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【小説】珀色の夢 4




 名前を聞けなかった。また会えたのに。
 その後悔が、紗絵の重しとなった。
 授業中にぼうっとしていて先生に怒られる、特別教室に忘れ物をしてしまうなど、重しは彼女の心の動きも体の動きも鈍らせる。
 些細な失敗ばかりなので、周囲から変に思われる事は無かった。
 だからといって、経験と観察に裏打ちされた友人の目はごまかせない。
 昼休みになった途端、由里菜と真衣は連行よろしく紗絵を教室から引っ張り出した。
 渡り廊下を渡って特別教室棟へ向かい、三階の奥、科学室の脇の階段に座り込む。
 二人に左右を固められて、紗絵は身動きが取れなくなった。

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