アロマクエスト

アロマクエスト|(18)|使命-2

島から出た船は、近くの大陸に向かっていた。

海は荒れることもなく落ち着いている。天候も良好だ。

「ボク、水は苦手でね。しばらく外に出ないようにするよ。」

カオルが身につけたブレスレットから、メンタの声がした。

「ねえ、どうしてキミはあの島に来たの?」

カオルは、前から思っていた疑問を口にした。

「う~ん、勘かな。」

「勘って…。本当に?」

「冗談、冗談。ボクは『香りの女王』から指示

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アロマクエスト|(17)|使命-1

旅の準備は、予定よりも早く終わった。

出発の朝を迎え、カオルはやや緊張した面持ちで船に乗り込む。

見送りに来ていた村長たちが、声をかけた。

「気をつけるのじゃぞ。」

「元気でな。」

「辛くなったら、いつでも戻っておいで。」

「ありがとう。じゃあ、いってきます!」

カオルは、手を振りながら答えた。

船は、ゆっくりと島から離れていく。

カオルが乗った船を、見えなくなるまで見送った村長

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アロマクエスト|(16)|旅立-8

「準備ができたら、出発しよう。いい?」

カオルは身寄りがなく、村長の家に引き取られて育った。

そう多くはない荷物をまとめ、村長たちに挨拶をして家を出る。

旅立つのに、そう日数はかからないだろう。

「2日もあれば、行けるよ。」

「わかった。」メンタは、そう言いながら何かを取り出した。

「まず、これをキミに預けるよ。」

手渡されたのは、ブレスレットのようなものだった。

小さく、水晶のよ

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アロマクエスト|(15)|旅立-7

「そういえば、さっきのことだけど。」

「なんのこと?」

「あの黒い影を倒したら、人間に戻ったじゃないか。

あれって、どういうこと?」

カオルがたずねると、メンタは答えた。

「スウェイング・シャドウは、もともと人間なんだ。

襲われた人の心身のダメージが一定以上大きくなると、変身してしまう。

ボクたちアロマルは、キミのような能力を持つ者が念じた通りに姿を変えて、スウェイング・シャドウと闘

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アロマクエスト|(14)|旅立-6

あれは、いつのことだっただろう。

香りがこの世界からなくなったのは、まだ小さい頃だった。

周囲の大人が、話しているのを聞いて知ったのだと思う。

そのことが、カオルには不思議だった。

なぜなら自分は、まだ香りを感じることができたからだ。

しかし、他人に話す気にはなれなかった。

自分だけがみんなと違う。

そう思われるのが、なんだか怖かったのだ。

だから黙っていた。

しかし今、目の前に

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アロマクエスト|(13)|旅立-5

男を見送ってしばらくすると、肩に乗ったメンタが話しかけてきた。

「もう一度、森に行こう。大事な話があるんだ。」

ふたたび、森へ戻ってきた。

先ほどの出来事が、ずいぶん前のことのように感じる。

メンタが、肩から降りると口を開いた。

「えっと、まず、キミの名前を教えて。」

今さらながら、自分が名乗っていないことに気がついた。

「僕の名前は、カオル。」

「カオル……いい名前だね。」

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アロマクエスト|(12)|旅立-4

倒れた黒い影は、だんだんとその姿を変えていく。

ゆらゆらと揺れる輪郭が、次第にはっきりとしたものに変わった。

そこには、確かに人が倒れていた。

「なんとか間に合ったみたいだ…。キミは、この人を救ったんだよ。」

そう言うと、メンタはホッとした表情を浮かべた。

「う、う…。」

倒れている人が、意識を取り戻したようだ。

少年は駆け寄る。

「お、俺はいったい…。」

「大丈夫ですか。何があ

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アロマクエスト|(11)|旅立−3

「ど、どうやって?」

緊張した面持ちで、少年はたずねた。

こうしている間にも、黒い影が迫ってくる。

「何か、武器をイメージして!」

少年は、扱うのが得意な武器をイメージする。

数秒後、緑色に輝く光の矢が出現した。

「こ、これは…」

おそるおそる見ている少年に、メンタが口を開いた。

「これは、ボクのエネルギーを形にしたものだよ。これで攻撃するんだ!」

いつの間にか、メンタと名乗った

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アロマクエスト|(10)|旅立−2

最初は気づかなかったが、よく見ると、何か小さな生き物がこちらに向かって走ってくる。

色は青みがかったグリーン。

大きさは、ウサギより大きくネコより小さいくらいか。

こんな生き物は、今まで見たことがない。

「ひょっとして、ボクが見える…?」

その生き物が言葉を発したので、さらに驚いた。

「うん、見えるよ。それより、大丈夫?」

「あんまり…。それより、力を貸して!」

「…っていうか、君

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アロマクエスト|(9)|旅立−1

ある日から、「香り」がなくなった。

生態系バランスの崩壊。

人の心と身体の衰弱。

スウェイング・シャドウの増殖。

人々は、環境の変化に怯えながら、日々を過ごしていた。

◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇

周りを海で囲まれた、小さな島がある。

大陸の人々からも、その存在を忘れられた島。

意外なことに、その島には人が住んでいた。

荒れ果てた平原を走る、ひとつの小さな人影。

小動物を追いかけ

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