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しめ鯖の夜

小さな街の小さなビルの2階にある小さな居酒屋で、しめ鯖を食べた。

酒のアテにしめ鯖なんて、なんか渋い。

アテ、なんて言い方もまるで酒呑みみたいだ。

アテってどんな漢字なんだろうか。

やっぱり、つまみよりもアテだよね。もしくは肴。

しめ鯖は、鯖だからもちろん魚なんだけど、同時に肴でもあるわけだ。

まあ、そんなことはどうでもいい。

俺は実はあまりお酒が強くない。というか弱い。

でも、酒呑みへの憧れはある。

『酒場放浪記』とか『酒のほそ道』とかを見ては、ああ、お酒が呑みたいといつも思っている。

で、実際呑むと、ビールやハイボールの1、2杯でもう十分になってしまうんだよね。

だから、しめ鯖なんて好きじゃなかった。

大体、しめるってどんな調理法よ。

焼くとか煮るとかじゃなく、しめるって何。

青魚って、ちょっと生だと怖いんですけど、そのへんは大丈夫なんですか。

そんな不安がぬぐいされず、あまり食べることはなかった。

唐揚げとかフライドポテトとか、そういうのもあるしね。

でも、今宵はしめ鯖。

渋いぜ。

お店のメニューにもおすすめマークがぐりぐりついてるし。

ここはいっとこう。

で、出てきたのが冒頭のしめ鯖です。

絵に描いたようなしめ鯖。

びゅーてぃふる。

山葵と醤油をちょっとつけて、食べてみる。

何これ。

すっごい旨い。

これ、すっごい旨いよ。

しめ鯖の中でも、偏差値62くらいあるやつじゃないか。

程よい酢の酸味と、鯖の濃厚な旨味がマッチ。

これぞ酒のアテ。

憧れていた『酒場放浪記』の世界がついに現実に。

最高に美味しいしめ鯖を噛みしめながら、俺は思ったね。

あったかい白飯が欲しい。

やっぱりご飯だよね。

おわり

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