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#01 箸取って!

はじめに

よく、失語症って何??と聞かれます。
どう説明すると、オブラートに包みながら、ノンフィクションを伝えられるか考えた。

検索をすると、「言語障がいの一種」「言語機能が失われる」と表記されている。私たちの生活とは遠い言葉が並んでいる。

多くの方に、もっと身近に失語症を知って貰うため、失語症をもつ父との会話をノンフィクションでショートに書きます。

日曜の夜ご飯

今日は日曜日なので、家族揃って夜ご飯を食べる。

日曜の夜は楽しく、美味しい夕食が食べたい。
新たな1週間のスタートへ向けて!

平日は塾を経営する母と一緒に夕食を食べられるのは、家族にとって最高のご褒美だ。

今日のメニューは"キムチ鍋"

寒い冬に家族で団らんしながら食べる鍋は美味しい。

「いただきます」声を合わせ、食べ始めようとする。

パパがご飯を食べ始めてない事に皆が気づく。
どうしたんだろう??

パパ:取って

皆:んー???(なんの事か本当にわからない)

パパ:は…

皆:なんだろう??はな、はら、歯…(家族は考えます)

母:箸でしょ!!

パパ:そ。それ

末っ子:はい、どうぞ!
           (ありがとう)言わないと渡さないよ!!

パパ:…

末っ子:あから始まるやつだよ。あ…?

パパ:あ……………ありがとう

箸が、無事に父の手へ行き着く。
皆が箸を持ち、もう一度「いただきます」が始まる。

【完】

父が失語症を持つようになってから、家では「おはよう」「ありがとう」「ごめんね」など小さな会話を大切にするようになった。長い文章が難しいので、短い文章を頑張って言ってもらう。そして、言える言葉を1つでも増やしていく。

家でネットとばかり向き合っていないだろうか。家族の会話にはスマホからは感じられない温かさが感じられる。反抗期の時だって、親から「行ってらっしゃい」「おかえり」「ありがとう」と言われると、正直恥ずかしくて、でも嬉しくて、顔がにやけてしまう。

どんな家庭でも、家族との小さな会話を大切にして欲しい。


Saho.F   02

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