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マンガ『宝石の国』100話までの感想(ネタバレあり)

・仏教について詳しい知識があるわけではないので、「煩悩」「悟り」「地獄」「菩薩」「仏」などのいわゆる仏教用語も、本来の意味などは調べずに、普段使用する感覚で使用してます。ご了承ください…!

・あと、めちゃめちゃネタバレ&あらすじも記載しているので、お気を付けください!

1.「宝石の国」は読者にも強制的に悟りを開かせるマンガ

のような気がする…
まだ完結していないからアレだけど

無料期間に100話一気読みしてからちょっと色々考えさせられて体調が悪い
(単なる寝不足の可能性あり)

Twitterで「これは地獄だ」「いや地獄じゃない」
「いずれにせよ、えぐられるから健康な精神状態のときに読むべきだ」
など
色々事前情報を得ていたけど、ほんとそのとおり、かなりメンタルにくる

アニメは元々観てたけど、そのときも原作読んでる人たちが
「いちばんきれいなとこまでで終わってる」と書いていた
そのとおりアニメになっていない、マンガ終盤の部分が、本当に、苦しい


2.この物語は少なくとも「フォス(※このマンガの主人公)」にとっての"地獄"である

と、思っている。現在連載されてる100話までの時点において。

このマンガでは・・・

人間が滅びたあとの世界において
①成仏し損ねた魂たちが「月人」となり月で暮らしている

②人間の骨にあたるものが、鉱物と混ざり合い、気の遠くなるような年月を経て、稀に「鉱物生命体(人間型の宝石)」として誕生し、地球の陸上に暮らしている
(※その宝石たちを愛し、教育し、統率するのは、人間が生み出した装置である「金剛」という人型の機械)

③人間の肉にあたるものが、クラゲのような生命体となって地球の海に暮らしている

という設定になっている。

フォス(=この物語の主人公・本名「フォスフォフィライト」)の目線で起こったことをまとめてみた

<フォスに起こった出来事>
・地球において鉱物生命体として生まれる
・寿命がない(死ねない
・体が欠けるたびに記憶などは一部消えたりする、が、死なない
・他の鉱物生命体と違い、出来が悪いとされ、仕事を与えられず過ごしていた

・月人たちの画策により、フォスは「(疑似的な)人間」へと成長できるように体組成などを組み替えさせられた
月人たちは「人間」もしくは「菩薩(仏様)」が祈ることによって、やっと成仏できるため

・そのためフォスだけは、他の鉱物生命体とは異なり「人間的な感情」を強く植え付けられてしまった
(愛されたい気持ち、愛されないことへの絶望、憎しみ、攻撃的な心、などなど・・・)

・その「愛されたい、必要とされたい気持ち」などが満たされないことにより、フォスは暴走、他の鉱物生命体などを巻き込んで争いがおこる

・いろいろあって、1万年の間、フォスは隔絶されて強制的に悟りを開かされることになる。孤独・苦痛のなか、地球でただひとり生き続けた
(その1万年の間、元仲間の鉱物生命体や、月人、クラゲたちはみんな月にいって楽しく暮らしている)

1万年後、悟りを開き菩薩(仏様?)の姿となったフォスは、他の月人や鉱物生命体などを成仏させるために、祈らされた
・結果、他の生命体は全て成仏し、世界には孤独なフォス(姿は仏様)だけが残った
・そして今後もずっとフォスだけは、死ねない(成仏できない)

・・・・いや、えぐすぎるのでは・・・!?
ほんと書いてて具合悪くなってきた・・・

「死ねない体」「消えない記憶」「人間に根源的にある執着」
悟りを開いて菩薩の形になったとはいえ、これらを持ったまま、
今後も1人永遠に生きなければならない苦痛・・・考えただけで、倒れそう

※ジョジョ2部のカーズのエピソードがトラウマの人間なので・・・


3.読者は「フォスへの嫌悪感」を抱かざるを得ない、だが「読者=フォス」である

宝石の国を読んだ人は、大なり小なりフォスへの嫌悪感を抱かざるをえないと思う

・最初はかわいくてよかったのに、途中から嫌な奴になった
・フォスはバカだよね、すべて無くしてから気づくなんて
・もっと他の生命体に優しくなればよかったのに
・目的と手段をはき違えて、自分を育ててくれた先生を壊そうとするなんて
・愛されたいなら、愛されるように振る舞えばいいのに
・自分だけの正義感を振りかざして、世界をめちゃめちゃにした

Twitterでもこんな感じのフォスへの感想を読んだりしたし、
自分も多かれ少なかれ
「フォスやりすぎだろ・・・」「ここで●●が手を差し伸べてくれたんだから、こざかしいことしなくていいのに・・・!」とか思って読んでた

でも、この「宝石の国」においては、
フォスただ一人が人間(※正確には疑似的な人間)にさせられたという構造

作者の市川春子先生は
「読んでるお前も、(その嫌悪感を抱いた)フォスと一緒だよ」と言ってるような気がする

人は人である限り、根源的な感情・欲求を手放すことはできない
つまり人が人である限り、争いはなくなることはない、

そんなことを改めてまざまざと、突き付けられたマンガだった
別にそれ自体が悪いことではない(と思いたい)けど

「お前だけが特別だと思うなよ」
「お前だけが正しいと思うなよ」
「それはお前が考えるお前のための正義だ」
「お前は一人でみんなのためにやった気になってるけど、ちがう」
「お前のせいで我慢してる人がいるんだ」
「すべてはお前のエゴだ」

だれか一人でも「自分は正義だ」と思って行動する限り
「争い」も「憎しみ」もなくならないよね
「好き」な気持ちや「愛されたい」気持ちも消すことはできないんだから

いろんなエピソードの中で繰り広げられる、上述のような内容を
「自分のこととして捉える」か
「単にマンガの中の、フォスという疑似的人間が突き付けられている話」
と割り切って流し読みするか
・・・でえぐられ方はだいぶ変わってくるけれど

かなり削られる、ただ、大事なものに気付かされる話だなぁと
なので、マンガとしてはすごく好き。ただ、読むと体調が悪くなる可能性がある(笑)


4.最終回は108話?

現在100話まで連載されている「宝石の国」は
「108話が最終回では?」と予想されている、らしい。

※108が一般的に煩悩(人間が手放せない、感情・執着などのこと)の数とされているので

かなりガチガチの仏教要素を下敷きにしてるマンガなので、それもありそうだし、そうなったらホント綺麗だなぁ

<補足感想>
・シンシャとフォスの関係、むごすぎる
・カンゴームとフォスの関係、むごすぎる

これに関しては、ここまでする必要あります?市川先生…という感情になる
けど、書かなきゃいけなかったんだろうなぁ…

シンシャの言葉、カンゴームの言葉を思い出すだけで、ほんと苦しくなる
フォスと違って、その二人が本当に楽しく暮らしている描写も含めて…



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