見出し画像

【小説】珀色の夢 2




 紗絵の目は、バランス良く彩られた弁当を映していなかった。
 友達二人の噂話も、彼女の鼓膜を震わせない。
 眠っているわけでもないのに、意識はあの不思議な夢へと飛んでいた。
 金色の目をした男性。もちろん、会った事は一度も無い。知った顔に似ているわけでもない。目の色こそ金色だが、顔かたちは日本人だった。そんな人が現実に存在しているのかどうかさえ怪しい。もし存在していたとしても、その目はきっと黒いはずだ。
 雑誌のモデルみたいな人だったなぁ。そういえば、白くてゆるめのTシャツで、ベージュのゆったりとしたリネンのパンツ履いてた。シンプルだけど地味にならない感じ、すごく、かっこよかった。何で木登りなんかしたんだろう。あんなかっこいい人に見られちゃって、恥ずかしい。

「ねぇ、聞いてる?」

 急に鼓膜が震えたように感じて、紗絵は椅子から飛び上がりそうになった。

ここから先は

718字
この記事のみ ¥ 100

サポートいただけましたらとても嬉しいです。よろしくお願いします。