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両手にトカレフ

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルーの二冊を読んで、ブレイディみかこさんの文体が好きだなと思って図書館で予約してた本。
今日は移動の多い仕事だったので、電車の中とアポ待ちの時間で一気に読んだ。

イギリスの中学生ミアは薬物&男性依存症の母と小学生の弟と暮らすヤングケアラーで、「ソーシャル」の支援を受けている。
※ソーシャルワーカー的な支援者をミアは「ソーシャル」と呼んで、ソーシャルの前ではソーシャル受けする子どもになりきる。

みかこさんの描く中学生像は、(「ぼくは〜」でご子息を書かれていた時も感じたが)等身大でありのままで、あたかも目の前にミアがいるような感覚を覚える。

繊細に物事をみつめ正しく心を動かし、傷つきつつも勇敢に前を向く。周りの大人たちよりもよっぽど物事を深く洞察している。


だからこそ、弱い大人たちがその隙につけ入る。ソーシャルだって、意図せずともつけ入る。そして彼らちいさな大人たちは、子どもらしく振る舞うことがふつうの世界すら知らずに、大人よりも大人になっていく。

ミアの救いは、親でもソーシャルでもなく、自分自身を信じること、自分の存在の中に友人を見出すことだったように思えた。

中学生は思っているよりずっとずっと大人だ。
大人はそれに甘えてはいけないし、子どもでいられる自由を奪ってはならない。

エピローグが良くて、電車の中で涙が溢れた。

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