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文月 第三話(最終話)

初めに

【sai】です。

文月最終話を数ある作品から選んでいただきありがとうございます。この話の中には、センシティブな内容や、過激な表現が含まれています。
抵抗のある方や、苦手な方、ご理解の無い方は不快に思うかも知れません。しかし、人間の性を題材にした作品をテーマに書かせて頂いておりますので、お読みいただき、何か感じるものが少しでもあれば嬉しく思います。

それでは文月最終話是非お楽しみください。


沈黙の流れるリビングで、誰も目を合わせることができない時間が流れた。お婆さんの住んでいた時からある時計の音がうるさく感じ、やがて僕の心臓の音さえもうるさく聞こえた。

飲み込む空気が重い。

夢であったらどれだけ幸せかと思った。

エアコンから「プシュー」という音が漏れた。

それを合図かのようにまいが俯いたままのか細い声で話し始めた。

「私って駄目なんだ。全力か何も無いかの2つしかないの」

生気を失った人形のようになったまいを見て、僕はかける言葉が見当たらなった。

まいは変わらないペースで続けた

「タクくんと2回目に会った時、
って言っても先輩とタクくんの会社の人と、
私とタクくんの4人で飲みに行ったんだけど、
タクくん全然喋ってくれなくて、
始めは嫌われてるのかと思ったんだ」

僕はその光景が目に浮かんだ。

きっとタクは慣れない環境で、緊張して、元々の奥手な性格も合わっさって、きっと石像のようになっていたのだろう。

そういえばタクは理系の大学で、学部内はさながら男子校だと言っていた記憶がある。

こんなタイミングでなければ、きっと笑って話せる面白いエピソードだと思ったが、現実は何も変わらず、重たい空気が流れていた。

その空気に同調するようなまいの声は続いていた。

「でも、タクくんの会社の人が、
タクくんの事すごい一杯話してくれて、
しばらくして、この人私と同じで、
異性とどう話して良いかわからい
だけなのかも知れないって思ったの」


僕は心の中で「その通り」と叫んだが、今までの感情と混ざって何も話す気にはなれなかった。
のりちゃんの方を見るとしっかりタクを見つめて水をゆっくり飲んでいた。

「だから私はタクくんに学生の頃の話しを
聞くようにしたの。
楽しい思い出って自然と話せるんだって
看護の勉強してる時に聞いたような気がして」

まいの真面目さが出る話しだとは思ったが、なんでそこから僕と寝てくれという話に飛躍するのか

全く解らず、僕は混乱し続けていた。

「タクくんは少しずつ話してくれて、
特にヨシくんとの話の時は目を輝かせて
とても楽しそうだった」

僕はタクにとっても幼馴染で親友であった事に安堵しつつ、その彼を殴ろうとしたことを少し後悔した。
だからといってのりちゃんを泣かせた事に変わりは無いし、許せない気持ちはまだ渦巻いている。
僕は渦巻く感情の中、何か話さなければイケない気がしたが、しかし僕にはそれを考えるエネルギーも語彙力も無かった。
何か言葉を発しなければと思考を巡らせていたら、のりちゃんの優しく淡々と、でも確信めいた口調で
「その日の内にHしたでしょ?」
僕はのりちゃんが何故そのように考え、話したのか全く解らなかった。

そんな僕を置き去りにして、まいは小さくうなずくと小さな声で話し始めた。

「始めはそんなつもりじゃなかったんだけどね、先輩が送って貰えって茶化すし
タクくんの事気になってたから、
家の近くまで送ってもらうことにしたの」

僕はタクの事を心の中で応援し始めていた。

「まだ3月で寒かったんだけど、
全然気にならないくらい楽しかったの。
家に近づくと寂しい気持ちと
嬉しい気持ちで解らなくなっちゃって
トイレに行きたいって言って
公園にタクくんの手を引っ張って
寄ってもらったんだ。」

僕は静かに残っている水を飲み干すとチラッとタクに目を向けた。
タクは微動だにせずに正座のまま俯いていた。
マイは顔を上げてタクの方を一瞬見て静かに視線を僕とのりちゃんへ向け、潤んだ目で話し始めた。

「本当はトイレなんて行きたくなかったんだけど、
怖いからって言ってタクくんをトイレに連れ込んだんだ。
タク君は動揺して、ずっと駄目だよって言ってたんだけど、
酔ったふりして、おちんちん触りながらキスしちゃった。」

まいはその日の出来事を思い出すように話を進めた。
「もう抑えきれなくて、
タクくんのズボンを降ろして生まれて始めて
おちんちん咥えちゃったの。
タクくんは、口では止めようよって言ってるのに、
私の口の中でどんどん大きくなっていって、
すぐにタクくんのがお口の中に広がって、
それだけで私、イッちゃったんだ」

僕はあの奥手のタクがそんな激しい体験をしたかと思い、複雑な気持ちになった。

まいは少し頬を赤らめて

「そうなったら、もう止めらないよね。
タクくんを家まで連れて行って、
シャワーも浴びずに朝まで沢山しちゃったの。
タクくんも途中からは凄く頑張ってくれて、
全部私に出してくれて、
凄く嬉しかった」

まいは顔を真赤にして最後に

「二人ともクタクタになった時、
タクくんが結婚しようって言ってくれて
凄く展開が早くて、驚いたけど、嬉し過ぎて、
はい。って即答しちゃった」

僕は心臓が押し潰れる位驚いた。

僕とのりちゃんは高校生の時から8年近く付き合っていたが、ようやく同棲だ。

それも、流されて自然にそうなったにすぎないし、ずっと結婚という言葉は浮かんではいたが、ずっと遠い世界の話のように考えていた。

まいの積極性にも驚いたが、タクの思考にも驚いた。
のりちゃんは少し柔らかい表情になっていたが、目には強い意志を宿していた。
僕はタクに目線を移し、シドロモドロに

「お、おめでとう」と声をかけた。
タクは恐る恐る顔を上げ
「あ、ありがとう」と返した。

僕の中ではさっきまでのわだかまりは溶けて、代わりに二人への祝福の気持ちが芽生え始めていた。
のりちゃんは静かに立ち上がり、キッチンへ向かいながら
「お茶入れるから、男子二人はお菓子買ってきて」
と言い放つと意義は認めないといった振る舞いでお湯を沸かし始めた。
僕はタクの前に立ちさっきタクを殴ろうとした右手をそっと差し出した。タクは一瞬迷ったような表情を見せたが、すぐに真剣な表情になり僕の右手を掴み立ち上がった。

なんだか照れくさくなり
「大丈夫か?」と聞くと
「足、痺れた」と帰ってきた。

男同士の仲直りなどこの程度で良いのかも知れないと思い、僕は心のなかで笑った。
タクは痺れた足を引きずりながらゆっくりあるき出し、キッチンに近づくと
「のりちゃん」と言いかけた。
のりちゃんは振り返ること無く
「男子二人は青春からやり直し!私はハーゲンダッツだからね」
と、表情のない声ではっきりと言い切った。
僕はこの声の時ののりちゃんを知っている。
対応策は【何も言わずに従う】だ。
タクは少し口を噤んで、何か話しかけようとしたが、僕が服を掴んで、強引に引き剥がし、僕達の家を出た。

7月の気持ちの悪い空気の夜道は蒸せこけた匂いが立ち込めていた。
汗なのか、湿気なのかわからない気持ち悪さの中で、タクが「ごめん」と切り出した。
僕は「もう大丈夫だ。それよりめでとう」と返した。
嘘のない本気のおめでとうだった。
それからコンビニの往復の間、タクは続きの話をしてくれた。

そこから二人は少しでも時間があると、色々なところで行為に及んでいたということや、まいはSっ気があり、タクはその感じが物凄くハマったと言うこと。

自分でも驚く程性にめざめてしまい、収まりがつかない程という話を、

真剣に、真っ直ぐ話してくれた。

僕は、のりちゃんの言う「青春やり直し」の意味が少しわかった気がした。


コンビにてアイスやのりちゃんの好きなチップスを買い、また気持ちの悪い空気の外に出た時にはさっきの不快感が少し薄れていた。
僕は立ち止まって
「タク!俺もごめん。
お前の気持ちや覚悟を理解しないまま
お前を殴ろうとした!
本当にごめん!」
と大きな声でタクにぶつけた。

タクは少しはにかんだ後申し訳無さそうな顔で「俺こそゴメン。
無茶で気持ち悪い頼みだったよな。
のりちゃんの事もあるし殴られて、
絶交されて当然だと思う」

と、素直な目で返してくれた。

僕達は改めて幼馴染で親友に戻っていた。
僕はずっと気になっていた事をおどけたフリをしてようやく聞いた。
「んで、HなたくどSでHなまいちゃんは、
何で幼馴染で親友で、
しかも彼女持ちのヨシさんに
変なお願いをしたんだい??
せめてのりちゃんがいない所で
話してくればよかったじゃないか」

タクは立ち止まって

少し考えた後、ゆっくり歩きながら話し始めた。

「まいとしてる時に突然
「私が他の人とこんなHな事してたら
タク君は興奮する?」
なんて聞いてきたんだ。
俺は当然そんなの嫌だと言ったんだけど
「ヨシくんでも?私がヨシくんに
メチャメチャにされてる所想像して?」
なんて言ってから、
いきなり凄いキスされたんだよ。」

僕は唖然として、コンビニの袋を落としそうになった。

タクは恥ずかしそうに続けた

「想像した瞬間、今まで感じたことがない
感覚で出しちゃったんだよ。
そっからほぼ毎回まいに同じように責められて
現実になったら俺がどうなっちゃうか想像しただけで興奮して、
またまいに責められの繰り返しをしてる内に、、、、」
タクの言葉が詰まり、僕は反射的に聞き返した。

「うちに?」

タクは意を決したように深呼吸をして言葉を繋いでいった。

「ある日まいとファミレスにいた時、
まいは何時になく真剣な顔で話があるって言ってきたんだ」

その表情から、僕は別れ話か?と思い心の準備を整えた。

まいからの話は僕の想像の斜め上を行っていた。

「私ねタクくんの事すごい好き、
一生一緒にいたいと本気で思ってるの。
でも同じ位、タク君の前で他の人と
してる所を見られたいって思って、
もう我慢できない位になってるの。 
こんな変な娘でゴメンね。
嫌になったらいなくなってもいい。
凄く怖いし、耐えられなくなるかも知れないけど私の問題だから!」

タクは一呼吸おいて

「本気で悩んだ。
悩んだといっても別れるとかじゃ無くて、
だれだったら良いのかを瞬間的に考えていたんだ」

僕は唖然として膝から崩れそうになった。

あの奥手で、のりちゃん以外の女の子と話している所を見たことがないタクにそんな一面があったなんて衝撃だった。

タクは表情を変えずに

「それから真剣にまいと話し合ったり、調べたりしたんだ。

今、漫画喫茶て便利な所があって、
インターネットで色々調べられるんだよ。
そしたら、そういうのって寝取られって性癖で、
お互いのパートナー交換したり、
相手が他の人としてるの見たり、
後からどんな事したのか聞いたりして興奮する性癖があるんだって。」


エネルギーの塊のような女の子まいと、理系で研究好きなタクのいい部分なのか悪い部分なのかがわからない行動力だと思い、僕は軽く吹き出してしまった。
タクはほくそ笑んで
「俺たちは凄く真面目に悩んだんだ!
笑うことないだろ」
と軽口を叩いだ。
僕はゴメンゴメンと謝りながら、タクの次の言葉を待った。
「そして出た答えが、
ヨシとのりちゃんに頼むって答えだった。
お前たち二人には迷惑をかけたし、
拒否されたら俺の全てを、
失う覚悟で頼んだんだ。
許してくれとは言えないけど、
少しでもわかって欲しかった。」

僕はタクの気持ちが痛いくらい突き刺さった、つい一肌脱ぐつもりで、やるか!と言いかけてしまった。

しかし、話はそう簡単でもない。

のりちゃんもいる、僕達二人の問題でもある、何より踏み込んだ事でタクを傷つけるのでは無いかと思い、言葉を失ってしまった。

そこから無言の家までの数分が流れた。
僕達の家に入った瞬間に僕は衝撃を受けた。
風呂場から籠もった笑い声が聞こえたのだ。

僕は風呂場にと思い届く声で
「ただいまーー」と叫んだ風呂場からは、
笑いながら籠もった聞き取りにくい声で
「アイスは冷凍庫に入れておいて〜 
もうすぐ出るから〜」
という聞き慣れたのりちゃんの声が帰ってきた
僕とタクはポカンとした顔で向き合い意味もなく笑っていた。
俺はタクにソファーで待っててくれと伝え冷凍庫にアイスを入れて、買ってきたチップスと缶ビール2本を持ってリビングに向かった。
タクにビールを手渡すと、タクは無言で受け取り、同じタイミンクで「プシュ」という缶を開ける音が静かな部屋に響いた。

こんな何気ないことにも僕とタクはお互いの顔を見つめ笑った。
もう、タクの性癖の話は触れなかった。

さっきまで色を完全に失った部屋が元通り以上に彩りを取り戻したこの時間を壊したくなくて、怖くて、あえてその話を避けていたのだと思う。
しばらくすると、頭にタオルを巻いたTシャツ姿の、のりちゃんと、少しぶかぶかの寝間着を着たまいがリビングにアイスを持って戻ってきた。
僕は人生で一番間抜けな顔をしていたのだと思う。

二人は顔を見合わせたあと

「ね!言ったでしょ〜 みてヨシくんのあの間の抜けた顔!」とのりちゃんが言うと

すかさずまいが「本当だ〜なんか変な動物みたい〜」と軽口を叩いた。

それは、昔からの親友のような、仲のいい姉妹のような光景だった。

僕とタクは呆気に取られて、持っているビールを落としそうになった。
その光景を見てまた二人の女子は声を上げて笑った。
ひとしきり笑いが収まるとのりちゃんは

「青春したかね!?男子諸君!!
さて答え合わせの時間だが、
その前に、そこのタク君!
君だけ汗臭いからお風呂に入って来なさい!
着替えは脱衣所にあるのを使いたまえ!
間違っても全裸で出て来てはいけないよ!!」

と、何故か先生口調でタクを風呂に導いた。

僕はこれから何が起きるのか不安と、期待と、この状況の不思議で頭がクラクラしはじめた。

のりちゃんとまいはアイスを開けると食べながら、僕の向かいに座った。
唖然とする僕を二人はいたずらっぽく見て、のりちゃんから話始めた。
「私はね、この二人を受け入れる事に決めたの。って言ってもこれから皆で
Hしようって訳じゃなくて、
友達として、家族のような関係になれるようにね」

まいは嬉しそうに頷いた。
のりちゃんは少し真面目な顔になり
「私もね、寝取られっていうの?
そういう人たちがいるってのは知ってたの。
私の職場女ばっかりだし、
女子の下ネタって結構エグいんだよ」

まいはものすごい笑顔で頷いた。
「私はそういう趣味?は、今の所無いけど、
ヨシくんが浮気した時、
ちょっとそんな気持ちになったの」

僕は力が抜けて倒れそうになった。

それは過去一度職場での後輩とそういう関係になり、あっさりのりちゃんにバレた挙げ句大好きな酒を3ヶ月禁酒という重いペナルティーを受けた、頭上がらないエピソードの中で一番の出来事だ。

タクにも秘密にしていた過去を今日出会ったまいにあっさり話したというのはどういう心境の変化かわからなかった。

のりちゃんは飄々と話を続けた
「だからね、この四人の隠し事はなし!
言いにくい悩みも一人より二人!
二人より三人!三人より四人で考えたほうが
いい結果になる事もあると思うの
タクくんとマイマイはずっと一人で悩んで、
似たもの同士で暴走した結果が
きっと今日なんだよ!」
まいは、マイマイに進化したのだという事は理解できた。
まい改めてマイマイは間髪入れずに嬉しそうな顔で言い始めた
「エッチな事って、
人に話したら駄目だと思ってたの!
でもねノンちゃんと二人でお風呂に入って、
洗ッコして、エッチな悩みとか、
知らない事とか話したり聞いたりしてたら、
もっと色んな事を経験しないと
イケないって思ったの
エッチな事だけじゃ無くてね!」

僕はのりちゃんがノンちゃんに進化した事を理解したと同時に、女性の強さと魅力に衝撃を受けて一気に力が抜けていった。

同時に物凄い眠気が襲って来たがまだノンちゃんの言う答え合わせを聞くまでは寝れないと、意識を保つように心がけた。

そこにタクが「お風呂ごちそうさま」と、少し戸惑いながら戻ってきた。

ノンちゃんは少し真面目な声で

「タクくんまずは座って、こっちを向いて」

と、促してきた。

マイマイとノンちゃんは正座に座り直してタクが、が座るのを待った。

女子二人はアイスを丁寧に食べながら静かにこちらをそれぞれのパートナーをみつめている。

その視線はとても暖かく優しいものだった。
アイスを食べ終わるとノンちゃんがゆっくり話し始めた。
「私はヨシくんの事がとても好き。
優柔不断な所もあるけど、いつも私を見ていてくれて、
一番に私の事を考えてくれる優しいヨシくんの事がとても大切。
マイマイもタクくんの事を同じように好きって事がよくわかった。
でも、だから何でもして良いって訳じゃないし、それが愛情だとも思わない。
でも、欲求とか考えって色々あって
それを否定するのも違うと思ったの」

マイマイは深くうなずきながらノンちゃんの話を聞いていた。
「だから、私はマイマイを親友のような、
姉妹のような大切な存在と思う事にしたの。
だって、ヨシくんと結婚したら、
タク君は望んで無いけど、
もれなく付いてくるしね」

ノンちゃんはいたずらっぽく笑った

次にマイマイが優しく軽口を叩く
「タクくんと結婚したらヨシくんも
もれなく付いて来るし」

僕はその時、この二人は僕達の未来を見つめて、親友になる覚悟をしたのだと悟った。
でも直ぐにそうもなれないから物凄い勢いで【親友ごっこ】を始めたのだと。
僕はこの愛しくて強い女性を一生守っていこうと心に誓った。


「でも、だから、タクくんの今日の提案は
受け入れられません
私達にも考える時間は必要だし、
私はヨシくんとのこの生活を
誰にも壊されたくないと思ったの。」

ノンちゃんは一呼吸おいて更に表情を引き締めて話を続けた。
「でも、マイマイの覚悟というか、
性癖も理解したいと本気で思ったの。
でも今日は無理だし、一生無理かも知れない。
でも性ってのは強い欲求かも知れないけど、
生きる中でのほんの一面だと思うし、
本気でヨシくんを貸してほしかったら、
まず私を落としてからって、
さっきお風呂でマイマイに説明して、
マイマイは納得してくれた」

ノンちゃんは笑顔に戻り

「これが今日の女子二人の答えだけど、
男性諸君意義はありますか?
勿論認めないし、
アイスくらいじゃ私の涙の重さは
釣り合わないからね」
この瞬間タクもノンちゃんに頭が上がらくなった瞬間だった。
僕とタクはお互いの顔を確認して

「ありません」
と声を合わせて言ったのだった。

長い一日にようやく終わりがきた。


ノンちゃんとマイマイは僕達のベットに陣取り、キャッキャと話している。僕とタクはリビングに取り残されて、その声を聞きながら、
少しはにかんだ笑顔で
「寝るか」と確認して床に寝そべった。

タクと何か話していた気はするが、会話は覚えていない。
僕は幼馴染で親友のタクと子供の頃のお泊り会のような感覚の中深い眠りについていった。



目覚めるとマイマイが朝食を作っていた。

タクはまだ寝ている。

ノンちゃんも恐らくまだ夢の中であろう。

僕はマイマイの横に立つと、
「手伝うよ」と声をかけ、食器を出し朝食の支度を始めた。
マイマイは「ありがと」と微笑むと僕の耳元でいたずらっぽく

「ヨシくんの事あきらめて無いからね
ノンちゃんの事絶対落とすから」

と、言って、イヤラシく自分の指をペロッと舐めた。
僕は昨日の夜僕達のベットでまさか何かあったのでは無いかと想像して、
股間に血液が一気に集まって行くのを感じた。
マイマイは、そんな生理現象を隠そうと不自然な前かがみになってしまった僕を確認すると、

おどけた声で

「やーーだーーー ヨシくんが浮気しようとしてるぅーーーー たすけてーーーー」

笑いながら叫びだした。


その声でタクは目覚めて

「オーお盛んだなー」などと気の抜けた感じの朝の挨拶をしてきた。

のんちゃんはベットの中から不機嫌な声で

「うるさいな〜 浮気したら死ぬまで酒抜きだからね〜」

と、今起きたというサインを出してきた。

僕はノンちゃんの為にグラス一杯の水を用意した。

そこからはいつもと変わらない日々が流れていった。

タクたちは昼前に帰路につき、僕とノンちゃんは半日家事に追われた。



そして一年はあっという間に過ぎていった。


また気持ちの悪い季節が僕の不快指数をどんどん上げていく。

その後僕達は何度かお互いの家に行き来して、色々な話をして、色々な事を経験した。

どんな経験をしたかは僕達4人の秘密だ。

昼飯は何にするか考え始めたその時、
ポケットの中の携帯が振動した。

電話の相手はタクからだ。

僕は上機嫌で電話に出た。



文月 完



【sai】あとがき

文月を最後まで読んでいただきありがとうございました。
実はこの話は四人が高校生の時から、もう少し先の未来までの長編のつもりで考えていたのですが、表現したい部分がこの一日に集まっていた事から、短編小説に切り替えました。
長編で読んでみたいというお声があれば書いてみようと思います。
さて、この四人の物語は私の経験した事を元に描いた物語なのですが、性を題材にした云わば性春物語というイメージで書かせていただきました。この作品を切欠に、皆様の甘酸っぱい思い出がこれから先も色褪せること無く、大切に持っていただけたら、私はとても嬉しく思います。

そしてこれからのこの四人の性春を応援して頂けると幸せです。

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飛んで跳ねて喜びます!!
それでは次もがんばります!!

【sai】でした




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