歌がきっかけで、スペイン語を勉強しはじめた話
教科書のページをめくって読んでいると、
初めて学ぶ言語のはずなのに時おり懐かしい単語が出てくる。
「”Comida”は、”料理”って意味なのね......」
「あれ? どこかで聞いたことある単語だなぁ」 「あ、そうだ。 あの曲の歌詞に出てきてた!」
聞いたことのある単語を見つけたら、
すぐ教科書をほっぽり出してスマホに持ち替え、YouTubeで歌を再生する。
スペイン語を勉強したいと思ったきっかけは、
音楽だった。
自分のスマホを持ったばかりの高校生時代、暇さえあればYouTubeで音楽を聴いていた。
友達のあいだで流行っていたJpopも英語の授業で 聞いた洋楽も好きだったけれど、一番好きだったのが、偶然出会ったアラブ音楽だった。
今振り返れば、ドレミファソラシドのどれにも当てはまらない、自分の知らない音同士が重なりあって深みのあるメロディーができるところに惹かれたのだと思う。
こうしてほぼ毎日のようにアラブ音楽のタクシーム(即興演奏のこと)やアンサンブルを聴いていたら、ある日おすすめ欄に、スペイン語の歌が出てきた。
そのときに出会ったある一曲が、
どうしても忘れられなかった。
その曲の名前は『Los Guisados de la Berenjena』。
スペイン系ユダヤ人・セファルディムの人々の間で受け継がれてきた曲だという。
”Guisados”は、”シチュー、煮物”を表す単語で、”Berenjena”は”茄子”。
直訳すると「茄子の煮物」という意味になる
らしい。
「茄子の煮物」と聞くとつい生姜と醤油とみりんで煮付けたものを連想してしまうけれど、この歌には見たことも聞いたこともない料理が7つも出てくる。
くりぬいた茄子の中にハーブと米を詰めて煮込んだ「ドルマ」のほかにも、トマトと茄子の炒めものや、茄子を細切れにしてオリーブオイルをかけたサラダのようなものなど、歌が進むにつれてどんどん料理がテーブルに並べられていく。
テーブルの周りには人が集まってきて、おじさんが酒だ、酒だとワインを飲んでいたり、ご近所さんがたくさんオリーブオイルを持ってきたりと賑やかになっていく。
聞いているだけでおなかがすいてきて、今から誰かとおいしいものを食べよう、なんてこともないいつも通りの話をしようと思わせてくれる不思議な曲だ。
私がちょっとだけこの歌について紹介できたのは、スマホの翻訳機能のおかげ。スペイン語の歌詞を
英語に訳したものを、さらに日本語に訳すという「重訳」のプロセスがなかったら、このエッセイは書けなかったと思う。
そんな、一見とても便利そうな重訳にも、欠点が
あった。
別の言語だと、
原文のニュアンスを表現しきることができない。
じゃあ、どうしたらいいんだろう……?
そうだ。
私がスペイン語と、
セファルディムの人が使っているラディーノ語を
勉強してみるのはどうかな。
そんな感じで、
私は今年からスペイン語を学びはじめた。
ラディーノ語は、私が調べた限りでは文法書などが売っていないので 勉強法はまだ考え中。
『Los Guisados de la Berenjena』などの、
スペインで歌われていた歌の歌詞を原文のまま
理解できるようになる。
そして、意味を考えながら歌えるようになる。
これが、私の今の目標です。
#今年学びたいこと
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