り口には、ストリップ小屋があり、通りからも透けたネグリジェのまま、出入りする踊り子たちの姿が、見え隠れする。 その先がどう