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漫画ができるまで

最近「地衣」(仮題)という習作を描き上げました。
無料Kindleで公開しています。

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https://www.amazon.co.jp/dp/B09F31WSWQ/ref=cm_sw_em_r_mt_awdo_X6AZY1Q4B4284WTQYSYX

自分でも一体どうやって漫画を描いているのか知りたいと思い、整理して記録し、何か今後の制作を効率よくする手がかりになればと思います。

この漫画の元になった経験が二つあります。

ひとつは地元で行われた現代美術作家の展覧会(アーティストインレジデンスで公開制作)で制作されていた作品です。
それは、地元の人たちから古布を集めて襤褸を制作し、最終的にその布をユタンにして獅子舞を舞うという作品です。こちら↓
http://www.city.takamatsu.kagawa.jp/smph/kurashi/kosodate/bunka/tair2020ranruky.html

ここから、以下のような獅子舞のお祭りのイメージが湧きました。
特に一番描きたかったのは獅子舞がひとりで動き出すというシーンでした。

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しかしこのシーンはなかなかお話としてまとまらず、しばらく取り出しては考え、やはりまとまらずしまう…を繰り返していました。

お祭りはどんなお祭りなのか、その細かい部分を考えてみたり

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獅子舞に頭を噛まれると厄除けになるというなぁと思いながら、獅子舞の中に食べられてしまったらどうだろうとか(この時は女の子が食べられるイメージでした)。
イメージは断片的に浮かびます。

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こねくりまわしている間に、「雨糸、霧布」という漫画を描きました。
https://www.pixiv.net/artworks/89654030
同じくらいの時期に「シマ」という漫画も描きまして(webにはアップしていません)、いずれにも「帽子の男」という狂言回しのキャラクターが登場します。

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意識してなかったのですが、どうやら彼らは同一人物なのではないか?と、思い至りました。そしてこれらの話は、この帽子の男のフィールドノートのシリーズ(妖怪ハンターの稗田先生みたいに)なのではないか?と思いました。

獅子舞のお話も、この帽子の男に登場してもらったら、何となくまとまりそうな予感がしました。


そして、そんな時、ふたつ目の経験をしました。
藍染めを体験したのです。
スクモ染めという徳島の染色方法です。
この経験と、襤褸と獅子舞が繋がりました。

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ここまで思いつき、具体的にどうまとめるかは浮かんでないものの、まとまりそうだというある程度の予感がある場合(例えばラストが決まってなくても、オープニングから描きたいシーンまでが思い描けていたら)とりあえず漫画を描き始めてしまいます。

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b4見開き用のテンプレートに描きます。
私の場合、いわゆるネーム、絵コンテという物と下書きを兼ねています。
ネームの段階で誰かに見せる必要がない場合、私はラフから仕上げまでを一枚一枚描いてゆきます。たまに気分で、何ページかアタリやセリフを描いておいてから清書していく事もあります。


アタリ

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ペン入れ

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仕上げ。

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思い描いていたシーンが描けました。うれしいです。

しかし描きながら、まだお話のまとめ方が見えていませんでした。

そんな時、私は本で「地衣類」という存在を知りました。苔のようですが苔ではなく、菌と藻の複合体らしいのです。
私が惹かれたのは名前の字面です。
「地」の「衣」。
これだ、と思いました。

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この時点では、染料は藍染と同じく花を発酵させるという設定でした。
調べると、地衣類を発酵させて染料にする染め物もあるようです。
設定を花から地衣類の染料に変えました。

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ちなみここに出てくる霧の布は「雨糸、霧布」に出てくるものです。世界がつながりました。

地を覆う衣、発酵、微細な生命、それによる染色と、循環、そういったキーワードがつながりました。わたしはこういう時、「あ、物語が円になった。輪っかになった」と感じ、お話がらひとつできたな、と確信できます。

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上のメモはどうやってお話を閉じるか、言葉やその順序を考えたものです。


こんな感じで漫画がひとつできました。
地味で短い習作ですが、この習作からまた新たなお話が派生するかもしれないし、また別のお話にアレンジされるかもしれません。

こうして描いてみて、初めて自分がどんなふうにお話を作っているのかわかりました。

なかなか危ない作り方をしているなと思いました…。
例えば、「地衣類」という存在を知ることが出来なかったら、どうなっていたのだろう…と、いま振り返って思います。

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