【小説】珀色の夢 2
紗絵の目は、バランス良く彩られた弁当を映していなかった。
友達二人の噂話も、彼女の鼓膜を震わせない。
眠っているわけでもないのに、意識はあの不思議な夢へと飛んでいた。
金色の目をした男性。もちろん、会った事は一度も無い。知った顔に似ているわけでもない。目の色こそ金色だが、顔かたちは日本人だった。そんな人が現実に存在しているのかどうかさえ怪しい。もし存在していたとしても、その目はきっと黒いはずだ。
雑誌のモデルみたいな人だったなぁ。そういえば、白くてゆるめのTシャツで、ベージュのゆったりとしたリネンのパンツ履いてた。シンプルだけど地味にならない感じ、すごく、かっこよかった。何で木登りなんかしたんだろう。あんなかっこいい人に見られちゃって、恥ずかしい。
「ねぇ、聞いてる?」
急に鼓膜が震えたように感じて、紗絵は椅子から飛び上がりそうになった。
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