1. 緑深い山奥にて

ワタシは雑草の精霊の王である。

ある時、1人の娘がワタシが暮らす深い山に迷い込んできた。
娘が所属するシン・雑草部の『ガチャで運よく毟られない場所で生き生きと生活している雑草を探せ』という課題の調査のためにやってきたようだ。

どうやら娘は、山の植物が雑草と呼べるのか悩んでいるうちに歩き回ってしまい、帰る道が分からなくなって途方に暮れてしまったようだ。

娘にはワタシの姿は見えないので、雑草オーラでそんな彼女を山の麓まで導いた。
無事、山の麓までたどり着いた娘は、こちらを振り向いてニコリと笑った。
ワタシが見えているのだろうか。いや、そんなはずはない。

ワタシは娘の笑顔の意味を知りたくて、人間界へついていくことにした。

2. 人間界にて

人間界へ降臨したワタシは、相変わらず引っこ抜かれない雑草を探し歩いている娘のあとをついてまわるようになった。最近では、ひっこぬくのがめんどくさい場所なら、場所ガチャ成功かも！と、溝に埋まりながらはえている草ばかり写真に撮っているようだ。

そんなこんなで、ワタシも人間界で暮らすうちに色々な事がわかってきた。

整えられた土にたっぷりの栄養、太陽の当たる気持ちいい窓辺。虫がつかないように毎朝シャワーをしてもらえるという素晴らしいワンダフォーな環境で暮らす同胞がたくさんいることを！
かくゆう、娘のベランダにもそんなワンダフォーな同胞がたくさんいるのだ。

でも、そんな娘も、なぜかベランダの植物を引っこ抜いているのだ。
引っこ抜かれない植物を探し街を歩きまわっているというのに！！

しかも娘をよく観察していると、同じプランターの中で生きている植物でも、引っこ抜かない植物Aと引っこ抜く植物Bがあるようだ。
いったい違いはなんなのだろか。。。

3. AとB

そう。今ならその違いがワタシにはわかる。
娘について山から人間界に降りてきたワタシにはわかるのだ。

AにあってBにないもの。
それは、美しさだ。
美しいAは引っこ抜かれず、美しくないBは引っこ抜かれるのだ。

娘よ、場所ガチャなどではないのだよ。
現に今、雑草部の部員のプランターという場所ガチャ成功！みたいな場所にはえている植物を、あなたは引っこ抜いているではないか。
ワタシにとってはAもBも同胞なのに、美しくないからといって引っこ抜くのは悪魔の所業だよ。
だけど、ワタシには貴女を責める事ができない。
なぜならワタシも、山の麓で振り向きざまにニコリと笑ったその美しい笑顔にひかれてここまできてしまったのだから。
同胞を引っこ抜く悪魔のような中身でも、外見が美しければよいのだ。

さぁ、レポートに書くがよい。
引っこ抜かれない雑草になるためには、場所ガチャを成功させるのではなく、外見を美しく見繕う事だと。

ワタシは、貴女に触れることも話すことも存在を知ってもらうこともできない。
けれど、いつも貴女の近くで、その美しい外見と悪魔の所業を見つめ続けて生きていこうと思う。

〜 fin 〜