見出し画像

小話エッセイ/苦手が大好きに変わるとき

偏見の多い生涯を送って来ました。

親兄弟や友達の影響、身勝手な先入観は、
大人になってもなかなか抜けるものではありません。

今回は、そんなハードルを乗り越えて
「苦手/どうでもいい⇒大好き」へと華麗なる変貌を遂げた物事を
4つ厳選してご紹介いたします。


焼海苔やきのり

母の作るお弁当の、蓋裏にへばりついたベタベタの黒い物体。
箸でこそげ落とすのが面倒というだけの代物しろものでした。

けれど違った。
上京してから知った焼海苔やきのりの香り高き美味しさよ!

ぱりぱり、ふやふや、どっちもグー。
ふわりと一枚お味噌汁に浮かべたら星3つアップ間違いなし。お椀を口元に運ぶだけで、広がる磯の薫風に心が踊ります。
納豆との相性の良さなんて神がかり的。
関西の「味付け海苔」は、あれは海苔への冒涜です。


◆毛虫の美しさ

もぞもぞピクピク、どこに潜んでるか分からない。得体のしれない彼らのことが、大の苦手でした。

けれど違った。
数多あまたの写真家やユーチューバーさんが教えてくれた、そのデザインの美しさよ!

まさに天の創りたもうた唯一無二の芸術品。
「好きなように塗ってください」と、真白まっしろな毛虫を渡されても、どんなクリエイターもかないっこない美しさです。


新選組しんせんぐみ

存在自体が、ティーン向けライトノベル(*)みたいな位置づけでした。
沖田総司おきたそうじって、あの夭折ようせつした美少年剣士でしょ。
滅びるものの美しさ、判官はんがんびいきってやつだよね。

けれど違った。
近ごろ読んだ「新選組血風録しんせんぐみけっぷうろく」「燃えよ剣」に登場する隊士たちの生きざまよ!

ちがうんです、沖田総司じゃないんです。
本当にカッコいいのはトシさん(土方歳三)なんです。
だって実物の写真みて? あんな二枚目がニヒルな物言いでバッサバッサと人を(以下略)

(*)ライトノベルと呼ばれる本の面白さを知ったのも、つい最近です。


他力本願たりきほんがん

阿弥陀あみだ様におすがりすれば成仏できるという考え方。

要は神だのみってことでしょう?
ちったぁ自分で頑張れよ!
血気さかんに、そう思っていたものです。

けれど、違った。
テレビで紹介された“歎異抄たんにしょう”(浄土真宗の親鸞しんらんの言葉を伝えた書)を読んでからというもの、価値観が激変!

「自力でなんとか出来る」との過信も、危ういっちゃ危ういですよね。
非僧非俗ひそうひぞくとして市井しせいに身を置き、生涯「悟った」などと言わなかった親鸞しんらんの考え方の、すっかりファンとなりました。


  §  §  §

苦手なものなんて、無いほうがいいに決まってます。

けれど、それが「大好き」に変わった時の喜びって、なかなかオツじゃありませんか。

・・と、そんな小さな幸せを一人焼海苔やきのりとともに噛みしめた本日のランチタイムでした。


※愛があふれて長くなってしまいました。
お目汚し失礼いたしましたm(__)m

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?