冒険の扉

アロマクエスト|(12)|旅立-4

倒れた黒い影は、だんだんとその姿を変えていく。

ゆらゆらと揺れる輪郭が、次第にはっきりとしたものに変わった。

そこには、確かに人が倒れていた。


「なんとか間に合ったみたいだ…。キミは、この人を救ったんだよ。」

そう言うと、メンタはホッとした表情を浮かべた。


「う、う…。」

倒れている人が、意識を取り戻したようだ。

少年は駆け寄る。

「お、俺はいったい…。」

「大丈夫ですか。何があったんですか?」

倒れていた男は、語りはじめた。

「ああ…だんだん思い出してきた…。俺は仕事が忙しくて、睡眠時間を削ってたんだ…。睡眠不足が何日も続いたある日、自分の後ろにヤツが立ったんだ…そこからのことは憶えていない…。」

「そうだったんですか。」

「何をどうやったか知らないが、とにかく助かったよ。ありがとう。」

「歩けますか?」

「なんとか。まだ足元がおぼつかないが。」

「村まで一緒に行きましょう。」

「ああ。ありがとう…。」


メンタが肩に乗ったままだったが、男には、メンタの姿は見えないし、声も聞こえないらしい。

メンタの方も、こちらに話しかける様子はない。

そのまま、男と一緒に村まで戻った。


男はもう一度お礼を言い、自分の家に戻っていった。

(つづく)

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