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アロマクエスト

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ふと、頭に浮かんできた物語です。
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2019年4月の記事一覧

アロマクエスト|(16)|旅立-8

「準備ができたら、出発しよう。いい?」 カオルは身寄りがなく、村長の家に引き取られて育った。 そう多くはない荷物をまとめ、村長たちに挨拶をして家を出る。 旅立つのに、そう日数はかからないだろう。 「2日もあれば、行けるよ。」 「わかった。」メンタは、そう言いながら何かを取り出した。 「まず、これをキミに預けるよ。」 手渡されたのは、ブレスレットのようなものだった。 小さく、水晶のような球体が連なってできている。 「これは?」 「アロマル使いに必要なものさ。

アロマクエスト|(15)|旅立-7

「そういえば、さっきのことだけど。」 「なんのこと?」 「あの黒い影を倒したら、人間に戻ったじゃないか。 あれって、どういうこと?」 カオルがたずねると、メンタは答えた。 「スウェイング・シャドウは、もともと人間なんだ。 襲われた人の心身のダメージが一定以上大きくなると、変身してしまう。 ボクたちアロマルは、キミのような能力を持つ者が念じた通りに姿を変えて、スウェイング・シャドウと闘う。 スウェイング・シャドウに変化していた人間を、『癒やす』ことで救うことがで

アロマクエスト|(14)|旅立-6

あれは、いつのことだっただろう。 香りがこの世界からなくなったのは、まだ小さい頃だった。 周囲の大人が、話しているのを聞いて知ったのだと思う。 そのことが、カオルには不思議だった。 なぜなら自分は、まだ香りを感じることができたからだ。 しかし、他人に話す気にはなれなかった。 自分だけがみんなと違う。 そう思われるのが、なんだか怖かったのだ。 だから黙っていた。 しかし今、目の前にいるメンタには、素直に答える気になった。 「うん、わかるよ。」 それを聞くと