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40代で俳優デビューして是枝監督に会うまで

「喋り」と「物書き」だけで食っていける環境は、どうすれば作れるだろう。

人見知りで出不精だからか、自宅内で完結させられる生活を深層心理が求めている。または、沖縄に移住したいという夢があるからかもしれない。

「喋り」は、YouTubeである程度収益が見込める形にはなったが、「物書き」はどうか。

そうだ埼玉で記事を書き、埼玉のメルマガを書き、埼玉を語る本も出版したが、仕事として継続性があるとは言えない。

「物書き」で活躍してる人は、必ずヒット作が一つある。代表作となるものが。

小説執筆の構想は、そうして生まれた。
※現在web小説を他サイトで連載中

仮に、「喋り」と「物書き」でそこそこ食える未来が待っていたとする。すると私は、いよいよ外に出なくなる。たまに頂く映像制作の仕事と、仲間と飲みに行くときくらいだ。

映像制作の現場は、準備から何から毎回大変ではあるが、みんなで一つの目的に向かっていく難しさと楽しさは、一人で喋り、文を書いているだけでは得られない充足感がある。

しかし、この先もずっとその仕事があるかどうかはわからない。例え「喋り」と「物書き」だけで食えるようになっていたとしても、この環境がなくなるのは嫌だ。

なによりエンタメが好きな私としては、みんなでクリエイティブを作っていく環境は保持したい。

どうすれば映像制作の現場に居続けられるか。

そこで出した結論が俳優業だった。演者になってしまえばいい。

私は31歳のときに自主制作で映画を撮ったことがある。そのときもっとも苦労したのが、撮影現場の確保と、キャスティングだった。特に、自分の世代より上の年代をキャスティングするのは大変だ。

ならば、40代男性のキャスティングに悩む若き監督の一助になれるよう、YouTube LIVEをやるとき毎回呼びかけてみた。「全国のインディー監督のみなさん、鷺谷を役者として使ってみませんか」

半年間呼び続けたが、誰からも連絡はなかった。実績もないし、当然といえば当然か。

それなら自分から動くしかない。

オーディションを受けてみよう。

役者募集サイトを見て、ある一つの作品が目に入った。

役柄が詐欺師。

詐欺師といえばお喋り。毎日YouTubeでベラベラ喋っている私だ。もしかしたら、この役ならできるかもしれない。名前もサギタニだし。

運良く書類審査に通ると、ペラ1のオーディション用台本(pdf)が送られてきた。これで実技審査するので覚えてきてください、と。

毎日一人で練習し、オーディション会場に向かって愕然とした。

人が多い。

こんなにいるの。

しかし、私の胡散臭さは本物だった。見事採用された。

撮影はとても楽しかった。

役者として現場に行くのは初めてだったから緊張の連続ではあったが楽しかった。やはり映像制作の現場に関われるのは楽しい。

1月に、早稲田大学の大隈講堂で上映会があった。

是枝監督も来ていた。壇上で一緒に写真撮影もした。

左 : 是枝裕和監督 帽子 : サギ師

この作品は、早稲田大学の映像制作実習の一環で、講師が是枝さんなのだ。壇上で自分の拙い演技にも言及してくれ、誉めてくれた。

『ボケてくれてありがとう』
鈴木隆恵監督作 / 監修・是枝裕和、篠崎誠、土田環、高木創

未来のことを考えるとき、人はお金の心配をする。

私は、自分の楽しさが心配だった。今後、もっと楽しく生きられるか。昨年より、一昨年より、30代より20代より楽しく生きられるか。

「それはお金に余裕がある奴の考え方だ」と言われるかもしれないが、全くそんなことはない。だから今も慌てて投資の勉強をしている毎日だ。限られた原資を可能な限り運用しなければならないから。

それも全て、楽しい毎日を作るためだ。お金があるから楽しいのではなく、楽しいことをするのにお金が必要なのだ。

やりたいことはある。その場所がないなら作る。作れなそうなら、できそうな場所に飛び込んでいく。

昨年は、そんなチャレンジが出来たいい一年だった。これがこの先どう実を結ぶか、そんなものは分からない。もう40歳を過ぎているし、明日死ぬかもしれないし、いつ大病にかかるか、どうせ考えても答えは出やしない。

ならやるしかない。やりたいことを。

一秒も惜しまず。

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