「漢字オーディション『憩』」【ショートショート】
今回の漢字オーディションは難航していた。今回募集するのは、『休けい』の『けい』の字
早々に、『自』と『心』の合格は決まった。息を整え肉体と精神を休めるのが休けいだからだ。
しかし肝心の、大事なトップを飾るパートが決まらなかった。
『自』も『心』もソロ活動で人気のあるメンバーで、文字通り"息"のあう二人だが、互いに自尊心や自立心のある我が強いタイプであるが故、二人に負けないパートが必要だった。
さらには『心』はベースパートを『自』はライトパートを希望しており、お客さんの目に触れる一画目を担うレフトパートを募集するということも難航する要因だ。
審査員たちは小一時間ほど悩んでした。
「『京』でいいんじゃないですか?都感というか、そのどっしりさで言ったら『自』や『心』に負けてませんよ」
「まあな、でもな『京』はシティ感が強すぎるよ。この字はまったりした感じの漢字だからな」
「それなら『圭』なんかどうですか?まったりさやナチュラルさでいったら、土に土ですよ。土なら休の木とも相性がいい」
「『圭』は『自』と並ぶとなー、横画多くて、見栄えが良くないんだよ」
「ケイしばりやめます?すこしくらい読み方違くても何とかなりますし」
「そうですか、漸と暫とかもありましたしねー」
「それではウチの『香』とかどうですか?『自』や『心』にも負けてないですよバランスは悪くないでしょ」
「そうですね、少し画数多いですけど社長がいうなら」
難航してたのもあり、社長のゴリ押しで、『香』に決まりかけた。
そこに、突然、会議室の扉が開いた。
「失礼しまーす。バイトの面接に来ました。あれ?お取り込み中すか?」
「会議中だが」
「あーすんません、間違えました。『氏』ってどこすか?」
「『氏』さんは上の階だ!」
「あざす」
「君、『氏』さんは高貴なお方だぞ、そんな態度でなめているのか!」
「いや、知らないっすよ、働く気なかったんすけど、『氏』っていう偉いさんが金出すしいるだけでいいから来てくれって言うんで来たんすよ、すみません、邪魔しました〜」
「待て、何かの縁だし、『氏』さんが見込んだんだ、君にしよう!」
審査員長が急に立ち上がった!周りの審査員たちも驚いている
「何がすか?」
委員長は資料を見せた
「うわー『自』と『心』と一緒っすか?!俺、『舌』っすよ。いいんすか?」
「『舌』くん、よろしくな。この仕事もまったりしてくれればいい。それで『氏』との契約金の倍をだす。その代わり『氏』との約束はなしだ」
「マジ?倍!!ノッた」
審査員たちがホワイトボードに大きく書く
「『香』よりもシンプルでバランスも良い『憩』これだ!!!」
こうして、『休憩』が完成した。
舌というインパクトのある器用で、『休憩』は戦慄なデビューを飾った。出来上がってみれば、息があがると舌を出して休むので意味も通り、我の強い『自』と『心』を中和するようにゆるい『舌』がいい働きをしていた。
ちなみに、『舌』は『氏』ともちゃっかり合流し『舐める』の方でも活躍した。
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