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LDHは世界のエンタメになにを見るか?「バトルオブトーキョー」しか勝たんという話。

「君はバトルオブトーキョーを見たか。」
この1年間、ことあるごとに私は人に問うて来た。
「これを見てくれ……」とことあるごとにYouTubeリンクを送り続けて来た。
そして自粛生活中、プロジェクターを手にした私は延々と同じMVを見続けている。

それが、EXILEや三代目JsoulBrothersが所属するエンタメ会社・LDHが仕掛けるプロジェクト「BATTLE OF TOKYO」だ。

"俺たちの考えた最強のギャング&ヤンキー"が大量放出する実写コンテンツ・HiGH&LOWに続くLDHが仕掛ける総合エンタテインメント・プロジェクトとして、昨年2019年の7月に「BATTLE OF TOKYO」はリリースされた。
1枚のアルバムと6本のMV、4daysのライブで構成されている「BATTLE OF TOKYO」は、アニメ漫画オタクの思春期を送って来た私の心を捉えて話さなかった……。
EXILEにも三代目にもとりわけハマることのなかった私は、1年前にこの「BATTLE OF TOKYO」を見てしまったおかげで「LDHが見ようとしている世界」への好奇心に駆られ続けている……。布教すべく話をしたい。

「BATTLE OF TOKYO」とは何か?

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引用:Amazonより

「BATTLE OF TOKYO」を一言で言うと、「同事務所のグループが闘う」設定のコンテンツだ。
LDH内の若手グループがそれぞれ独自の設定を背負ってバトルする、という構図で展開される一連のコンテンツ。(楽曲・MV・ライブ)

LDHグループにはEXILE、三代目に続いて、GENERATIONS、THE RAMPAGE、FANTASTICS、BALLISTIK BOYZの4つのグループがデビューしており、彼らを総称して「Jr.EXILE世代」と公称し、それらを対で闘わせる。それが「BATTLE OF TOKYO」だ。
「GENERATIONS vs THE RAMPAGE」「THE RAMPAGE vs  FANTASTICS」……と、組み合わせ別に6つの楽曲とMVが公開されている。
6本のMVを引っさげて、昨年7月に「Jr.EXILE世代」が総出演するライブが幕張メッセで4days行われた。

施策としては既存グループファンに次々にデビューする若手グループを認知してもらい、グループを横断してのファンを作る狙いが大きいだろう。
私がこれらを知ることになったのはたまたま仕事でTHE RAMPAGEのメンバーを覚える機会があり、そのときに「GENERATIONS vs THE RAMPAGE」のMVをほんの出来心で再生したことがきっかけだった。

MV再生数秒でその異変に気づき、「一体このシーンに何が起きているんだ……?」と心がざわめき、そこに深い深い沼があることを一瞬で悟り、怖くなってMV再生数分でそっと画面を閉じたのだった……(その後狂ったように見ている)

【スゴイその1】近年のJ-popでは見ることができない金のかけ方

とにかく1本でもMVを見てもらえば一目瞭然だが、もう第一声はこれに尽きる。

「金がかかりすぎている!!!!!!」

8分ほどのMVにこれでもか!と多様されている、およそ現実世界では再現不可能なCGの数々……。見たことのないコロシアムに、サイバーパンクな廃墟。空飛ぶ宇宙船に輝く空………。

(ちなみに私が一番好きなのはコレ。ヤンキーxサイバーパンクって言う見たことない世界観をやってのける。なにそれ、はやく2時間映画で見せて!)

いや、いくら掛けたのよこのMVに。1本10億はかかってるんじゃないか…?と素人目にも驚き飛び跳ねる豪華絢爛なCGの数々……
世界市場に躍り出ているK-popならまだしも、国内需要でなんとか成り立っているJ-pop界でこんなに豪華なMVがあるのか……?と初見で戸惑いを隠せなかった。

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(なんだこのセット・・・全部CGなのでは・・・?こわすぎる・・・)
引用:THE RAMPAGE from EXILE TRIBE vs BALLISTIK BOYZ from EXILE TRIBE / Dead or Alive

LDHは、かのHIGH&LOWで数十億円という日本映画屈指の予算を使い、スーパー豪華なアクションに美術セットを使った「ヤンキー&ギャングのアクション映画」を作っているのは説明するまでもないだろう。(ハイローに関わっていたスタイリストに聞くところ、血で汚れるシャツ1枚もイブサンローランだったのだとか……)
それほどまでにコンテンツへお金が注げるのは、日本全国にスクールを持つEXPGというダンススクールの月謝システムがあってこそだと推測するが、とにかくLDHコンテンツのお金のかけかたはすごい。
中でも「BATTLE OF TOKYO」はすごすぎる。

【結論その1】とにかく金がかかっている豪華なコンテンツが無料で見られるんだから、「BATTLE OF TOKYO」を見ろ。

【スゴイその2】少年漫画的な中二病的な一度はみんな憧れた設定のるつぼ


(謎にゴシックファンタジー的な、V系的な世界観のMV。月に宮殿に鎖に……なんで???)

そんなふんだんに桁外れな予算を使った「BATTLE OF TOKYO」。
グループ対抗で闘う、という単純な設定だが、単純に拳で血まみれになってヤンキーみたいに闘うのではない。その闘いの設定がオタク心をくすぐるようにできているのだ……。
「BATTLE OF TOKYO」の公式YouTubeはこうなっている。

「BATTLE OF TOKYO」は、HiGH&LOWに続くLDHが仕掛ける総合エンタテインメント・プロジェクト。GENERATIONS、THE RAMPAGE、FANTASTICS、BALLISTIK BOYZらJr.EXILE世代が中心のプロジェクトで、現実世界と別次元のユニバースに存在するTOKYOとのパラレルワールドで新たな物語が繰り広げられる。BATTLE OF TOKYO公式YouTube概要欄より

はい。
現実世界と別次元のユニバースに存在するTOKYOとのパラレルワールドで新たな物語が繰り広げられる。
はい?

現実世界と別次元のユニバースに存在するTOKYOとのパラレルワールド
とは……?

もう設定からファンタジー中二病炸裂のワードに「一体どうしたの……?」と思わざるを得ない。

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(なんの前触れもなく飛び出す謎設定の数々)
引用:GENERATIONS from EXILE TRIBE vs THE RAMPAGE from EXILE TRIBE / SHOOT IT OUT

そう。この「BATTLE OF TOKYO」でいう"闘い"とは、少年漫画的な世界線の中に入れ子になっている構図なのだ。
ここでいう「現実世界」は、「Jr.EXILE世代」の各チームそのままの設定。
別次元の、というのが「BATTLE OF TOKYO」の中で活かされる各メンバーの持つ別設定となっている。
要は各メンバーが、パラレルワールドでの名前と設定を持ち、それを演じているのだ。

各メンバー(全グループ総勢38名)は、それぞれ実名の他に「BATTLE OF TOKYO」世界では設定と名前を持つことになる。
また、グループ名も「BATTLE OF TOKYO」内の設定を持っている。
(ややこしいので以下BOTで)

一例として紹介すると、3人のボーカル・13人のパフォーマーからなるグループ「THE RAMPAGE」のBOTネームは「ROWDY SHOWGUN」。

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(THE RAMPAGE改め、「ROWDY SHOWGUN」)
引用:「BATTLE OF TOKYO」公式サイト

暴れまわる用心棒、という設定で公式設定は下記のようになっている。

「欲」と「力」が支配する超TOKYOの歓楽空間を守る最強の用心棒集団 「個」を大切に「和」を乱すモノを排除する

またメンバーそれぞれにも名前が。ボーカル川村壱馬には、LUPUS(ラテン語で狼)同じくボーカル・吉野北人にはLUCAS(フランス読み)……など、全てのメンバーに別名が付いている。

(こんな感じで全員名前がついている・・・他グルも参考までに貼るとこんな感じ・・・)

GENERATIONSの設定はMAD JESTERS(幻影泥棒集団)
FANTASTICSの設定はAstro9(トラブルシューター集団)
BALLISTIK BOYZの設定はJIGGY BOYS(謎めいた集団)
となっており、どう考えても厨二心をくすぐる設定。

そして彼らは未来の東京である「新TOKYO」「超TOKYO」に分かれ、彼らが望む都市の「和」を実現するため、「多重郷次元」と呼ばれる次元の中で「バビロニウム」「力」を巡り闘うのだ。(はて・・・?全然意味がわからない……)

LDHはハイローでやってのけた「アニメ的なあるある設定」を「原作を使うことなく」「生身の人間で」「いきなり」やることを仕掛けてきたのだ……。

結論その2:アニメ的背景理解能力が試されるコンテンツ「BATTLE OF TOKYO」を見ろ。

【解説とまとめ】なぜこんな巨大コンテンツを作っているのか?


1年まえ。MVを全て見終えた私は震え、「なんだってこんなものを作ったんだ………!!!!!!!!!!!!」と床を叩かずにはいられなかった。

なんで?どうして?こんなややこしくて?オタクにしか通じなさそうな?お金と設定がめちゃくちゃかかるコンテンツを?LDHは作ったのか???????????????(実際にYouTubeのコメ欄を見ると若い既存ファンからは『意味わからん』とも言われている)

疑問でしかない。

そして答えは簡単にでた。もうこの一つでしかない。

LDHが「世界で闘うため」だ。

LDHはグローバル市場を見ている。
LDH WORLDというグローバル組織を作り、LDH USA、LDH ASIA、LDH EUROPEを構え、m-floのVERBALをエグゼクティブプロデューサーに、LDF EUROPEにはEDMシーンのDJ・アフロジャックを任命。
LDHにはNIGOにm-flo、昨年にはmiyaviも加入し、グローバル視座を持つミュージシャンやクリエイターをどんどん取り込んでいっている。

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引用:https://www.ldh.co.jp/world/

ご存知のように今ビルボードチャートを筆頭に世界の音楽のトレンドはアジアに注目が集まってきている。
K-popアイドル・BTSのグローバル市場での台頭に、アジアHIPHOPクルー88risingの活躍もこの数年の間に起きたことだ。

日本のエンタメコンテンツ輸出はアニメ・漫画を筆頭に関連コンテンツがときたまヒットするが、韓国のような国策ではないため、なかなか天井をぶち破ることは難しさがある。
K-popという国を挙げての一大産業の波が日本にも大きな渦となって押し寄せる中、K-popシーンに迎合する日本のアイドルも多い。
もちろんK-popは素晴らしいし私も好きだ。彼らの華々しい活躍を見て「世界に行きたい」と視座が高まったアイドルも多くいる。けれど、本当に国の壁をぶち破りたいならば、迎合しても意味がない。
その国独自の感性や美的感覚にグローバルなクリエイティブトレンドを融合させていくことが大切なんじゃないかと常々考えている。

K-popもアメリカ的ポップスに独自の美意識が練りこまれているからこそ面白い。
その感覚を日本で再現するのであれば「アニメや漫画」で培われた感性を存分に音楽シーンと融合することでしかないのではなかろうか。
OTAKU・KAWAII・MOE。日本から輸出されていった言語はサブカルチャーとの親和性が高い。グローバルに適応されていったOTAKU的感覚をあらゆるエンタメで拡張していくことこそが国の壁をぶち破る施策なのではなかろうか……。

何を言いたいかと言うと、「BOT」は完全にそれでしかない。アニメの中で活かされてきた設定を詰め込んだ三次元音楽コンテンツ。
ちなみに「BOT」の製作陣には、アニメ・エウレカセブンや攻殻機動隊などのSFアニメ脚本を多数手がけた佐藤大氏が入っている。
「BOT」が特集されていた月刊EXILEでのHIRO氏と佐藤大氏の対談では設定を決める中でアニメを作るのと同じような考え方で作った、という風に書かれていた。実際に、メンバー1人1人にヒアリングし、キャラ作りをしていったと言う。
アニメは国境を超えうるコンテンツ。LDHは、「世界で闘う」ために「OTAKU」を味方につけたのだ。
(これは余談だが、佐藤大氏がメンバーが設定をヒアリングする中で「生き別れの妹がいる」設定を望んだメンバーが何名かいたって話しめちゃくちゃ面白い。二次元あるある設定の一つだし、LDH的な男子の中でもそういう設定への萌えや憧れがあるというのが興味深い)


LDH、ひいてはEXILEといえばマイルドヤンキー御用達グループとして私が地元(鳥取)で高校生をしていた頃、EXILEの追加メンバー・TAKAHIRO全盛期で切ない道ならぬ恋心を歌った歌「Te Amo」がヒットしていた。同時代には湘南乃風や加藤ミリヤが流行っていて、クラスメイトが和製HIPHOP&レゲエをカラオケで歌う中私はニコニコ動画のボカロ替え歌を歌っていた。アニメと漫画とインターネットが大好きで、声優の声の聞き分けとアニメ制作会社の見極めに魂を注いでいた私の人生の中に「LDHグループ」が付け入る隙は当時一切なかった。

のにだ。

それから10年ほどの時を経て、マイルドヤンキーイメージが強かったLDH集団は、「アニメファンダムを取り込もうとする巨大コンテンツ」として君臨していたのだった。
見据える先は、世界市場。

もちろん壁はめちゃくちゃに高い。言語の壁もあるし、 ファンダムにどうアクセスしていくかという問題もある。そもそも個々人のメンバーがどれだけその視座を共有できているのか?という疑問もある。
私はただのいちファンとして見守ることと発信することしかできないが、超えづらい壁ほど燃えるのだ。生きてる限り、LDHが見たい世界を見せて欲しい。

そんなわけで「BOT」が好きすぎて自粛期間中毎日見て、コンテンツリリースから1年越しに布教したくてnoteを書くと言う事態に陥りました。。
興味持ったらぜひ、、見てみてください・・・

あとLDHさん、昨年突如急に沼落ちし、MVリリースから1年経つ現在も、ライブDVDもリリースされず、「BOT」に関してはMV見る以外のことができないの辛いです・・・
それ以上の情報も追加コンテンツもでていなく、あの・・・待ってるのでDVD出してくれませんか・・・・・・?めちゃくちゃ待ってるし布教するので・・・お願いします。。。。。。。。。。。。。


サムネイル:「BATTLE OF TOKYO」公式Twitterより引用

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